第1回 (2009年5月9日)

『戸塚で考える地域の力〜イントロダクション』

竹尾 茂樹(明治学院大学国際学部教授)

 

  明治学院大学が戸塚にキャンパスを開いたのは1985年、その翌年に国際学部が開設されて、私もそれ以来戸塚を勤務先として今日にいたっています。今年は戸塚区政70周年を迎えますが、その最近の1/3ほどの期間を経験したことになります。1939年の戸塚区の成立に6年前には、日立製作所が吉田町に完成、その後多くの工場が進出し、高度経済成長以降は丘陵地の造成が進み、東京・横浜のベッドタウンとなっています。
  横浜市の5副都心のひとつと指定され、戸塚駅は東海道線・横須賀線・湘南新宿ライン、成田エクスプレス、ブルーライン(市営地下鉄)を結節するターミナル駅として、乗降客数は日に約27万人。横浜駅に次いで横浜市内第2位の混み具合です。ちなみにこの27万人と言う乗降客数と、戸塚区の人口がほぼ同じです。全市のなかで第3 位ですが、区の面積は35.70Kuで18区中第1位、人口密度は1Kuあたり7474人で11 位となって、比較的ゆったりしています(面積・人口・人口密度は2007 年)。就業構造の詳細には立ち入りませんが、戸塚区は乳牛・肉牛の飼育では横浜市随一です。近隣の泉区・瀬谷区と併せて横浜市のほぼ全ての飼育牛を占めます。最近減りましたが、東海道線からも牛小屋ののどかな風景が垣間見られたものです。鉄道と道路網によって立地した工業地帯と、豊かな丘陵地帯に伝統的に展開してきた農業の組み合わせに、首都圏のベッドタウンという側面が近年強まってきた地域ということでしょうか。
  戸塚駅周辺の整備計画は、2007年から西口の再開発が本格的に着手されて5年後には交通広場・商業施設や区役所新庁舎などの完成を予定しています。戦後の闇市から立ち上がった歴史をもつ「旭通商店街」は姿を消します。
  1970年代には政府の中央集権的なコントロールに対して、地域主義に根ざし、地方自治体への分権を唱える「地方の時代」が提唱されました。90年代以降には地方発の改革が試みてもいます。しかしグローバリゼーションの進行する中で、地域社会がそのユニークな政治や経済活動、文化や価値の創出を行うことは必ずしも容易ではありません。戸塚という地域社会は一体どこを目指すのでしょう?それがこの公開講座を組もうとした時に現れて来た問いでした。それを考える糸口としてローカリゼーション(localization)という視点をもうけました。これは地域に根ざした経済のシステムを作ろうとするものです。さらには生活様式や価値観の変革をも含む新しい社会システムの探求にもいたりますが、果たしてそのようなことが可能でしょうか?軸足をこの戸塚に置きながら、いろいろな地域におけるローカルなものの追求の試みを紹介し、考えたいと思います。

 

−竹尾 茂樹(たけお しげき)先生のプロフィール−

専門分野

比較文化論

論文・著書
"Festivals as Processes for the Construction of Collective Memory", 共同研究「東アジアにおける歴史認識とアイデンティティ構築」(最終報告)『研究所年報』第8号、明治学院大学国際学部付属研究所、2005年12月、3-11頁
「日本におけるヤギ飼育の変容」、共同研究「家畜と人間社会」(最終報告)(代表 竹中千春)担当執筆分『研究所年報』第10号、明治学院大学国際学部付属研究所、2007年12月、24‐26頁

「台湾における『少数民族観光』の現状と課題」『PRIME』28号、明治学院大学国際平和研究所、2008年10月