第2回 (2003年5月17日)

『病と癒しへの文化的対応―東南アジア・インドネシアの民俗医療の事例から』

吉田正紀(日本大学国際関係学部教授)

(1) 複数医療システムと民俗医療
どの社会にも、病気の治療や癒しについて、固有の知識や伝統および技術があり、またそれを支える文化的な制度や習慣=医療システムが複数存在する。東南アジアでも、人々はさまざまな医療システムを、病気の種類、原因、症状などによって、利用し続けている。近代医療があっても、何故民俗医療は衰退しないのか。民俗医療はどのように人々の健康希求の欲求に応えているのか。インドネシア・北スマトラの事例から、民俗治療者の活動とその患者の行動を通じて考察する。

(2) 北スマトラの地域的状況と民俗医療 
北スマトラ海岸部は、19世紀末よりプランテーション農業が発展し、他地域から様々な民族が流入し、多民族地域となった。このことは、医療システムの単なる複数化ではなく、ジャワ人、バタック人、ミナンカバウ人などの民俗医療の複数化という状況が生まれた。

(3) 民俗治療者の専門化と診断・治療のメカニズム

どの民族にも、治癒技術を基礎にした専門分化がみられる。彼らはどのようにして専門家となるのか。また治療のプロセスにおいて、診断と治療はどのようなメカニズムで行なわれているのか、検討する。

(4) 民俗治療者の利用と病気のカテゴリー

人々はどのような症状のときに、治療者を訪れるのか。民俗治療者だけが頼りの文化的病気、サキット・ポロンとはどのような病いなのか。

(5) 究極的な癒しへの旅―民族と宗教の境界を超えられるか

自らの民族伝統を超えて、他の民族の治癒能力を得ようとする治療者がいるのは何故なのか。また自らの民族の境界を超えて、病いを癒してくれる治療者を求める旅に終わりがないのは何故か。

−吉田正紀(よしだまさのり)先生のプロフィール−

専門分野

 文化人類学

論文・著書
 『民俗医療の人類学―東南アジアの医療システム』、古今書院、2000年
 「国際結婚にみる異文化の交流と実践(1)」、『日本大學国際関係研究』、第22巻1号、2001年
 「国際結婚と異文化の交流」、『日本大學国際関係研究』、第23巻4号、2003年