第6回 (2004年6月19日)

『女と男の国際学』

竹中 千春(明治学院大学国際学部教授)



1.ジェンダーで考える国際政治
 国際政治は劇的な変化を続けています。ベルリンの壁が崩れ、ソ連という社会主義国家が終焉したときには、冷戦後の平和が訪れると期待されました。しかし、その後明らかになったのは、米ソ対立の終わりは必ずしも平和をもたらさないということでした。むしろ不安定化した地域で、民族や宗教を理由とする内戦や戦争が頻発しています。こうした状況を「女と男」というジェンダーの視点から分析すると、どのように見えるでしょうか。

2.対テロ戦争のジェンダー分析
 9/11事件後、ブッシュ政権は対テロ戦争を展開してきました。同年10月には国際テロ組織アルカイーダとそれを擁するタリバーン政権を倒すために、アフガニスタンに対する戦争を開始しました。2003年3月にはイラクのフセイン政権に対する戦争に着手しました。日本は、これまでの対外政策を大きく変更して、復興支援のためですが、中東に自衛隊を送りました。

 これらの事件は、超大国や同盟国、多数の主権国家、それらが構成する国際連合などを主人公とする「国際政治」として、メディアでは語られます。けれども、「女と男の世界」と見ると、かなり違うイメージが現れます。アメリカの大統領府・軍・FBI・CIAはもちろん、アルカイーダという武装組織やタリバーン政権、フセイン政権、各国政府と軍隊、国連――これらを動かす力を持つ人々、これらの組織で政策を実行する人々のほとんどは、男性です。驚かれますか。それとも、ごく当たり前だと思われるでしょうか。

 言いかえれば、「国際政治」は「女と男の世界」ではなくて、「男だけの世界」に限りなく近いわけです。ですから、「国際政治」を揺るがしている内戦や戦争は、「女と男の世界」の産物ではなく、「男だけの世界」によって引き起こされていると言ってもほぼ間違いではありません。しかし、「男だけの世界」の内戦や戦争は、女性に甚大な被害を与えます。そして、「男だけの世界」に参加して、武器を持って戦う女性もいます。

3.アフガニスタンで何が起こってきたか
 
アフガニスタンの実例をあげて、対テロ戦争の前、戦争の過程、戦後の展開について、説明します。

4.「女と男の平和」は可能か
 
女性、そして女性と同じように政治の中で発言権や決定権のない人々の視点から「国際政治」を見直すことで、内戦や戦争を引き起こさないような国際社会を構想することができるでしょうか。ジェンダー分析は、一種の「コロンブスの卵」です。価値観をひっくり返してみることで、新しい可能性が目の前に開けてくるかもしれません。「ジェンダーで考える女と男の世界」の締めくくりに、未来への展望をご一緒に考えてみたいと思います。

 

−竹中千春(たけなかちはる)先生のプロフィール−

専門分野

 政治学

論文・著書

 「インドという理念」、『国際学研究』、明治学院大学、第 23号、pp39-50、2003年

 「女性と民主主義 ―現代インドの実験」、高畠通敏編 『現代市民政治論』、世織書房、 2003年
 「ジェンダー研究と南アジア」、長崎暢子編 『現代南アジア―地域研究への招待』、東京大学
  出版会、 2002年