ブラジル「フィールド・スタディー(A)」実施報告
海外フィールドスタディ報告
国立農牧業研究所(EMPRAPA)の苗畑で。さまざまな植物繊維のほか、薬用植物、果樹、用材種などを見学して、それぞれの植物の特性・利用方法について学習。
アマゾン・トメアス日系移住地の坂口さんのお宅で。アグロフォレストリーの畑を見学し、採れたてのアセロラジュースとパパイヤをご馳走になり営農システムを学習。
2002年度春学期の「フィールドスタディ(A)」は、9月2日~18日の期間、8名の履修学生がブラジルを訪問した。
アマゾン地域東部に位置するパラ州では、国立パラ連邦大学(UFPA)ポエマ計画・国立農牧業研究所・連邦農業技術専門学校・日系トメアス文化協会・植林会社などが受け入れ団体となった。
現地では、アマゾン熱帯雨林の保全・再生と地域住民の社会開発を目的としたアグロフォレストリー・農林産物加工プロジェクト、アマゾン植物繊維の紙漉き技術プロジェクト、荒れ地の再生造林プロジェクトなどを視察。さらに、電気・水道のない伝統的な農家でハンモックを吊って寝るホームステイを体験した。
リオデジャネイロ州では、国立リオデジャネイロ連邦農科大学(UFRRJ)が受け入れ先となり、原生林の保全・再生プロジェクトを視察、森林地域の小農家庭にホームステイした。また、グアラニ先住民族の村落やアフリカ系の逃亡奴隷の村落を訪問し、伝統文化やキャッサバやサトウキビなどの農産物加工プロジェクトを学習しつつ、夕食会と舞踊・歌の交流活動が実現した。
リオデジャネイロ市内では、ストリートチルドレンのケア施設を2箇所訪問し、都市部の社会問題を学習しながら、折り紙や球技などを通じた子供たちとの交流活動を行なった。以上の体験学習を通じて、学生たちはブラジルの多様な生態系と社会文化的な多様性の現実に触れる機会を得た。
実施プログラム: 2002年9月2日—9月18日
| 9月2日 (月) | 機中 | 午前 | 成田発 (19:00 RG8837) |
| 午後 | 機中 | ||
| 9月3日 (火) | アマゾン地域 (パラ州ベレン市) |
午前 | 機中 | 午後 | ベレン着 (14:00) オリエンテーリング |
| 夜 | 夕食会 (ホテル内レストラン) | ||
| 9月4日 (水) | アマゾン地域 (パラ州ベレン市) |
午前 | ベレン市中央市場 (ベロペーゾ) 視察 | 午後 | エミリオゲルジ博物館植物園視察、イコアラシ地域マラジョアラ焼陶器工房視察 |
| 夜 | ベレン市埠頭ウォーターフロント地区視察・夕食 | ||
| 9月5日 (木) | アマゾン地域 (パラ州ベレン市) |
午前 | アマゾン貧困撲滅環境計画 (POEMA) 事務所見学・POEMAシステムに関する講義・ブリーフィング・ビデオ上映等 |
| 午後 | 紙漉き工房見学・ポエマテック社ココナツ繊維加工工場視察 | ||
| 夜 | アマゾン川クルージング (伝統音楽・舞踊見学・体験学習)・エイダイドブラジル社副社長 (佐藤氏) らとの夕食会 | ||
| 9月6日 (金) | アマゾン地域 (パラ州トメアス郡) |
午前 | 国立農牧業研究所 (EMBRAPA) 視察・栽培作物の品種改良ラボ見学・アマゾン原産の樹種・果樹・栽培植物の苗畑見学 |
| 午後 | 連邦農業技術専門学校訪問・ココヤシ遷移加工工場の視察・アグロフォレストリー農場見学 | ||
| 夜 | 国立パラ連邦大学 (UFPA) POEMA計画代表者主催の夕食会 (総勢20名参加) | ||
| 9月7日 (土) | アマゾン地域 (パラ州トメアス郡) |
午前 | ベレン発 (7:30) パラ集北東部地方都市・独立記念日パレード見学 |
| 午後 | トメアス着 日系坂口農場・アグロフォレストリー農場視察 | ||
| 夜 | 自由行動 | ||
| 9月8日 (日) | アマゾン地域 (トメアス郡) |
午前 | トメアス文化協会・移民資料館・「日系移民の家」・「移民の森」視察・日系高松農場・小長野農場のアグロフォレストリー視察 |
| 午後 | カピタンポッソ着、エイダイドブラジル社 (EBB) のカピタンポッソ郡の造林地視察 | ||
| 夜 | アマゾン川支流渓流保養地での夕食 | ||
| 9月9日 (月) | アマゾン地域 (パラ州 ガハフォンドノルテ郡) |
午前 | エイダイドブラジル社 (EBB) のガハフォンドノルテ郡の造林地(牧場跡地)の見学・混植による造林技術の視察 |
| 午後 | カピタンポッソ着、エイダイドブラジル社 (EBB) のカピタンポッソ郡の造林地視察 | ||
| 夜 | アマゾン川支流渓流保養地での夕食 | ||
| 9月10日 (火) | アマゾン地域 (パラ州ベレン市) |
午前 | 日系伊藤農場見学・柑橘類・銘木類との混植によるアグロフォレシュトリー視察 |
| 午後 | ベレン市内のショッピングモール見学 | ||
| 夜 | イタリアレストラン | ||
| 9月11日 (水) | リオデジャネイロ州 パラチ郡 |
午前 | 移動日 (アマゾン地域→リオデジャネイロ州) ベレン発 (7:00) 、リオ着 (10:30) 、リオ発 |
| 午後 | リオデジャネイロ州パラチ郡着 | ||
| 夜 | 自由行動 | ||
| 9月12日 (水) | リオデジャネイロ州 パラチ郡 パトリモニオ村 |
午前 | クルージング |
| 午後 | 黒人逃亡奴隷 (キロンボ) の集落 (カンピニョ村) 訪問・キャッサバ工場・サトウキビ加工施設等の見学 | ||
| 夜 | 黒人逃亡奴隷 (キロンボ) の集落 カンピニョ村) での文化交流会 (カポエラ・歌ダンス) と夕食会 | ||
| 9月13日 (金) | リオデジャネイロ州 パラチ郡 |
午前 | 地域の小規模農家の視察・家庭菜園・アグロフォレストリー等の視察、残された原生熱帯林地域のトレッキング |
| 午後 | 先住民族 (トゥピグァラニ人) の集落を訪問・視察・渓流地域へのトレッキング | ||
| 夜 | パラチ市内の漁民出身の一般家庭での夕食会 | ||
| 9月14日 (土) | リオデジャネイロ州 | 午前 | パラチ市内自由行動・おみやげ買い物 |
| 午後 | 移動 (パラチ市→リオデジャネイロ市) | ||
| 夜 | イパネマ地区レストラン (「イパネマの娘」発祥のレストラン) | ||
| 9月15日 (日) | リオデジャネイロ州 | 午前 | 「キリストの丘」見学 |
| 午後 | ストリートチルドレン・ケア施設サンマルチーニョ協会の2施設訪問・子供たちとの交流会 | ||
| 夜 | 市内観光 (パンデアスーカ) ・シュラスコレストラン夕食会 | ||
| 9月16日 (月) | リオデジャネイロ州 | 午前 | 自由行動 |
| 午後 | 国立リオデジャネイロ農科大学 (UFRRJ) を訪問・ブラジルの大学制度・キャンパス等の学習・見学 | ||
| 夜 | リオデジャネイロ発 (21:50 RG8836) | ||
| 9月17日 (火) | 機中 | 終日 | 機中 |
| 9月18日 (水) | 日本 | 終日 | 機中 |
| 午後 | 成田着 (16:00) |
学生によるレポート : 花村阿耶
アマゾン・パラ州北東部で小農民の家庭でホームステイを体験。電気・水道のない農村生活を体験し、夜遅くまで交流活動をしたあとハンモックで就寝。
リオのストリートチルドレンのケア施設で。折り紙を教えながら交流する。ストリートチルドレンが生まれる原因・社会背景と施設の活動内容などを学習。
ストリートチルドレンのケア施設での集合写真。学生たちは、子供たちの陽気さと力強さに共鳴して、遊びを通じて真剣に交流を行なった。
発展途上国の貧困問題に関心があり、そこに住む人々に役立つような仕事に就きたいと考えている私にとって、ブラジルの旅は現実の厳しさと自分の考えの甘さを認識する契機となった。
自給自足の生活を営んでいる一家でのホームステイはとても貴重な体験だった。電気・ガス・水道はなく、夜は星空と蝋燭の灯りを頼りにし、ハンモックの上で眠り、朝は井戸の水で歯を磨き、トイレはその辺の空き地ですませた。ここでの生活は時間がのんびりと過ぎていき、日本のあくせくとした生活が嘘のように思われ、物が溢れている日本には多くの無駄があることに気付いた。
ここに住む子供達は学校には通わず、自宅で学習していた。とても明るくて人なつっこく、いつも飛び跳ねているその姿はとても愛くるしかった。言葉の違いなど全く気にならず、逆に日本語を覚えようと私や友達が喋った言葉を何度も何度も真似ていた。一緒に絵を書いたり、折り紙を作ったり、追いかけっこをしたりと、楽しい一時を過ごした。子供達の目の輝きと元気に走り回る姿は今でも忘れられない。
現在のブラジル通貨の価値は低く、円に換算すると物価が非常に安い。そのため旅行中は好きなものを自由に簡単に購入でき、美味しいものを満足いくまで食べることができた。旅の途中でスラム地域や物乞いを見たときには、そんな自分に怒りと申し訳なさを感じてしまった。
先進国に生まれたのも運であり、発展途上国に生まれたのもまた運である。しかし、運という一つの言葉で終わらせてしまっていいのだろうか。自分だけ幸せでいいのだろうか。この世は本当になんと不平等であり、矛盾に満ちた世界だろうと苛立ちを感じる。
フィールドワークという科目の履修は、自分自身を振り返る非常に良い機会となった。発展途上国の貧困問題を解決するために開発経済学を学んできたが、それだけでは不十分であると気付いた。机上で勉強していても現場に行かなければ、肌で感じなければ、現実を理解できない。
発展途上国の人々の立場を尊重しながら彼らのために貢献できる方法を以前にも増して真剣に考えている。しかし、自分の行動が逆に現地の人々の幸せに悪い影響を及ぼしてはいけないので、よく考えて協力の仕方を見つけたい。