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ロシア「フィールド・スタディ (A) 」実施報告

教員による海外フィールドスタディ報告 : 原後雄太 

ビキン川のほとりで現地の高校生らと

2004年度春学期フィールドスタディは、5名の学生参加のもとで、森林資源の管理と少数民族の自立的発展をテーマに、極東ロシアの北方少数民族ウデヘ人の村落クラースヌィ・ヤール村を中心に滞在した。

クラースヌィ・ヤール村は、中国との国境河川ウスリー川の支流であるビキン川中流域にあり、ロシア沿海州のハバロフスク市とウラジオストク市のほぼ中間地域に位置する。現地では、二人一組となってホームステイし、新鮮な野菜や魚などの素材を使ったデリケートで美味な家庭料理を毎日、振舞われた。また、各家庭にある快適なサウナ風呂も快適な体験であった。

ウデヘ人は狩猟採集民族であるが、彼らの案内で一泊二日かけて4台のボートに分乗し、紅葉の始まったビキン川を上流方面へエコツアーを行った。河畔沿いにつくられたキャンプ小屋に寝泊りし、釣れたてのコクチマスやイトウの刺身やイノシシ肉などを堪能した。

また、林業会社役員の案内でタイガ林のなかをトレッキングし、地域の生態系について体験学習した。訪問地域は、広大なシベリアタイガ林のなかでも、数少ない広葉樹と針葉樹の混交林地帯であり、絶滅に瀕した世界最大のアムールトラやウスリーイノシシなどが生息する。乱伐と密猟による森林破壊の危機が迫っており、ユネスコの定める世界遺産への登録が検討されている貴重な保護地域である。

村落内では、村民で組織する林業会社や小中学校などを訪問した。学校教員たちとの交流会では、教育制度やいじめ・ひきこもりなどの問題について熱心な質問や意見交換があった。ウデヘ人の歴史文化を継承する画家や工芸家などへのヒアリングでは、モンゴル民族・女真族・ロシア人らによる極東ロシアの支配の歴史や地域住民の伝統的な森林利用・生活様式について学習した。地元の学生たちによる民族舞踊や伝統的な生活様式の披露、地域住民との対抗バレーボール大会も開かれ、貴重な交流の日々となった。

実施プログラム: 2004年9月3日—9月10日 

9月3日 (金) 午後 新潟発
ハバロフスク着
9月4日 (土) 午前 アムール川展望台へ
ハバロフスク郷土史博物館の視察・ヒアリング
午後 ハバロフスク発
野生動物リハビリ施設の視察・ヒアリング
ビキン川中流域・クラースヌィ・ヤール村着 ホームスティ
9月5日 (日) 終日 クラースヌィ・ヤール村内視察・ヒアリング
9月6日 (月) 終日 クラースヌィ・ヤール村発
ビキン川上流域へ
地域の森林資源・漁業資源・社会経済・先住民族の生活文化等に関する視察・ヒアリング
9月7日 (火) 終日 タイガ林の視察・ハイキング
タイガ林の植生・野生生物・森林保全の活動に関するヒアリング
9月8日 (水) 午前 クラースヌィ・ヤール村内の教育・文化施設の訪問・ヒアリング
午後 クラースヌィ・ヤール村内の林産物加工企業の訪問・ヒアリング
9月9日 (木) 午前 クラースヌィ・ヤール発
午後 ハバロフスク着
ハバロフスク市内自由行動
9月10日 (金) 午前 ハバロフスク市内の市場・ショッピングセンター施設等の視察・ヒアリング
ハバロフスク発
午後 新潟着
新潟発 東京着

学生によるレポート : 加藤綾子 

今回のフィールドスタディーは、森林伐採に始まる環境問題や資本主義に移行しての、政治・経済の混乱があるロシアに行った。事前に事例研究という授業を履修し、そこで持続可能な森林政策などについて学び、またロシアの民族についての本や森林資源に関しての本を熟読してから臨んだ。

現地では沿海地方に位置するウデヘ人という先住民族の村にホームステイした。彼らは1万平方kmの土地の使用権を持つ、狩猟民族である。ロシアが資本主義に移行して先住民族の権利が失われつつあったとき、自らで株式会社ビキンを作り、生計をたてている。現地の人との交流で先住民族の話や、森林資源についてなど話を聞くことができたし、また伝統的な踊りや習慣・生活を体験することができた。

旧ソ連時代、ロシアは計画経済によって森林管理政策が行われていたように思われていたが、実際は持続的とはいえないような森林開発が行われていることが明らかになった。さらに、ソ連崩壊に続く政治的・経済的混乱の中で状況が一層悪化していった。それは村にいる人々からも、森林を見てもはっきりと肌で感じることができた。

現在は世界のNGOの協力のもと、森林保全が行われているが、森林は確実に減ってきている。共産主義から資本主義に移行する不安定な情勢がこのような事態をまねいたと思う。ロシア木材の輸入国第1位である日本もなにか考えるべきではないだろうか。

今回のフィールドスタディーは勉学の面においても良い励みになった。自分たちがこれからの歩むべき方向を考えさせられ、机の上では文字でしかない言葉を実際に会って聞くことで意思として理解することが出来た気がする。今回の非日常な経験が、「自分のまわり」という価値観に影響を与え、そういったグローバルな考えを、今回のフィールドスタディーでさらに身に付けることができた。

PHOTOレポート 

ウデヘ人の伝統的な狩猟生活を今でも続けるセルゲイさん。冬の間は3ヶ月間に渡って村を離れて川を上り、一人で狩猟生活に入る。冬は川面が凍りつき、零下40度にもなる。

ウデヘ人の民族衣装を着た参加学生とコーディネーター。サケ皮のほか、中国人との毛皮交易で得たシルクなどを素材とする。ウデヘ人の一部は女真族の子孫であるとされる。

 

ビキン川のほとりで、民族舞踊を披露してくれた現地の高校生らとの集合写真。村の青少年たちが、伝統舞踊をみせる舞踊団をつくっている。

お産の近づいた妊婦は、出産のために作られた簡素な小屋のなかで、助産婦の付き添いのもと、一人で暮らす。村人たちが、小屋作りやかつての生活様式を再現してくれた。

 

ウデヘ人の伝統的な民族舞踊。シカ皮を火であぶり響きのある太鼓を鳴らし、老婆がウデヘ語で歌いながら踊る。シカ・ツルなど野生動物をモチーフに大漁や狩猟の成果を祈る。

ウデヘ人の伝統画家イワン・ドゥンカイ氏の画集から。チンギス・ハンらモンゴル族の遠征や女真族との戦争など、シベリアや極東ロシアをめぐる歴史を題材にした絵を描く。

 

シベリア鉄道。ウラジオストクを起点としてモスクワまで9000キロを結ぶ。滞在したクラースヌィ・ヤール村からハバロフスクへの帰途に乗車したルーチェゴルスク駅にて。