学生による履修報告 1

 

学生レポート 1 

心が豊かになった日々

 緑豊かな大地に広がる青い空や自然の中で生きる様々な動物たち、感情豊かな人々の集まるブラジルのクリチバ市、海岸都市、サンタカタリーナ州平和公園、フォス・ド・イグアスを訪れた二週間。日本の反対側に位置する場所で人生を楽しく生きている人々や市の取り組みを見る中から考え、感じたことはどんなことだったのだろう。
 まず最初に訪れたのは、ブラジル南部にあるパラナ州の州都であるクリチバ。本でも読んでいた通り、豊かな緑地空間を持ち、交通や土地利用政策の整合性が優れた都市であった。現地で様々な人種の人々が自由に楽しく生活しているのを見て、「人のための空間」が根付いているのだと感じられた。
 土地利用政策では、IPPUCでのお話や市内視察から、都市を五つの骨格軸において開発が促進されるよう、軸にそって土地利用の高度化を図るとともに、土地の特性を活かしたゾーニングを行い、今のクリチバの都市をつくりあげてきたことを現地で実際に見て聞く中で学んだ。骨格軸沿いには大きな商業施設が建ち並び、そこから住宅、工業団地とそれぞれ望ましい立地を考え、実行されており、政策の優れていること改めて感じた。開発権移転制度においても、歴史保全地区のみならず緑地保全や環境保全と幅広く応用し、クリチバの発展に大きな影響をもたらしている。
 土地利用政策とともに考えられた交通政策ではURBSでお話を聞いた。公共交通であるバスを市のメイン交通とし、課題であった輸送力・定時制・速度を、車両連結・バス専用レーンの設置・バス停での運賃前払いのシステムを導入することで補ったのである。バスの機能によって色分けされていたり、どの家からも500m以内にバス停があるよう設置されていたり、人々のバスへの親近感を持たせる工夫がなされている。またトライナリーシステムを導入することで、自動車の円滑な走行を可能にするとともに、バス専用レーンの設置し、都市の機能を高めた。これは土地利用政策と整合性があるからこそできた、クリチバの強みだと感じた。
 環境政策では、「ゴミ買いプログラム」や「ゴミでないゴミプログラム」、「緑との交換プログラム」といったゴミに関する政策や環境教育が行われている。実際に見学させてもらった「緑との交換プログラム」では市民は多くのゴミをもってきており、この政策に対する期待の大きさを感じる一方で、バスのストライキの影響でゴミ回収車がこないという事態が起きてしまい、この一件が市民に不信感を与えてしまうかもしれないという不安も感じられた。「人のための都市」を掲げているクリチバ市だからこそ、その思いを形で市民に示すことが必要だと思う出来事であった。また子どもたちに環境について正しい知識を教えるとともに、ストリートチルドレンになるのを防ぐ目的ももった環境寺小屋の設置は地域環境を良くする一因にもなった。こどもたちへの環境教育を充実させることは、大人の環境に対する意識改革にもつながり、大きな意味をもつ取り組みである。
 そして、今のクリチバ市の形はこの方がいなければなかっただろう。元パラナ州知事・クリチバ市長であったジャメイ・レルネルさんとの時間は大変貴重であった。「効率性」ではなく、「人」を中心に据えた都市計画を展開させてきたレルネルさんの考えは、非常にシンプルである。人々が想像できるようなシンプルな政策は成功に導かれる。そこにはコミュニケーションが必要であって、都市が何をしたいかを市民に伝えることが基本であり、大切なのだとおっしゃっていた。レルネルさんのお話から、自分の住む東京について考えてみたが、自分の都市についての知識のなさに驚いた。自分が都市の一員であると意識させることが、都市の発展につながるのであり、日本にもレルネルさんのように住民に伝える人が必要であり、また私たちも住んでいる都市に関心をもつことが都市の発展の一歩につながるのではないだろうか。
 クリチバの次に列車に乗り向かったのが、中村さんの息子さんが行っているマングローブでの牡蠣の養殖所。ここではマングローブの自然環境を守りながら、牡蠣を養殖している。マングローブでの養殖が成功するまでは大変な苦労があったと思うが、自然の中でつくられているからこそ、あれ程までにおいしい牡蠣がつくられるのだと感じた。
そして長い距離を車で走って向かった小川さんのサンタカタリーナ平和公園。自然に囲まれた場所に立つ平和の塔は、私たちに「平和」について考えさせる大切な空間であり、日本や世界に向けて「平和」へのメッセージを発信しているところであった。小川さんの常に前向きに人生を楽しんでいる姿勢やカーニバルでの活躍ぶりから、ブラジルの人からも愛され、平和の象徴とされているのだと強く感じた。
 最後に滞在したフォス・ド・イグアスでは、世界三大瀑布であるイグアスの滝と世界最大級の水力発電であるイタイプ・ダムを訪れた。イグアスの滝は言葉では表現できないほど、自然の生み出す大きな力を感じさせられ、一方でイタイプ・ダムでは人類の力を結集させて造った人工のダムのスケールの大きさに驚くとともに、日々の生活のためにダムを造り上げた人間の強さを感じさせられた。
 環境局長としてレルネルさんと共にクリチバ市の発展に尽力してきた中村さんは、長い時間私たちに付き合ってくださり、クリチバの魅力を教えて頂いた。中村さんほど人として大きな器を持つ人はいないのではないかと思うくらい、私たち学生にも優しく接してくださり、濃い時間を過ごすことができた。中村さんの造った数々の公園は市民の憩いの場になっているとともに、それぞれの国の文化を象徴しているものもあり、自然をより身近に感じることのできる空間を生み出している。また様々なごみ政策では、低所得者層の人々を配慮し、分かりやすく、なおかつ自然環境と彼らの生活環境をともに良くしていこうと行われ、市民の環境に対する意識改革にも大きな影響を与えた。中村さんの人柄がにじみ出た取り組みだからこそ、人々の心に受け入れられているのだろうと感じた。
 実際に訪れてブラジルの魅力を肌で感じ、クリチバをはじめとする様々な都市で学び、刺激を受けた二週間であった。講義を受けて最も行ってみたかったクリチバの花通りは素敵な空間だった。あんなにのびのびと歩いて買い物ができる空間は、クリチバの人々にとって幸せな場所なのだと感じた。クリチバの数々の政策の魅力を実際に見ることで感じ、その政策を考えたレルネルさんや中村さんからは、「人」を大切に思い、都市をともに良くしようと前に進むパワーを感じ、私自身もパワーをもらった。クリチバ市が人間を中心に考えているからこそ、人々を魅了する都市へとなったのが実感できる時間であった。また人々の温かさに触れた日々でもあり、特に一緒に付き添ってくださった中村さんやさゆりさん、エレーナさん、ロナウドさんに感謝したい。そして小川さんの前向きな姿勢にかっこよさを感じるとともに、カーニバルという大変貴重な経験をさせていただいたことに感謝したい。普段では見過ごしてしまう自然の素晴らしさを、広い大地の中で日々感じ取ることができたのも、ブラジルであったからこそなのだろう。二週間の中で印象的であった、ブラジルに住んでいる人の表情の豊かさからも、この国の魅力が伝わってきた気がする。自分の挑戦したいことや興味のあることには、失敗を恐れずチャレンジする勇気をもらった二週間で得た感情や知識を、一歩前に進むために大切に活かしていきたい。