学生による履修報告 5

フィールドスタディで学んだことはとても大きなことだった。

まず目に付いたのは日本との違いである。それは人々の雰囲気、考え方やマナーの問題であったり、生活様式や民間設備などの違いがある。人々の雰囲気は日本語には無い中国語特有の語気の強さも関係しているが、全体的に怒っているようにも見え、マナーでは心に余裕を持てていないように感じ取れた。車が車線変更しようとするとすぐに後ろの車が前に詰めてきて前に車を入れさせないようにする。徒歩の信号無視などはもはや当たり前で車に乗っていても信号無視をしている車もある。それでぶつかりそうになってもクラクションを鳴らし自分は悪くないと言わんばかりに口論を始める。あまりに日本との違いが多すぎて最初はショックを受けていた。中国に良いイメージを持っていなかった自分の考えは間違っていなかったと思えた。しかし、その一方で中国人個人と話すと非常におもしろかったり、すごいと思わされることもしばしばあった。中国を案内してくれた現地の大学生やガイドさんは皆話しかけやすく、買い物をしようとお店の人と話すと陽気に振舞ってくれることもあった。そこで学んだことは一国単位で考えるとあまり良いイメージをもてなくても一個人として話すと何の問題もないということだった。他国の人々に対して多少の偏見を持っていた自分にとって、かけがえのない経験ができた2週間だった。

フィールドスタディの中で一番衝撃を受けたのは中日戦争博物館であった。日本でも知られている盧溝橋事件は、自分たちが知っていた顛末は日本軍が演習をしていた際に中国軍側から発砲があったため戦争に発展していったとされていた。しかし、中日戦争博物館を案内してくれた人の話では、日本人の兵士が一人いなくなったため日本軍が盧溝橋の向こう(中国軍領土)まで探しに行かせてくれという要求をしたところ中国軍が断ったために日本軍が攻撃を仕掛けてきたとされている。どちらが正しいことを言っているかはわからないが、中国側と日本側が主張していることがこれほど違うことに驚いた。また、当時日本で配られた新聞も公開しており、そこには「向井中国人100人斬り」などの記事が載っており、その横では中国人の子供が死んで横たわっている写真もあり、当時の日本人はこんな記事を読んで一喜一憂していたのかと思うと同じ日本人として悲しく、情けない気持ちにさせられた。

他にも驚いたことは、偽ブランド品が堂々と売られていたことである。偽ブランド品は中国で買えるというのは有名な話だが、ここまで隠さず売れるものなのかと驚いた。あるデパートの売り場では1階から5階まですべて偽ブランド品を売っているという場所もあった。そこで働いている人々は皆売ることに必死で、日本人を見かけると慣れない日本語で話しかけて来て、英語圏の人を見かけると英語で話しかけに行ったりと、日本ではあまり見かけない光景が興味深かった。同じアジア人ではあるが、中国人のほうが日本人よりも積極的に話しかけていたのでむしろ欧米の感覚に近いものがあるのかなということも考えさせられた。

9/3に薄膜太陽電池を作っている企業を見学した。そこでは画期的な技術で今まで生産コストや、使用電力の量がネックとなっていた太陽電池を低コストで、電力をあまり使わないエコも視野に入れた生産方法をとっている。従来の製品はシリコンを使って太陽電池を作っていて、電気への変換率は17%ほどであった。新しい製品は真空技術や薄膜の技術を使っていて、コストはかからないが変換率が7%ほどと従来品の変換率に追いついていないため今後はこの変換率が注目されていくだろう。いずれにせよ今後は都会にあるビルの窓はすべて太陽電池になっていくという見通しもあるので新しい形式の企業として中国経済の基盤を担う企業になっていくことは間違いなさそうである。

薄膜太陽電池の会社を見学した翌日、首都鋼鐵公司を見学した。この企業は中国内にいくつもの工場を持っていて国際的にもかなり大きい企業として通っている。今はほとんどすべての工場の稼動を停止しており、中国内にあるすべての工場を一つの島の中にまとめるという計画が進んでいる。5年後には1つになった工場が稼動する予定で、完成したら世界でもっとも大きな工場になる予定である。

薄膜太陽電池の会社にもこの首都鋼鐵公司にも中国の国家主席が見学に来ていて、その企業の将来性がわかった気がすると同時に、中小企業に国のトップが見学に来ているところから中国が本気で経済成長を促進させようとしている姿勢が見て取れた。現在中国は世界恐慌のこの時代にかかわらず経済成長を続けている。外へ出ればアジアナンバーワンの高さになる予定のビルが建設中であったり、今中国がとてつもないスピードで経済成長を続けていることが身をもって実感することが出来た。しかし、そうした経済成長の裏側では格差という問題も存在している。地下鉄に乗ればお金をせびる人々がおり、北京や上海の都会と比べて田舎の平均収入は半分もなかったりもしている。もちろん物価自体も違うため単純に比較することは出来ないがこれほどまでの格差は深刻な問題になる前に解消するべきに思えた。

中国は後進国のため先進国の経済成長の成功した点と失敗した点を見ている。その先進国の教訓を生かした成長を続けていって欲しいと思う。自分が実際に中国へ行って考えたことは、福祉に重点を置いた経済成長を続けていって欲しいという点である。現在のままでは経済以前に衛生上あまり良くない環境が存在している。そのため、衛生のことも配慮し、教育、老後の設備をしっかりと整備していけば経済大国になる基盤が出来上がるように思う。以上がフィールドスタディを通して感じたことである。