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キューバ「フィールド・スタディ(C)」実施報告

教員による海外フィールドスタディ報告 : 原後雄太 

2月14日~3月2日の期間、フィールドスタディ科目(C)として、経済学部生12名の参加のもとでキューバを訪問した。今回のキューバ訪問のおもな目的は、経済的に依存していた旧ソ連・東欧圏の崩壊と米国の経済封鎖の強化による深刻なキューバの経済危機を背景に、食糧自給率を高めるために急速に推進されている都市農業・有機農業に関する実証調査であった。

実施プログラムにあるように、二週間の滞在期間中、都市農業分野を中心にさまざまな協同組合や自営農家を数多く視察・訪問し、ソ連型の国営農場が自営農家の組織化を通じた協同組合システムに再編成されている実態を把握するとともに、個人の所得向上のインセンティブに支えられた農産物の自由市場が育っている現状を目のあたりにすることができた。キューバの都市農業・有機農業における普及の実態については、「事例研究」科目における文献の輪読等を通じて学習していたが、実際の制度運用における生の姿を幅広い関係者インタビューを通じて実証的に確認することができた。

キューバの政治制度・教育制度・医療制度についても、現職の市長(ハグエイグランデ市)、大学副学長(ハバナ工業大学)、ファミリードクターなどへの長時間にわたるインタビューを通じて、きわめて具体的に学習することが可能となった。国営の関係機関を通じて認可・指定されたヒアリング先ではなく、多様なインタビューが可能となったのは、プログラムコーディネーターを勤めていただいたキューバ人翻訳家・舞踏家のジョエル・マレロ氏の個人的なネットワークに負うところが大きい。きわめて濃密で充実したプログラム形成と体験を可能にしてくれたマレロ氏には、この場をお借りして謝意を申し上げたい。

キューバは常夏の熱帯国である。わたしはかつての仕事柄、カリブ海国をはじめ多くの中南米諸国に滞在してきたが、初めて訪れたキューバはそれらのどの国々よりも人間が火傷するほどに「熱かった」。世界最強を謳歌する「帝国」を目と鼻の先にして、政治経済的に果敢に「自主独立」の道を歩む社会主義国キューバの存続の秘訣。それは熱帯気候と緊密な人間関係が生みだす「熱さ」(サルサと自由恋愛に支えられる「官能社会主義」とも評される)、米国という「帝国」に挑戦する「コミュニティ」国家であることに拠るのではないか。そんな感触を抱いた旅だった。

実施プログラム: 2003年2月14日—3月2日 

2月14日 (金) カンクン 午後 成田発 (17:05) - ヒューストン着 (13:45) ヒューストン発 (16:00) - カンクン着 (18:16)
カンクンホテル着
2月15日 (土) ハバナ 午前 空港へ移動
午後 カンクン発 (12:50) - ハバナ着 (13:50) キューバ友好協会 (ICAP) 訪問・昼食、 ハバナ工業大学内ホテル着
大学内ホテルで夕食・休息
2月16日 (日) ハバナ 午前 有機農園主 (オルガ氏) へのヒアリング
午後 ハバナ市内見学 (革命広場・旧市街・聖堂・ヘミングウゼイホテル等) を見学
旧市街内レストランで夕食
2月17日 (月) ハバナ 午前 オルガ農場・直売所の視察、有機農業・協同組合方式等のヒアリング、都市農業の現場視察
午後 アメリカ農場、オルガ第二農場、協同組合 (CCS) 農場・堆肥生産現場、グースト農場・観葉植物園の視察
ハバナ市内レストランで夕食
2月18日 (火) ハバナ 午前 カルロス農場 (UBPC協同組合方式) の視察・ヒアリング
午後 都市農業推進開発センター (ACTAF本部) の視察・ヒアリング
ハバナ市内レストランで夕食
2月19日 (水) ハバナ 午前 ハバナ市内マール地区有機菜園 (オルガノポニコ) を視察・ヒアリング
午後 ハバナ市郊外の海浜地域・国営リゾート施設見学・自由行動
ハバナ市内レストランで夕食
2月20日 (木) ハバナ 午前
午後
農業省土壌研究所の訪問・ヒアリング
ハバナ市内レストランで夕食
2月21日 (金) ハグエイグランデ市 午前 首都圏公園・河川管理事業の視察・ヒアリング
午後 マタンサス県・ハグエイグランデ市に移動
ハグエイグランデ市内レストランで夕食
2月22日 (土) ハグエイグランデ市 午前 オルテガ自営農場の視察・ヒアリング
午後 ペドラーサ医師宅の訪問・ファミリードクター制度についてのヒアリング、市内文化センター訪問・サルサ体験レッスン
ハグエイグランデ市内サルサクラブ
2月23日 (日) ハグエイグランデ市 終日 Playa Larga海岸へのリクリエーション・海浜での自由行動
2月24日 (月) ハバナ 午前 ハグエイグランデ市庁舎訪問・ゴサンレス市長との会見・ヒアリング
午後 養豚事業の視察・ヒアリング、ファミリードクター診療所の視察・ヒアリング、ハバナ市への移動
ハバナ市内レストランで夕食
2月25日 (火) ハバナ 午前 ハバナ工業大学副学長との会見、副学長・学生らへのヒアリング・交流会
午後 国立熱帯農業基礎研究所の訪問・ヒアリング
ハバナ市内レストランで夕食
2月26日 (水) ハバナ 午前 ホセイート農園の視察、日系移民・花卉栽培のヒアリング
午後 ピノールデルリオ県へ移動、ラステララス生物圏保護地域・ロザリオ村を訪問、エコツーリズムを体験
ラステラサス内レストランで夕食
2月27日 (木) ハバナ 午前 アグロメグカード(農産物自由市場)を訪問
午後 ハバナ市内中華街を訪問・昼食・自由行動
オルガ夫妻・農政局長夫妻を招いた晩餐会
2月28日 (金) ヒューストン 午前 自由行動
午後 ハバナ発 (15:50) - カンクン着 (15:50) カンクン発 (17:16) - ヒューストン着 (19:34)
自由行動
3月1日 (土) 機中 午前 ヒューストン発 (10:40)
終日 機中
3月2日 (日) 日本 終日 機中
午後 成田着 (15:40)

学生によるレポート : 笹生朋子 

注目されるキューバの都市農業 :
今回のフィールドスタディは国際的に注目されているキューバの都市農業・有機農業のほか、医療・教育・政治制度について視察・ヒアリングを行なった。都市農業では、ハバナ市内などでいくつもの農園を見てきた。どこも整備されていて、同じような光景であった。都市部の農園では、主に葉野菜を中心に栽培している。これは、都市の消費者に新鮮な野菜を提供しようということからである。

キューバの都市農業は、食糧危機のときに始まった。食糧確保などのため、国が28品目を田舎でなく都市で重点的に作っていこうとしたもののひとつであり、「都市農業=有機野菜栽培」ではない。ほかには豆や果樹もあり、養豚、養鶏なども含まれる。都市部に葉野菜が目立つのは、土が悪いからそれしかできないのが理由らしい。都市では有機肥料によって作物を育てているところが大半を占める。現地の人の話を聞くと、その方が化学肥料より手に入れやすく安上がりだという考えが多かった。

キューバの都市農業を支えるシステムは、すでにきちんとできあがっていた。各農家はそのシステムに従い、自治体の政府担当者に指導を受け経営している。まず国には農政局があり、そこが全体を管理、監視をしている。国から県、自治体に細かく分かれ、そこで組織的に農業が行われている。旧ソ連式の国営農場は解体され、協同組合に加入する個人農園が増えている。加入は基本的に自由であるが、加入すれば何らかの支援を受けることができる。例えば、高価な大型農業機械を組合で購入し、組合員で共同使用したりできる。また組合で土地を所有し、そこで野菜や苗を作り組合員に配ったり、雇用を生んだりして地域に貢献している実態も観察できた。

おわりに :
キューバという国は、本当に刺激的な国だった。今回はただの旅行ではなく、このようにいろいろなことを学べてよかった。他のどこにもないキューバ独特の思想が存在していると思う。少しでもこの国を理解でき、さらなる興味をもてたことがなによりの収穫であった。厳しい調査の中でも、人と触れあいを持ったり、おいしい食事とお酒を満喫したり、ダンスを習ったりとても楽しめた。さらに空と海と星空のすばらしさに感激だった。貴重な体験と、ほかでは得られない感覚を味わえたことで、自分自身が成長できていたら、さらにうれしい。とにかく強烈な印象の2週間だった。参加できてよかったと思う

PHOTOレポート 

UBPCに加入するミゲル・サルシネス氏らの農場でのヒアリング。従業員50名を抱え、代表者の給与(1,600ペソ)は大臣給与の3倍。所得向上をインセンティブに食糧増産を図る。

首都圏公園を訪問、ヒアリング。ハバナ市における「我が緑プログラム」(植林事業)・河川管理・下水処理の現状などについて説明を受け、公園を視察する。

 

マタンサス州における自営農家を視察・ヒアリング。グアバ、フレホル豆、トマト、バナナなどを混作栽培している。

マタンサス州ハグエイ市の文化センターにて。地元の講習生とともにサルサほかキューバの民俗ダンスについての体験レッスンを受ける。

 

マタンサス州のファミリードクター診療所で勤務するオシエル・ペドラーサ氏の自宅と診療所を訪問。キューバの医療制度について詳しい説明を受ける。

ハグエイグランデ市庁舎を訪問。アレクシス・ゴンサレス市長から2時間以上にわたり、キューバの自治体選挙や国政選挙制度のしくみについて説明を受けながら質疑応答。

 

ハバナ工業大学のミゲル・カストロ副学長ほか学生との交流会。キューバの教育制度、入試制度、大学における教育システムの内容などについて詳しく説明を受け、意見交換。

熱帯農業基礎研究所でのヒアリング。ネルソ・コンパニオーニ副所長よりキューバの熱帯農業研究、種の多様性保全、品種改良、バイオ農薬などの現状について説明。

 

キューバ初のエコツーリズム発祥の地であるピナデルリオ県ラステラサス生物圏保護地域を訪問。日系園芸家(竹内憲治氏)が設計したロザリオ開拓村の地でもある。