2016年度 入学式 祝辞

明治学院 学院長 小暮 修也

学生の皆さん、入学おめでとうございます。保証人ならびに関係者の皆様、ご子弟のご入学をお祝い申し上げます。

今、皆さんが座っているこの礼拝堂は、アメリカの実業家であるセベレンスという父子の献金を基にして建てられました。しかし、1914(大正3)年から始まった第一次世界大戦で建築資材が高騰したため、若い設計者に一部設計変更をしてもらい工事を行いました。そして、1916年3月27日には卒業式と兼ねて献堂式が行われました。したがって、今年は礼拝堂が建築されて100年になります。当初は長方形の建物でしたが、手狭になったので、1931年に両袖を拡張し、上から見ると現在のような十字架形になりました。

この若き設計者はウィリアム・メレル・ヴォーリズという人で、滋賀県の近江兄弟社を設立し、全国の教会や学校など二千棟以上の建物を建てた人です。このヴォーリズがある人の家の改修をするときに、通訳としてお願いしたのが一柳(ひとつやなぎ)満喜子さんという方です。二人は話し合ううちに愛し合うようになり、結婚したいと思うようになりました。けれども、一柳家は子爵の家柄で、ましてアメリカ人との結婚には猛反対でした。

その結婚を後押ししたのが、NHK朝の連続テレビ小説「あさが来た」のヒロインで、満喜子さんの親戚である「白岡あさ」こと、広岡浅子さんであったと言われています。子爵の娘であった一柳満喜子さんとの結婚は格式のある式場でなければならず、ヴォーリズは自分が手がけ、品格の高い礼拝堂である、この明治学院礼拝堂を選び、1919年に結婚したのです。

当時は、女性が大学に行くことに理解がありませんでした。広岡浅子さんも日本女子大学を作るのに大変であったことがわかります。今日、入学式にこのように沢山の女性が入っているのを見て、100年前より歴史は進んでいるという感慨を持ちます。また、当時は外国人との結婚も大変でしたが、今日では外国人と結婚する方もたくさんおられます。やはり、時代は進んでいることを実感しています。

ところで、皆さんは、ドイツの児童文学であるミヒャエル・エンデの『モモ』という本をよんだことがあるでしょうか。この本は、灰色の「時間泥棒」を取り上げながら、人間の心のうちの時間、人間が人間らしく生きることを可能にする時間、そういう時間が私たちからだんだんと失われてきている、この不思議な時間というものを中心テーマにしています。

聖書は、「時間」あるいは「時」というものを二つに表現しています。一つは、ギリシャ語で「クロノス」という言葉で、継続して流れていく時間のことを表わしています。そして、もう一つは、やはり、ギリシャ語で「カイロス」という言葉で、これは「ちょうど良い時」、「チャンス」ということを表わしています。

皆さんには、大学生あるいは大学院生として、皆平等に与えられている時間「クロノス」をどのように使うか、そしてまた、英語圏だけでなく、ドイツ語圏、スペイン語圏とも協定を結んで充実してきている海外留学、あるいは日本の大学で最も進んでいる国内外のボランティア、さらに課外活動など、与えられるチャンス「カイロス」をいかに生かすか、ということが問われています。

どうぞ、この大学で互いを大切にしながら学問を究め、様々な体験をして、人間性を深めていただきたいと願っております。本日は、ご入学おめでとうございます。