第4回 (2003年6月7日)

『もうひとつのペスト史―中国におけるペストの流行―』

飯島渉(横浜国立大学経済学部教授)

 ペストの流行の物語は、中世ヨーロッパのそれがよく知られている。しかし、それはペスト史の一部でしかない。19世紀末から20世紀初期、ペストは再び流行する。そして、その中心は、東アジアにあった。

 1894年、香港で感染爆発をみたペスト(腺ペスト)は、その後、中国、台湾、日本、さらにはハワイ、北米へと東進し、また、東南アジアをへてインド、さらにアフリカへと西進した。その感染のパターンは、現在、大きな問題となっているSARSと酷似している。日本でも、横浜、大阪、神戸といった港町を中心に腺ペストが発生した。

 中世ヨーロッパのペストが忘れさられようとしていた時、ふたたび世界的な流行をみたペスト、すなわち、19世紀末から20世紀初期のもう一つのペストは、人々の暮らしにどのような影響を与えたのであろうか。

 この講座では、ヨーロッパとは異なった、もう一つのペスト史を説明し、感染症の発生や流行の背景、さらに、感染症が人々の暮らしにどのような影響を与えたのかを説明します。

−飯島渉(いいじまわたる)先生のプロフィール−

専門分野

 アジア経済史・社会史

論文・著書
 『ペストと近代中国―衛生の「制度化」と社会変容』、研文出版、2000年
 「近代日本の熱帯医学と開拓医学」、見市雅俊・斎藤修・脇村孝平・飯島渉編、
  『疾病・開発・帝国医療―アジアにおける病気と医療の歴史学』、東京大学出版会、2001年
 「伝染病与辛亥革命(中国語)」中国史学会編、『辛亥革命与20世紀的中国』、
  中国文献出社、北京、2002年