第2回 (2008年5月24日)

『村人による森林資源利用と森林保全』

古市 剛史(京都大学霊長類研究所 教授)

熱帯雨林の保全が地球規模の問題となっている。古くから商業的伐採が進められてきた南米と東南アジアの熱帯雨林に続き、最近ではこれまで開発の遅れていたアフリカ中部の熱帯雨林が木材伐採やプランテーション開拓のターゲットとして注目を集め始めている。
地球環境を守るために、熱帯雨林を守らなくてはいけないと、アフリカの国々に対して言うのは簡単だ。だが、アフリカにも人間の生活がある。私たちがそうしてきたように、多くの人は、森を切り開き、農地を作り、町を作り、究極的には今の日本の都会のような、便利で安全な生活がしたいのだ。情報のグローバル化が進む今、私たち先進国に住む人間が、どのような生活を送っているのか、アフリカの人たちも、ちゃんと知っている。そういったアフリカの人たちに、彼らがもつ森を守ってもらうには、私たちはどうすればよいのだろうか。
答えはある意味簡単である。彼らが森を守ることで失う、あるいは得られなくなる利益にみあう利益を、森を守ることで得られる別の利益で補えるようにするしかない。方法はいろいろあるだろう。豊かな森を使ったエコツーリズムを立ち上げることもできるだろうし、森を守ることの見返りとして、民間あるいは国として、森を抱える国や地域に開発支援を行うのもいい。森林伐採の大きな理由の一つに薪の採集があるのなら、先進国が資金を出して、電気などの大体エネルギーを提供すればいい。最近話題になっている、二酸化炭素排出権の金銭取引も、その一つに挙げられるだろう。結局はお金の問題なのかと鼻白む人がいるなら、私たち先進国の人間が、いかにお金のために動いているかを思い起こしてほしい。ガソリンに、1リットル1円でも税金を上乗せしてそれをそっくりアフリカに送れば、薪の代わりのエネルギーくらい簡単に提供できそうなものだが、具体的に損をすることには、私たちはなかなか首を縦に振りそうにない。
森を守ることで失う利益を補うというからには、地元の人たちが実際に森をどのように利用し、森からどのような利益を得、そういった活動を禁止すると実際にどのくらいのふりえきが生じるのかを知らなくては始まらない。アフリカ各地で、長年にわたって霊長類の研究を続けてきた私たちのグループは、まずはこの点を明らかにしようと様々な調査を進めている。
一口にアフリカと言っても、その状況は地方によって全く異なる。首都から陸路がつながっておらず、チャーター機を雇って飛び込むしかない奥深い地域もあれば、国際空港から全面舗装の道路を走って数時間でたどり着く森もある。それぞれの地域で、森がどのように使われ、森を守るためにはどのような方策が考えられるのか、私たちの調査と取り組みを通じて紹介したい。

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−古市剛史(ふるいち たけし)先生のプロフィール−

専門分野

 霊長類学・自然人類学

論文・著書
Furuichi, T., Thompson, J. (eds.), The Bonobos: Behavior, Ecology, and Conservation, New York: Springer, 2008
Hashimoto C., Cox D., Furuichi T, “Snare removal for conservation of chimpanzees in the Kalinzu Forest Reserve”, Uganda, Pan Africa News 14: 8-11, 2007.
Hashimoto, C., Furuichi, T. “Frequent copulations by females and high promiscuity in chimpanzees in the Kalinzu Forst, Uganda”, in Newton-Fisher, N.E., Notman, N., Reynolds, V., Paterson, J. (eds.), Primates of Eastern Uganda, Sprinter, 2006, pp. 247-257.
“Red-tailed monkeys (Cercopithecus ascanius) hunt green pigeons (Treron calva) in the Kalinzu Forest in Uganda”, Primates 47, 2006, pp.174-176.