第7回 (2009年6月20日)
大江 正章(コモンズ代表)

1 人と地域が豊かになるために
(1)地産地消と学校給食――愛媛県今治市
@地場産型学校給食の推進、センター方式から自校方式へ、市内産が野菜40%・米100%・小麦70%、ゼロから広げたパン用小麦栽培、1万円の助成金と1700円の買い支え、小規模農協と手を結び有機農産物を給食へ、おとなになってからの影響
A生産から消費まで多様な地産地消政策
地産地消推進協力店の認定、市民を農の担い手とするための講座、農薬と化学肥料使用禁止の市民農園、有機農産物生産への助成、大規模な直売所、今治市食と農のまちづくり条例の制定、地産地消推進室の職員はたった二人
B食と世界を結ぶ食農教育
農家訪問と環境・平和教育で残飯が大幅減少(小学生は指導で変わる)、フードマイから省エネまで、集大成は広島への修学旅行(2) 大成功している農業体験農園――東京都練馬区
@畑のカルチャーセンター
農家が発想した農家が教える体験農園、1区画30u、約25品目を栽培、基本は低農薬、農家は週3回講義・生徒は週1回受講、生徒は3.1万(4.3万)の支出で8万相当の収入に、おカネだけではない高い満足度、食卓からの自給率向上、練馬区内に13農園・約1400区画、東京都内3区18市1町に53農園・3157区画、第38回日本農業賞大賞を受賞(09年1月、練馬区農業体験農園園主会)
A農縁コミュニティ
都市生活者(特に定年後のサラリーマン)の趣味をとおしたゆるやかなつながり、第二の人生のステップボード、老後を支える地域の共的セクター
Bコミュニティ・ビジネスとしての体験農園
農家の平均粗収入10aあたり113万(キャベツ年間2回転50万、直売80万)、経費率は市場出荷の6割程度、後継者の安定的確保、市場出荷から地産地消へ、最近増えたブルーベリー農園――「いい加減」な農家も残す
C都市農業のフルコース――白石農園
変身した全青協委員長、約30品目の中品種中量栽培――庭先販売・直売・スーパーとの契約、農業体験農園(大泉風のがっこう)、NPO畑の教室(総合学習の場、練馬大根・キャベツ・小麦などを年間通して体験)、学校給食への野菜の提供、精神障がい
者の受け入れ(東京都の協力事業所)、23区で稀な農園レストランの経営(シェフは農業体験農園の生徒)(3)商店街はまちづくりの核の一つ――兵庫県相生市・東京都足立区
@食をベースにした福祉コミュニティ(相生市)
シャッター通りの活性化、空き店舗を利用し、家庭料理を安価で提供(配食サービス・食堂)、行政との連携、近隣有機農業との結びつき、働きがいのあるコミュニティ・ビジネスで、みんなの利益を追求
A地域に貢献する商店街(足立区)
スーパーに対抗しまちづくりの株式会社を設立、病院のレストラン・給食の受託・高齢者への弁当宅配など(本業と兼業)、食材は商店街で調達、空き店舗利用の学童保育、商店街はまちに根を張る植物(4)高齢者が元気な産業型福祉――徳島県上勝町
@おばあちゃんの葉っぱビジネス
資源とはみなされなかった南天やもみじが日本料理の見た目を飾る「つまもの」へ、高齢者が平均150万の売り上げ、人口の2倍弱の視察者
A産業型福祉
高齢化率47%と徳島県平均のほぼ2倍、寝たきり老人は3人、1人あたり医療費は県内旧50市町村中19番目に少ない、頭と体を使っていきいき働き大往生
BIターン・Uターンが地域を支える
85年〜05年で定住したIターン者(よそ者)85名・Uターン者(出戻り)49名、人口比率6.4%、第3セクターやNPOの主軸として活躍、背景にはごみの34分別や棚田など環境保全の取り組みと地域資源の見直し
2 元気な地域の共通点
@地域資源を活かし、それに新たな光をあてて、暮らしに根ざした中小規模の仕事(生業)を発展させ、雇用をそこそこ増やしている。既存商品より単価は高い。
A地域に根ざした、前例にとらわれない発想とセンスをもったリーダーの存在。
Bよそ者(Iターン)と出戻り(Uターン)が多い。多くは都会育ちのよそ者は第一次産業業の復権や環境保全という価値観のもとで地域の魅力を発見し、全国に伝える
Cメインとなる仕事をしながら、自らの食べるものを作り、自給的部門を大切にしている人たちが多い。言い換えれば、安全な食べものを作る農の担い手。それが過度の商品経済の浸透の防波堤となり、そこそこの現金で暮らせる生活のベースを形づくる。
D自らの出身地であるかどうかとは関係なく、いま暮らす場所の環境や生業を大切にする。そして、農林業であれ地場産業であれ自治体の仕事であれ、まっとうなものを作り広めるという倫理観と、多少のビジネス感覚をもちあわせる。そうした人たちが元気な地域には必ずいて、そこに世代を超えた人と人の関係性の豊かさがある。非血縁・半地縁・地域共同性」に基づく生業と関係性の発展が21世紀の豊かさのモデル。
−大江 正章(おおえ まさあき)先生のプロフィール−
専門分野農・地域社会論、編集・出版
論文・著書「人が豊かになる地域づくり(2)熊本県南小国町・黒川温泉 温泉街と農の結合で次の一歩へ」『世界』(750)岩波書店、2006年3月、286-294頁 「人が豊かになる地域づくり(4)岩手県葛巻町、長野県飯田市 自然エネルギー推進で地域も人の心もあたたかに」『世界』(753)岩波書店、2006年6月、317-326頁
「『限界集落』の挑戦--中山間地に息づく『地域の力』」『世界』(781)岩波書店、2008年8月、247-257頁