学生による履修報告 : 箭内勝隆
事前の計画書では、北京オリンピックが中国にもたらす経済効果を取り上げました。そして2週間の現地調査を通して、現地での講義や実際に調べた結果、大変貴重で、有力な情報を得ることができました。私は、北京五輪は、中国の大きなビジネスチャンスになると思うし、五輪後も中国の経済は、ますます成長していくに違いないと思います。それだけでなく、2010年には、上海万博も控えていることも大きく影響するでしょう。今後数年で、中国はさらに発展の道を遂げていくと思いました。北京滞在中に、メインスタジアムである北京国家体育場を見学することができました。まるで木の枝を集めて作った「鳥の巣」のような外観は、奇抜なデザインで大変興味深いものでした。見たところ完成が間近なようでした。王さんに聞いてみたところ、スタジアムの総工費は35億元で、4万トンという莫大な量の鋼鉄が使われているそうです。まさに恐るべき工業技術のレベルの高さです。このダイナミックなスタジアムを見ることで、世界に中国の工業技術の凄さを知らしめるのではないでしょうか。しかし、このようなたくさんの鉄筋が組み合わさっていることで、腐食の心配はないのか気になります。維持していくことが大変になるのではないでしょうか。
天安門に行った際、2008年の北京五輪開幕までの日数を、刻々と知らせている巨大モニュメントを見て、国民の五輪に対する期待感が、私の心にもジーンと感じました。いよいよ来年8月8日の北京オリンピック開催まで、1年足らずになりました。北京政府が五輪に向けて準備している中、私は本当にいい機会に調査することができたと思います。
北京大学の講義を通じてわかったのですが、北京市当局がこの10年で1200億元(約1兆9000億円)を投じて環境改善に努めてきたということに、どれだけ五輪と環境保全に力を入れてるのかが分かりました。中国は、90年代から高度経済成長を続け、いまや経済大国になりました。その裏側で、ケタはずれの財力を誇る成金階層と、その日暮らしの農民工といった格差の拡大が問題になっています。北京市内には、様々な原因で、時代の発展の流れに遅れ、生活水準が低いレベルに止まっている住宅地が存在していることを知りました。いわゆる、「都市の中の農村」なるものです。貧しい階級の場所を見学することができましたが、そこは栄えている場所とは対照的でした。オリンピックの開催を通じて、北京の環境を整備し、住民の生活環境を改善し、快適で美しく調和の取れた都市づくりに取り組むことも、五輪に向けての課題だと思います。そしてもう一つ深刻な問題が、経済成長の陰で続いたツケとでもいうべき、自然破壊・環境汚染でしょう。いまやヒトの存在を脅かす深刻なレベルに達しました。予備知識にあったことは、世界保健機関(WHO)の専門家は「北京の大気汚染は非常に深刻で、五輪観客が短期間滞在するだけでも健康に影響の出る可能性がある」と警告し、北京での開催が危ぶまれていたことです。調べて分かったことは、世界で大気汚染が深刻なワースト20都市のうち中国は北京・上海など16も占めていると分かり、正直驚きました。 そして、環境に対する対策はパワフルであり、いかにも中国らしいといえるものでした。それは、北京では本番に備えて、8月17日から4日間、車両ナンバー末尾の「単号」(奇数)、「双号」(偶数)で走行を制限する自動車交通規制が試行されたそうです。 奇数日には末尾が奇数ナンバー、偶数日には偶数ナンバーの車しか走行できないという規制で、理論的には交通量が半減することになるだろうとのこと。そして、違反した車両には100元(約1600円)の罰金が科せられ、出発地へ逆戻りさせられるとても厳しいものだとわかりました。ずいぶんと強引な手段です。もし日本でここまでやったらと、想像しただけで恐いです。しかし、私は思うのです。ここが中国の国民性の良いところだと。問題解決のためには効率を重要視する、キッパリと決断する国民性に尊敬しました。この姿勢は、今日の中国の発展の糧となったはずです。日本は優柔不断な性格で、なかなか踏み出すことができないでしょう。そして、その後空気の状態を測定したところ、一酸化炭素や二酸化硫黄など自動車の排気ガスと関係のある汚染物質が15―20%減ったそうです。8月16日から21日までの北京市は安定した天候で、風が弱く、湿度、気温が高い天候となりました。このような気候は、汚染物質が拡散しにくく、また周辺地域の大気の影響を受けることが少なく、大気の状態を測定するのに好条件のようです。期間中、通常の測定のほか、衛星リモートセンシング、光学リモートセンシング、航空機を使った測定も行われたことがわかりました。その結果、4日間の汚染物質排出累積速度は明らかに鈍化し、大気の質がすべて2級になったそうです。車両通行規制のテストは、成功に終わったと見てよいのではないでしょうか。市民の大きな協力があったからこそ生まれた結果でしょう。それにしても、中国の環境対策は大変素晴らしく、参考にすべき点であると思います。中国経済の発展に伴い、エネルギーの供給と環境の問題はますます深刻化していますが、これを受けて中国政府は、再生可能なエネルギーの開発に力を入れていることを、成都の最後の講義で詳しく聞きました。水力での発電については、今後世界でも注目されるべきだと思いました。そして、中国の太陽熱エネルギー産業は、世界最大市場となったことがわかりました。カルフールのショッピングセンターに行った際、電化製品専門店をのぞいたのですが、太陽熱を利用する炊飯器などの家電製品が目立ちました。まさに中国は、環境のことにも重点を置いていることが見て取れます。これは、地球全体にとって喜ばしい傾向です。中国はまだまだ経済発展の途上国。このあとも排出が予想されるCO2量が少しでも押さえられていくのなら、こんなに嬉しいニュースはありません。むしろ、世界の太陽熱利用のテクノロジーをリードするつもりで頑張ってほしいと思っています。日本も参考にすべきところでしょう。今後、中国が立ち向かっていかなければならない環境問題に対して、ここまで真剣に取り組んでいるとは知りませんでした。また、帰国後に嬉しいニュースを知りました。オリンピックにおいて、中国料理が初めてオリンピックの食事メニューに入ったそうです。しかも30%を占めるらしいです。現在1000種に上る中国料理のメニューをオリンピック組織委員会に提出しており、オリンピック組織委員会の承認を待っているそうなので、ワクワクします。初めて本場の中華料理を口にした私は、世界中の人々に味わってもらいたいと、心から思えるくらいに美味しく頂けました。とくに、四川料理は絶品でした。オリンピックを通じて、中華料理の素晴らしさも世界に伝わることを、切に願います。
このフィールドスタディは、大変充実した14日間であり、中国の社会・経済および文化について様々な体験によって理解を深められたと同時に、文化の違いによる、社会的な地域の相違性を改めて知ることもできました。この経験は、普通の観光旅行では絶対得ることができないでしょう。今後の大学生活や、これからの中国に対する動向の理解を、自分から深めようとする貴重な機会となりました