明治学院大学の5つの教育目標

ヘボン博士は、無償の医療奉仕、辞書の編集・出版と聖書翻訳、そして教育というおもに3つの貢献を果たしました。それらの貢献から私たちは、以下のことを学ぶことができます。

第1に、ヘボン博士の国境、民族、貧富の差を超えた「他者への貢献」には、イエス・キリストの無償の愛(アガペー)に対する信頼と応答があるということです。ヘボン博士自身の“Do for Others”は、じつにキリストの愛に対する信頼と応答でありました。ヘボン博士はキリスト教による人格教育がもつ内面的な豊かさを教えてくれています。

第2に、双方向のコミュニケーションの大切さです。「他者への貢献」を標榜したとしても、利己心をもつ人間ですから、自分の尺度で他者を見てしまいがちです。そこで、注意しなければいけないのは、自分の尺度で他者を見てしまって、自分の行為を他者はどう受け取るだろうかという配慮を怠ることです。ヘボン博士の場合、医療奉仕において身分の上下、貧富の差を越えて庶民に慕われるという双方向のコミュニケーションがあり、その成果は『和英語林集成』という辞書の語彙の豊富さに反映しています。教育においても塾生の信頼にその成果を読み取ることができます。

第3に、“Do for Others”の背後にある、「求めなさい、そうすれば与えられる」という積極的な生き方があることを忘れるわけにはいきません。求め、探し、叩くという姿勢があってこそ、他者のために貢献するというあり方は意味をもってきます。ヘボン博士には、「日本にプロテスタント・キリスト教を伝えたい」という強い「ミッション」(使命)がありました。「他者への貢献」を果したいという夢を抱き、その夢の実現を地道に追いかけていくことの大切さをヘボン博士は、教えてくれています。

以上のようなキリスト教による人格教育を基礎とした教育理念“Do for Others”に照らして、明治学院大学の5つの教育目標を紹介します。

第1に、他者を理解できる人間の育成。本学の教養、人文科学教育においては、自己の健康管理、人間の相互理解に不可欠な言語、芸術表現活動、心のありようが追究され、他者に対する洞察力を養います。そのような洞察力によって、文化や宗教、民族や価値観の多様性を理解する豊かな人間を育むことです。

第2に、分析力と構想力を備えた人間の育成。本学の社会科学教育において、経済法則、経営組織、社会関係、法律制度、政治運動の分析が追究され、論理的、実証的能力をもち、未来社会に対する構想力をもつ鋭利な人間を育むことです。

第3に、コミュニケーション能力に富む人間の育成。文章表現、メディア、情報処理、諸外国語によって、人間に対する洞察力や、社会に対する分析力を、年齢や社会的背景、文化や宗教、言語や国籍の異なる人間に上手に伝達できる人間を育むことです。

第4に、キャリアをデザインできる人間の育成。ヘボン夫妻からミッションをもつことの大切さを継承し、正課であれ、課外であれ、自分にとってのミッションを模索し、キャリアデザインに取り組むことのできる人間を育むことです。

第5に、共生社会の担い手となる人間の育成。ヘボン夫妻の「他者への貢献」が、立場や境遇、国籍や民族の相違を超えて、「弱者」「途上国」「少年少女」に対する暖かい眼差しをもった双方向の貢献であった点に鑑みて、隣人へのボランティアや福祉、外国との平和構築、自然環境との共存を図ることの出来る人間、換言するならば、人間、社会、自然と「ともに生きる」(Mitleben)ことの出来る人間を育むことです。

以上、明治学院大学は、以上5つの教育目標を掲げて、研究・教育に取り組んでいきます。