学生による履修報告 6

「中国」と言われてもあまりに大きすぎて、実際に行く前の僕には曖昧で陳腐なイメージしか持てなかった。人口世界最大の国、雑技団、段ボール肉まん、パンダ、毛沢東、共産党……ニセモノ。

そんな勝手なイメージは半分くらい当たっていた。雑技団は見なかったけれど、うんざりするほどの毛沢東グッズやニセモノブランド品ならそこら中にあった。日本にいたら考えられないような、排気ガスで濁った空や、マナーを守れない中国人もたくさん見た。

そんな中で、想像の及ばなかった人々の生活と経済の関わりに非常に興味を持った。僕らがはじめに訪れた北京では、最先端の技術を扱う中国の太陽電池製造会社や、日本、アメリカなどの外国企業が台頭し、穀物の大量生産を可能にする韓村江があり、天安門広場やオリンピック会場などの観光スポットに必要な宿泊施設や地下鉄も発達しており、すべての産業が日本に引けを取らないほどに発展しつつあった。これは中国が1979年以後、改革・開放路線を進め、1992年に「社会主義市場経済」を掲げて以来、だんだんと社会主義経済を脱しつつあるからこその経済発展である。最近では国有企業から民間企業へと経済の担い手がバトンタッチしつつある。北京大学の国際交流センターのセンター長がおっしゃっていたが、ここ10年間の北京の発展はめざましく、10年前にはなにもない田舎だったようだ。

上海では、東京の新宿のビル群をはるかに凌ぐ超高層ビルで埋め尽くされた光景をみた。印象としては北京よりもより都会的で整備が進んでいる印象を受けた。来年上海万博が開催されるとあって、インフラ整備が急ピッチで進められていた。トヨタ、GM、フォルクスワーゲンなどが進出する上海市場は、国有企業が51%であるのに対し、民間(集団)企業が7%、外資・香港・台湾企業が42%を占めている。上海では多国籍企業が集中しているため、外資はいずれ国有企業を抜くだろう。外資系を主体にしつつも、一定の国有企業を維持しながら経済発展を進めるという構図が、上海をここまで大きくさせたのだろう。

しかしこれほどの経済発展を遂げたのにも関わらず、僕は一般市民の生活水準が先進国に比べると低いことが気になった。インフラの面でいえば、市街はだいぶましだが、道路がきちんと舗装されていないところが多くみられた。さらに駅にはトイレが設置されておらず、デパートなどのトイレですら紙を流せなかったりと衛生面で問題が残る。環境の面では、北京の空気は特に濁っていて、日本であれば常に光化学スモッグ注意報が出されているような嫌な空気だった。経済発展に沿ったインフラ整備、環境問題対策が出来ていない。中国にとっての早急に対応すべき問題であると感じた。

我々は中国で、安徽省黄山市と無錫市にも訪れた。都会から少し離れたここでは、また違った中国が見えた。

宏村と訪れた時、水に囲まれた美しい街に感動した。ここで生活を営む人は観光客がいれどものびのびと自由に暮らしていた。生活は不便だが、生活の満足度に関しては勝手ながらこんな風にのびのび暮せて羨ましいと思う程であった。

しかし都市部と農村部の格差、いわゆる三農問題は深刻だ。中国は改革・開放路線を進めてきたが、それはつまり、「豊かになれる人ないし地域が先に豊かになり、貧しい人にその豊かさを享受していく」という意味でもあった。しかし貧しいものにその豊かさを享受する具体的な方法は提示されず、その流れにすら遅れてしまったため格差は生まれてしまった。しかも都市部と農村部の収入格差はより大きくなっている。改革・開放前の1978年は2,57対1であったが、2006年には3,24対1に拡大している。そのため中国共産党は02年の党大会で「農村経済を発展させ、農民の収入を増やす」ことを重要政策とし、農村への財政投入、農業税の撤廃、所得税の改善などに取り組んだ結果、この収入格差から生まれる貧困問題に関しては、解決の方向に向かいつつある。貧困人口とは一人当たりの年間所得が668元(約1万円)以下を指す。この貧困人口は1985年の1億2500万んから2005年には2365万人に減っており、改善されつつある。しかしまだ農村部の出稼ぎ労働者の問題や収入格差がなくなった訳ではない。穏やかに見える宏村にも、夫が働きに出ていて収入得ているような家庭もあるだろう。そのような農村部に暮らしているからこその苦悩も実際に村の人に聞いてみるべきだったと今更ながらに後悔している。

さらに疑問に思ったのが物価の問題である。日本と比べると格段に安い生活費や食費。さらに中国国内でも物価は変動している。どのようなメカニズムでこうなるのか興味があるのでぜひ今後の研究課題にしたい。

中国に行ってみて体感したことはもちろんこれだけではない。一番のカルチャーショックはやはり中国人という人々だった。中国人の無愛想で冷たい態度や、偽物を売りつけるときの強引さ。それとは対照的なセンター長や北京大学生、時先生、思思の穏やかで温かい人柄。中国人の人たちは皆いい意味でも悪い意味でも自己中心的で、周りをあまり気にしていない。周りに迷惑をかけないように過ごす日本よりは暮らしやすいかな、と感じた。

今回のフィールドスタディーで僕は様々なことを学ぶきっかけをつかむことができたと思う。中国の未完成な経済発展のメカニズム、壮大な都市、それに伴う格差社会、環境問題をより知ってみたいという課題ができた。そして中国人という人々ともっと触れ合い関わり合いたいと思った。中国の人や文化と触れ合い、宋先生と、一緒に行った経済学部のみんなと過ごしたことで、自分という人間についても疑問が湧き、もっと自分を知りたい、磨きたいと思うようにもなれた。本当に行って良かった。この大きな収穫を無駄にしないように、今後の大学生活を熱心に、有意義に過ごしたい。

このような大学生活での転機となるすばらしい機会を作って下さった宋先生に本当に感謝しています。12日間大変お世話になりました。ありがとうございました。ぜひ今後もご指導の方よろしくお願いいたします。