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コラム「キャンパスCLINIC」

お酒は二十歳を過ぎてから

白金通信2004年03月号

入学試験も終わって卒業式に入学式と、いろいろ催し物の多い季節にきています。出会いと別れにはとかくお酒がつきものです。日本古来から“御神酒”としてまつりごとに酒は欠かせないものですが、ちょっと肝臓のことも考えてみてください。 酒=アルコール。ビールは薄いから大丈夫とか焼酎は体にいいからとか言っても結局はアルコールの絶対量によっていろいろな障害が出てくるのです。ちなみに純エタノール20gに相当するのはビール大瓶1本、日本酒1合、ウィスキー水割りシングル2杯、ワイングラス1杯半位です。 飲んだアルコールは胃から20%位吸収され残りは小腸から吸収されて大部分は肝臓で分解処理されます。エタノールはアルコール脱水素酵素(ADH)によってアセトアルデヒドに分解され。さらにアルデヒド脱水素酵素(ALDH)によって酢酸となり最終的には水と二酸化炭素になります。このアセトアルデヒドが悪酔い・二日酔いの主な原因と考えられています。 これらの酵素量は遺伝的に決まっていて、生まれつき大酒飲みやまったく飲めない下戸など、アルコールに対する許容量は個人差が大きいのです。とくにALDHという酵素は欧米人に比べて日本人には少なく、日本人はもともとお酒に強くない人種といえます。 一般にアルコールの代謝速度は1時間7g前後で、例えばビール大瓶1本飲むと処理に3時間かかると考えられ、3本も飲めば翌朝までアルコールが残る計算になります。 飲酒後の血中アルコール濃度(BAC)から酔いの程度をみたとき、微酔爽快期BAC0.02 - 0.04%はビール大ビン半分から1本飲んだときに相当し、気分もさわやかで話もはずむ状態です。 ほろ酔い初期BAC0.05 - 0.1%はビールなら1 - 2本位でさらに活発になり上気した感じです。 酩酊前期BAC0.11 - 0.15%ビール3本位では抑制がとれて大声で話したり喧嘩することも多くなります。 酩酊極期BAC0.16 - 0.3%ではまともに歩けず人にぶつかったり、吐いたりする状態です。 泥酔期BAC0.31 - 0.4%は1升酒かウィスキーボトル1本近くなり話は支離滅裂でほとんど立っていられず意識も混濁してきます。 昏睡期BAC0.41 - 0.5%では意識はなく失禁状態で死に至る可能性もあります。酒気帯び運転の基準は最近きびしくなってBAC0.03%に引き下げられ、ビール小ビン1本でも基準を超えるくらいです。 ダイアナ妃が亡くなったときの運転手の血液からはBAC0.175%と非常に高濃度のアルコールが検出されたようです。これらはアルコールの急性症状ですが、長期間の大量飲酒はいろいろな臓器障害につながります。 アルコールと言えば肝臓で、ほとんど自覚症状が無くても脂肪肝・アルコール性肝炎 - 肝硬変へと進行してしまいます。肝臓以外にもアルコール性膵炎・心筋炎・胃腸炎・精神障害など全身にわたって影響がみられます。そして特に女性ではアルコールに対する耐性が低く、男性の半分の量・半分の期間で肝硬変になると言われ、さらに妊娠前後の飲酒は流産の危険性や奇形の発生が高くなることが知られています。 お酒の飲みすぎは確かにいろいろと問題ですが、お酒には良い面もいろいろあります。少量のアルコールは血圧を下げ、善玉コレステロールを上昇させ、血液の流れを良くして心筋梗塞の発症を抑える働きもあります。なんといっても生活の中の潤滑油としての役割は無視できません。 酒は上手に楽しく飲んでほしいものです。ゆっくりと飲み一気飲みしない。食事をとりながら酒は適量で控える。ほかの人に無理強いしない。休肝日をつくる。・・・を守ってください。 最後に「お酒は二十歳を過ぎてから」という事をくれぐれもお忘れなく。そして飲酒運転はもってのほか。酒気帯び運転は30万円、同乗者も同罪で7人乗りワンボックスカーなら合わせて210万円ですぞ!

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