第1回 (2004年5月8日)

『ジェンダー論の現在』

合場 敬子(明治学院大学国際学部助教授)

1.はじめに
「男らしさ」「女らしさ」と人々の生き方

2.女と男とは何か?
(この部分は、蔦森樹の『男を脱ぐ』の第1章を参照し、改変している)
2つのプロセスによって、メス、オスから女、男になる。
プロセス1:社会が、生まれたばかりの人間に、生物学的視点から見たラベルを貼る:メス、オス(生物学的性=セックス)
プロセス2:社会が、メスとオスに、文化的な慣習や社会的な決まりごとから見たラベルを貼る:女、男(ジェンダー)

3.ジェンダーによって構築された女と男の関係(社会制度としてのジェンダー)
(1) ジェンダーは、女と男を異なった存在として作り上げている。
    例)アメリカ海軍の女性兵士(Williams 1989)

(2) ジェンダーは、女と男の間に序列的な関係を築く傾向がある。
    例)同じ仕事でも、男がすると「基幹業務」、女がすると「補助業務」とみなされる。商社兼松における男女差別賃金訴訟(中野 1994)  

4.セックスとジェンダー
(1)セックスからジェンダーがそのまま生み出されているのではない。
    例) Bill Tipton (New York Times, 1989 年 2 月 2 日の記事 )

(2)セックスは実体ではなく、ラベルである。
    (この部分は、蔦森樹の『男を脱ぐ』の第2章の一部を活用している)

この主張をいち早く行ったのは、 Kessler and McKenna (1978) 。
  @人間の外性器はもともと2つに分かれていない。
    (「図3男性と女性の外性器の発生過程」を参照)
  A人間の染色体にも多様性がある。

人間の身体には、セックスで簡単に分けられない多様性がある(「生物学的性別(セックス)は2種類ではない」を参照)。
セックスとは、個人の身体の多様性を、強引に2種類に区切った概念である(蔦森 2003 )。
したがって、セックスは実体ではなく、ラベルである。

*特に、(2)の議論については、『男を脱ぐ』の第 2 章が参考になる。



[参考文献]

(日本文)
蔦森樹  2003, 『男を脱ぐ』全日出版
中野麻美 1994, 「「コース別雇用管理」下の女性賃金差別−兼松における男女賃金差別−」『賃金と社会保障』 1141:4-12
(英文)
Kessler, Suzanne J. and Mckenna, Wendy. 1978. Gender: An Ethnomethodological Approach. Chicago : University of Chicago Press.
Willams, Christine L.1989. Gender Differences at Work: Women and Men in Nontraditional Occupations . Berkeley : University of California Press.

 
 出典: 蔦森樹 2003『男を脱ぐ』47頁より



生物学的性別(セックス)は2種類ではない

男性身体                       女性身体

染色体  XYY XY     XXY     XO      XX XXX
外性器 陰茎・陰嚢      半陰陽        膣・陰唇
内性器 精嚢・精管                 子宮・卵管
性腺   睾丸                       卵巣

 

−合場敬子(あいばけいこ)先生のプロフィール−

専門分野

 ジェンダー論・労働社会学

論文・著書
 “Job-Level Sex Composition and the Sex Pay Gap in a Large Japanese Firm.”、「日本の大
 企業における仕事区分での男女構成と男女の給与格差」、Aiba, Keiko and Amy Wharton,
 Sociological Perspectives 44, pp67-87, 2001

 「大学におけるセクシュアル・ハラスメント―認識に影響を与える要素―、『女性学』9号
 pp66-83、
2002年