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コラム「キャンパスCLINIC」

桜の季節に

白金通信2006年4月号

今年も桜の季節がめぐってきました。満開の桜は何度みても素晴らしいものです。しかし、桜の花はあっという間に散ってしまいます。葉桜となり、やがて新緑の木々の中に埋もれていきます。早く桜の季節が来ないかと心待ちにしていたのに、満開の日はごく短いものです。しかし年中花を咲かせているとすれば何の感動も覚えないかもしれません。また桜の木も大変でしょう。花を開かせるためには多大なエネルギーを要するでしょうから。何事も終わりがあることが世の定めでしょうし、それだからこそ有終の美もあるのです。
 桜に限らず、花が咲くまでに、そして実ができるまでには、長い月日が必要です。この原稿を書いている時に日本がオリンピックで念願の金メダルを獲得したという朗報に接しました。個人としては幼少時からの努力が実ったわけですし、世界的レベルの選手の育成を行ってきた組織における積年の努力が成果を得たともいえるのでしょう。
 私は、もとより庭師ではないし、園芸の趣味があるわけではありません。いつかとは明確に覚えていませんが、多分20代前半のある冬の日に、木々が寒い日々の中で既に春への準備をしている姿に感動を覚えたことがあります。それまでの20数年毎年見たであろう何の変哲もない普通の情景ですが、その時の私自身の心的状況もあったのか、非常に印象的な出会いをしました。特段新規性のない普通の世の中の流れであっても、私たちの見方によって全く新しいものが見出せるということであろうと思います。芸術家は特にそのような感性の豊かな天賦の才能をもった方たちなのでしょう。何気ない日常性の中にあっても、見方によっては、感じ方によっては、とても素晴らしいものがみえてくるということでしょう。それは、自然であっても、人であっても、人のつくったものであっても同じことなのでしょう。
 さて、春に花が咲くためには、冬の凍りつくような寒い日の続くことが必要かもしれません。下積みの時期が何事を達成するにも必要だし、大輪の花を咲かせるためにはしっかりとした計画のもとでの下積み生活が求められます。下積みとは基礎固めです。そして、枝振りをよくするためには、剪定が大切です。四方八方に出た枝の中から残すべき枝を選びます。人も同じで四方八方に枝を伸ばす時期があります。そして、その中で捨てるものは捨て、残して伸ばすべきものを選ぶということが大切です。剪定では、どの時期に、どの部位を切るのかがとても大切です。私たちにおいても同じことです。決断の時期や決断の方法が大事なのでしょう。企業も同じです。様々な事業に手を出す時期と、その中から将来性のあるものを選ぶ作業が大切です。
 さて、この意味では大学時代は四方八方に枝を伸ばす時期です。何事にもチャレンジしてください。時にはじっとしている冬ごもりが必要になるかもしれません。そういう時はジタバタせずに、じっと時の流れを待ち、また流れをしっかり見ていることが肝心です。

 

心理相談担当校医 島 悟