経済学部  /  経済学部生の生活  /  フィールドスタディー  /  学生による履修報告 : 小野雅喜

学生による履修報告 : 小野雅喜

フィールドスタディCに参加しての感想・収穫・結果報告に関するレポート

フィールドスタディCが行われる前に書いた企画内容書にも記したとおり、今回私がフィールドスタディCに参加する目的は以下の4つがあった。

中国人(得に自分と同世代の若い学生)が持つ日本人に対する意識調査である。日本と中国は過去に戦争で対立したという痛ましい過去を背負っている。戦後60年以上経ったいま、中国の学生は日本に対してどのような思いを抱いているのかを、北京大学の学生に積極的にインタビューをして調査していきたい。またフィールドスタディプログラムの中にある日中戦争記念館、文化財盧溝橋見学を通して、歴史の教科書の文章でしか知らないものを、自分の目を通して肌身で感じたいと思う。

現在、日本と中国の経済関係は切っても切り離せない関係にある。もし日本、中国のお互いが誤った歴史解釈の上に立っているのであれば、今後どんなに経済発展していき中国との関係が更に密接になったとしても、ビジネス以外の関係は築けないと考える。これからの経済は環境への問題など、日本の力だけではどうにもならない問題が多々ある。そのような問題に直面した時に日本、中国がお互いに協力しあえるような信頼関係が無い限り、「持続可能な開発」は望めない。北京大学の学生に対するインタビューでお互いの歴史認識で誤ったものがあれば、その場で改善し友好を築きたい。

また日本にいる限り、私たちの耳に入ってくる中国のニュースは不正なコピー商品の問題や残留農薬などによる食物汚染、有害物質など、あまりいいニュースばかりではない。しかし、それは日本のマスメディアが我々視聴者の興味をそそるようなニュースばかりを率先して流しているのかもしれない。実際にフィールドスタディCで中国を訪れることで、自分自身の目でしっかりと中国の実情を捉えて正しい中国理解につなげて行きたいと思う。

現在中国は北京オリンピックの開催で更なる発展を遂げようとしているが、日本でも問題にある格差社会構造が存在するはずである。北京市内に滞在している間は、できる限り市内を観察し、高層ビルばかりに目を向けるのではなく、おそらく急ピッチで進んでいるであろう建設ラッシュの現場で働く社会の底辺を支える労働者に視点を向けたいと思う。そして中国の物価から労働者の生活水準を考察し、日本との格差の違いを知りたいと思う。

最初に訪れた北京大学では温かな歓迎を受け、和やかな雰囲気で始まったフィールドスタディCであった。しかし9月2日に訪れた首都鋼鐵株式會社の巨大な貯水池を繋ぐ古い橋に「抗日」の文字が刻まれているのを見つけて、盧溝橋や抗日戦争記念館を訪れることが怖くなったことを覚えている。しかし実際に9月5日に訪れた抗日戦争記念館では、新しく新設されたという出口付近の最後のフロアに、「過去を鏡として未来に目を向けよう」という前向きな言葉を発見した。日本の首相の写真も飾られてあり、お互いの戦争認識が変わりつつあることが嬉しかった。北京で私たちのお世話をしてくれた北京大学の学生も、また四川に滞在したときに夕食をとった店の四川大学で日本語を学んでいるという学生からも日本に対する憎しみというものは感じなかった。終戦を迎えてから半世紀以上が経った今、過去を鏡として未来に目を向け新たな関係を築いていくのは次世代を担う私たちの役目である。そのことをしっかりと胸に刻んでおきたいと思う。

また、中国に関するニュースのことだが、実際に中国を訪れて以下のことがわかった。食の安全性に対して敏感なのはある程度裕福な階層の人間であり、社会を支える底辺の貧しい労働者階級の人たちはそんなことをいう余裕が無いほどに社会格差が大きい。ちょうどフィールドスタディCが実施されるまえにダンボール入りの肉まんや食物汚染が話題になった。私は日本でそのニュースを聞いたときに中国という国を軽蔑した。しかしそれは私が日本という経済発展を遂げ安定した社会の下に生活しているからこその発想である。日本で話題になった中国のニュースも根本を考えてみれば、社会格差から生まれる貧富の問題を打破して生きるため(生活するため)にやっていることなのである。果たしてそんな彼らを私たちは完全に否定することができるのだろうか。しかし日本で流される中国のニュースは話題性ばかりを重視して中国の現状を捉えていない。実際に中国を訪れることで、私はマスメディアに流されずに現実を捉える目を養うことができたと思う。

中国は膨大な人口を抱え、これからの経済発展が期待される国である。しかし宋先生の言葉の中にもあったように個々人の社会に対するルールの意識が低い。たとえばゴミの問題であるが、分別の意識は無い。滞在中に回った世界遺産の中には分別用のゴミ箱が設置されてあったが、それもただ形式的に置かれているだけであった。一番衝撃的だったのは、博物館の中でも平気でタバコを吸って、火を消さずにゴミ箱の中へ投げこんだ人を見かけたことだった。ルールとそれをきちんと守ることができる市民がいなくては安定した社会を築くことはできない。ましてやこれからはただ利益を追求した経済発展ではなく、持続可能な発展に考え方を変えていく時期にある。そんな中、ルールや秩序の意識が無いままでは、この持続可能な発展に賛同することはできないだろう。しかし人間の意識を改革することは簡単なことではないので、この問題は長い時間をかけて少しずつ変化させていかなければならない問題だろう。

北京には一週間滞在し、オリンピックに関する考察もした。北京を走る車は一般の車からベンツなどの高級車まですべてがほこりをかぶって走行していた。そんな車の姿を見て、私はオリンピック競技でも特に野外で行われるマラソンなどの競技への影響を考えた。あの土埃と排気ガスの漂う北京市内を走ることは困難だと思うからだ。中国でもそのことが問題らしく、車のナンバープレートに応じた交通規制などの実験的手段をとっているようだが、それでは車の税金をきちんと納めているのに車の使用が制限されてしまうことになり市民からの不平不満は大きなものであると思う。また、9月6日の北京オリンピック大会の進展状況に関する報告の講座を受けたときに、解説していただいた北京大学の先生の「果たして莫大なお金をかけてまで中国でオリンピックを開催する必要性があるのかどうかは疑問である。」との冷静な分析が印象的であった。

最後に今回のフィールドスタディCでの一番の収穫は一緒に二週間旅をして生まれたメンバーとの友情である。一緒に旅をして、二週間同じテーブルのご飯を食べ、かなり深い友情ができた。今回の旅が自分にとって素晴らしいものとなったのは仲間たちのおかげである。経済を学んでいると言うと、大抵の人はお金や株や利益のことがまず頭に浮かぶと思う。しかしそんな中、経済を専門とする宗先生が上海での最後の夜に「友情はお金なんかよりもずっと大切なものだ」と断言してくれたことが本当に印象的で心に深く響いた。今回の旅でできた仲間たちはこれからもずっと大切にしていい関係を築いていきたい。もし今回、このフィールドスタディCに参加していなかったら、日本で無駄な夏季休暇を過ごしていただろう。中国での二週間は私にとって本当に有意義なものであって大きな収穫のあるものとなった。機会があれば語学力を鍛え、今回のメンバーと北京オリンピック後の中国を視察して回りたい。

宗先生、本当にありがとうございました。