まず、慶應義塾大学の山本氏から、
「アジア、ラテンアメリカなどの地域における社会運動・市民社会がどのように形成され、どのようなアプローチが可能か」をフェアトレードを事例に解説があった。
次に、PRIMEの勝俣所員が、2008年3月の南アフリカでの現地調査をもとに、1994年以来のポスト・アパルトヘイト期の経済社会的特質を明らかにしつつ、以下の問いを中心に論議が展開された。
1)アフリカ現代史において、南アフリカの国家の特質は他のサハラ以南のアフリカ諸国のそれと比して
特殊事例なのか、同じような特質化が可能なのか?
2)1994年に発足した新生南アフリカ(New South Africa)は、アパルトヘイト期のアフリカーナ・ナショナリズムと
黒人ナショナナリズムとどう折り合いをつけて、ひとつの自己規定the identity of the "people")を創出していくのか?
単なる民主化なのか、民族解放なのか、それとも何なのか。
3)格差の仕組みを残存させ、格差をなくそうとするポスト・アパルトヘイト期の経済政策に対して社会運動は
どのような対抗軸を形成したり、オータナティブを提示しているのか。
質問としては
・ポスト・アパルトヘイト期の黒人の社会的上昇の機会がどのように確保されているのか
・アパルトヘイト下の犠牲者と加害者の間に、どのような国民和解政策が実施されたのか、などがあった。
第2の「アルゼンチンのブエノスアイレスを中心とした市民活動に関する報告」では、同市における社会運動を「公共空間」の創出として位置づけ、様々な運動内容や、形態について報告がなされた。
声のあげ方がタイとは異なり、むしろフィリピンに近いというコメントや運動の参加の中身などについての質問がなされた。
最後のフィリピンを事例としたフィールド報告は、フィリピンのケソン市での住民自治の実態を1997年のポスト・マルコス期の憲法による住民自治法の実際の運用についてなされ、その可能性と限界が論じられた。
コメントとしては、制度そのものの分析でなく、その制度の使い方について詳細にわたり徹底解明しようとした点が評価された。また、住民側がその自治によってどのような実益があったのか。NGOと大衆組織としての住民団体はどのように異なるかなどの質問があった。
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