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コラム「キャンパスCLINIC」

「喫煙は病気」―だから治療が必要

白金通信2005年01月号

昨年11月中旬、横浜校舎において、健康相談所主催の公開講演会を実施しました。「時代は禁煙!新しい禁煙方法と社会の動き」をテーマに、御自身内科医であり、現在は奈良女子大学教授の高橋裕子先生を講師としてお招きしました。 先生は、「禁煙マラソン」の主宰者でもあり、全国各所への講演やインターネットを使ってのバックアップなど、「喫煙害」の提唱と「新禁煙方法」の理論と実践の第一人者であります。講演は説得力あり、迫力ある2時間でした。特に印象に残った幾つかをご紹介したいと思います。 はじめに、世界の喫煙文化を紹介され、特に中国の10歳にも満たない少年が、笑顔でタバコを吸っている画像が映し出され、受講者の中で空恐ろしさを感じたのは私だけではなかったと思います。逆に、北欧では子供がタバコを吸っている大人を注意することがあると話されていました。「タバコを吸う=悪い事」をする人を注意するのは当たり前の感覚であるということからでしょう。 また、喫煙は「子供の前でアダルトビデオを平気で見るようなもの」と隠喩されていました。何か、背筋がぞくっとする一瞬がありました。 昭和20年代生まれの私の感覚からは、日本でもタバコは大人の証、「紫煙」「燻らす」などそれを誉めそやすかのような言葉もありました。タバコに対する温度差はまさしく国々の文化なのでしょうが、日本は世界に比べ喫煙害の意識が20年ほど遅れているという現状を吐露されました。 しかしながら、昨今急ピッチで意識が高まり、京都の大学などでは「非喫煙者証明書」なるものを発行し、就職に有利な条件に結びつけるなど、非喫煙者獲得へと企業自体が胎動し始めているとのことです。 先生のお話のピークは、「喫煙は病気である。ニコチン依存症である」と断言されたことです。それは、「タバコがやめにくいのは、意思が強いとか弱いとかの問題ではなく、脳内ホルモン系に関与する脳細胞表面に、異常が生じるため」と図解されていました。 つまり、「感情を司る部分にニコチンが付着して異常を来す」だから、普通の病気と同じように、医者による治療こそが必要になる。その治療にあっては、経口薬等に比べ副作用の無いニコチンパッチが最適薬(但し、喫煙者の健康状態により使用が出来ない場合があるため医師の診断が必須)とのお話であります。 また、習慣性の病気であるため、患者(=喫煙者)の吸いたいけれどやめたいという意思を持続する為の支援も大事であり、そのため、メール等で持続を促すバックアップも必要になるとのことでした。 最後に、それでもタバコをやめられない人は、「最低限のルールとして、子供の前では絶対に喫煙しないで欲しい」と力説されていました。 拙文でありますがお読みになられた学生の皆さんやご父母の方々はどのようにお感じになりましたでしょうか。新年を機にやめようと思われた方がいらっしゃるようでしたら幸甚です。新しい文化を作ることも私たち今の時代を生きている人間の使命とも言えるのではないでしょうか。

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