フィールドスタディC 優秀賞 : 大和田美穂
フィールドスタディC参加の感想・収穫
今回、このフィールドスタディCで、初めて中国へ行った。近年、中国における反日運動などがニュースで報道されたり、政治的・経済的日中関係の問題がよく取り上げられたりしている。しかし、現地へ行き、そこで生活している人々と関わり合うことで、私の中国に対するイメージは変わった。古くからの歴史的背景と現代の事情は表面的に学んできたが、その中にあるさまざまな事柄は複雑である。しかしながら、日本と中国においては、それぞれの問題こそ違うけれど、やはりお互いに共通する部分があるのだと感じた。
フィールドスタディCでは、いろいろなことを考えさせられ、そして学んだ。毎日が充実していて、新しい発見の連続だった。ハードなスケジュールだったが、その分得るものは多かっただろう。一般の農家を訪問したり、西双版納の市場を調査したり、今後、普通の旅行などではなかなか行けないような場所を訪れ、貴重な体験ができたと思う。
個人研究・調査の計画の実施結果についてのまとめ
1. 序論
私は現地で物価について調査し、中国と日本の都市部・農村部において比較した。調査は複雑で難航した。なぜなら、場所によっては値段の表示がなく、交渉次第で変わってくることも多いため、価格はあってないようなものだからだ。しかしながらそれはそれで中国の実態であり、興味深い研究対象となる。
同時に、折々で物価に関わらず、それぞれの事柄について、感じたこと、思ったこと、考えたことも述べたいと思う。
2.本論
中国の都市部と日本の都市部
まず、北京大学について考察する。北京大学はとても広く、緑豊かで、学生寮や教員用の寮もあり、まるで一つの町のようだ。みんな朝早くから活動していて、果物などが売っている市場のようなものも朝から営業している。構内の店には衣服からCD、日用品や薬まで何でも売っていて、大学の中だけで十分生活ができる。
表1は、北京大学内のあるスーパーにおける物価を、学生の負担としてアルバイト収入から、日本の大学生協と比較したものである。負担額に大差はないが、比較的、食料品は、北京のほうが安い。また、シャンプーが高いのは、輸入品が多かったからである。
次に、カルフールについて見てみよう。北京・上海どちらにもつくられたフランスカルフールだが、なぜ日本で失敗したかについてはさまざまな議論がなされている。一つには、日本には既にカルフールと同様の機能をなすもの、現代の万屋とも言える場所が存在しているからということが言える。あるいは、衣服や靴、鞄などは、日本のほうがブランド志向が強く、あまり質やデザインに拘らない大型マーケットのようなところでは購入しないからだろう。カルフールの物価は比較的安い。また、野菜やフルーツなどは量り売りのものが多かった。(表2)
日本でもヨーロッパのブランド品や、または洋書などは高いが、中国では、デパートやスーパーで販売されている輸入品は、いわゆるブランド品はもちろん、日用品なども、海外のメーカーのものは高い。日本円と変わらないくらいのものもある。
ファーストフードもその一つと言えるだろう。例として、マクドナルドの販売価格を挙げる。(表3)中国では、ファーストフードは、日本のように安くてどこにでもあるという感覚のものではない。
中国はポテトとドリンクが安いが、それ以外は日本円と変わらないので、やはり中国の人にとってファーストフードは安いとは言えないだろう。
また、上海の「そごう」“久光”や、日本のブランドが入っているビル“WA!!”の商品価格は、中国国内で作られているものの10倍近かった。もちろんその分、良質でデザインも日本のものと同じだ。欧米や日本のブランドの商品が売られているのに、それらのファッションを取り入れている人は少ない。輸入品が高価で、購入できる人が限られているからだろうか。
「秀水街」“SILK STREET”というショッピングセンターには、洋服やアクセサリー、そして偽物のブランド品などが売られている。価格は交渉次第で決まり、最初に言われた値段の2/3から1/3ほどになる。また中国の秋葉原、中関村は電化製品販売の激戦区である。「没有」と言って客を追い帰していた計画経済時代は終わり、多くの店員が客を捉まえようと必死で勧誘している。自由主義経済以降、これらの店は安定した売り上げは得られないが、代わりに経済の活性と消費者の利益は得られるようになった。
交通機関についてはどうだろうか。現在、中国では、車の数がどんどん増えているが、交通ルールの浸透は追いついてないように思われる。スピードは速いし、クラクションはよく鳴らす。歩行者が信号を守らないというのもある。タクシー市場は、タイプや都市によるが、初乗り運賃が6~15元程度で3~10キロメートル走れる。そして、1~2キロメートル毎に1元~2元となっている。日本ほど高いと言うイメージはないので、毎日の通勤に使う人も多い。そして北京市内の地下鉄は、どこまで行っても一律3元と安い。フランスのメトロと同じシステムだ。
中国の農村部と日本の農村部及び中国国内の都市部と農村部
日本は、農村部と言いっても、物価は都市部と大差がない。地方にも大型デパートはあるし、都市部と同等の物を買うことができる。中国ではどうだろうか。
雲南省の西双版納や大理、麗江などは、私が思っていたより発展していた。確かに北京や上海に比べると高層ビルは少ないし、自然は多い。しかし私はもっと田舎で、もっと何もないようなところを想像していたので驚いた。
雲南省の大部分を占めるタイ族は、裕福な民族なのである。それはなぜだろう。まず、西双版納は一年中暖かく、雨季がある。そのため農業が盛んである。米は年に三期作ることができるし、野菜や果物も豊富である。車で少し離れた都市へ売りに行くのだ。また、ゴム林が多く、朝一番に樹液を採って、工場へ売りに行く。それらで生計を立てているのである。
そして観光地だからという理由もある。タイ族村というのも自然な状態ではなく、国から保護され、観光地化されている。伝統的な高床式の家や、風通しの良いように工夫されている窓、一つの寝室に家族みんなで寝るという仏教の影響は受け継がれているものの、部屋には大きなテレビや冷蔵庫がおかれ、近代的な生活をしている。言われてみれば現代にそのまま残っているほうが珍しいのだが、残念だった。
西双版納の市場は、現地の人が利用する食品や日用品のマーケットで、都市部よりも物価は安いらしい。「らしい」と言うのは、ガイドさんの話によるもので、価格などまったく書いていないから確認できなかった。交渉次第と言うことだろう。市場から少し離れたスーパーのようなところでは、日用品などの物価は、都市部とさほど変わらなかった。
一方、大理は、標高2000メートルほどのところに位置し、古城は美しく穏やかだった。気候が安定しているため、多くの作物が収穫できる。土は鉄分を多く含むため、タバコの生産に適している。タバコ産業は、去年まで大理の最も多い収入源だったが、今年からはメコン川中流における水力発電が1位になった。
雲南省の一人当たりのGDPは上海のそれの1/8程である。(参考1)しかしながら、既に述べたように、雲南省の中でも、西双版納や大理、麗江などはかなり発展していて、比較的物価は高い。
参考
一人当たりのGDP
北京 : 31613元/人
上海 : 46718元/人
雲南省 : 5647元/人
平均給与
北京 : 25312元
上海 : 27304元
雲南省 : 12870元
歴史
中国の物価は、経済成長と共に、年々上昇している。以前は、中国の物価は日本の十分の一程などと言われていた。一概には言えないが、そのような言い方をすれば、現在は五分の一程度までに上る。次の表4・5は中国の物価指数の移り変わりを示したものである。
結論
中国は30年ほど遅れて日本の後を追っているという言い方がある。しかし、その推測はあまりに安易で、それほど単純なことではない。確かに一理はあるが、日本よりも進んでいて、まったく新しい、異なった方向へ進んでいることもある。
今後、中国の物価はさらに上昇していく可能性があるが、上昇率は5%未満に抑えられているため、国民の生活に大きな支障はない。
経済的な面を、表面的にだけ見たら、日本など中国にすぐに追いつかれて、抜かされてしまうかもしれない。しかし、もっと深く、実際に現地へ行って、国内の事情を見てみると、経済成長に伴って発生する都市部・農村部間の格差の問題や、先進国に暮らす人々としてのマナーなど、改善しなければならない点がたくさんある。しかしながらそれは、どの国でも同じことで、そこに、どんなに予想したって変わりゆく各国の経済状況を、それぞれ比較しながら、研究を続けていく価値があるのだ。
終わりに
今回の研究においては、現地でうまく調査できず、あいまいな点が多かったことを反省したい。
そして、中国へ行って研究をしていく中で、日本と違うと感じるところがあるのと同時に、逆に、日本はどうであったか、私自身、日本のことをまだまだ知らないこと、いままで見過ごしていてあまり深く考えていなかったことが多いことに気づいた。いつも何気なく見ていることや、身近で経験していることを、普段からもっとよく観察して、考えることが大切であると思った。そうすることで、今回のフィールドスタディで学んだことの理解はさらに深まり、また、新たな発見ができるだろう。
参考文献
『中国マーケティング総覧2005年』日本能率協会総合研究所
『日本統計年鑑 平成18年』総務省統計局
『中国統計年鑑 2005』中国統計出版社