竹尾茂樹(明治学院大学国際学部教授)

2002年度厚生労働省の「長寿番付」によると、日本の100歳以上のお年寄りは過去最多の1万7千9百34人、中でも沖縄は25人と同じく過去最多を記録し、高齢者比率でも1990年以降、13年連続のトップの長寿県です。65歳以上の高齢者も県人口の3.9%を占める18万8千42人に達しています。ハーバード大学のブラッドレー・J・ウィルコックス博士らは、沖縄の長寿の理由を調べるために数年間にわたり聞き取り調査して来ました。そして世紀を越えて生きるタフなウチナーのオジー、オバーたちを支える社会、食生活、精神風土などに注目し、研究の成果を一冊にまとめ上げました(“The Okinawa Program: How the World's Longest-Lived People Achieve Everlasting Health--And How You Can Too” 2001、Random House)。同書は米国でもベストセラーになり、等しく高齢化社会を迎えた先進国の中にあってこうした社会は世界的にも注目を集めています。しかし一方で近年には、「長寿の沖縄」にも翳りが指摘されています。数字に表れたものでは県別比較で、男性の平均寿命が990年に一位から五位に落ち、95年には静岡県と並び四位となったのが、わずか五年で一気に二十六位まで転落しました。しかも男性の平均寿命の延びは0.42歳で全国最下位、5年後はさらに下位に転落する恐れすら予想されます。男性が順位を下げた要因は三十代後半、四十代後半の死亡率が上がったためと考えられています。高齢者の伝統的なライフスタイルを維持することが困難になり、働き盛りの世代の「食」や生活環境が変化したことがその要因です。また一人当たりの老人医療費では沖縄は94万円(全国平均80万円)と全国六位。人口十万人当たりの老人福祉施設の入居者も2千6百69人で全国一位、その施設療養費10万円(同4万7千円)、入院費9万円(同4万円)ともに一位です(1997年度)。医療が下支えする長寿という側面もうかがえます。昨今喧伝されるように沖縄は本当に「癒しの島」なのでしょうか?この講義では、長寿を可能にしてきた沖縄の環境(自然・社会)をとらえなおし、離島医療のかかえる問題点を具体例に即して考えてみたいと思います。
−竹尾茂樹(たけおしげき)先生のプロフィール−
専門分野比較文化 論文・著書『平和学の現在』、法律文化社、1999年 「西表祖納のシチ祭とソール盆行事」、『国際学研究』、第21号、2002年