学生による履修報告 2

 

学生レポート 2 

フィールドスタディE 総括エッセイ

 約2週間のフィールドスタディで事例研究の講義で学んだクリチバを存分に体感することができた。実際にその土地に訪れることは学んだことを再確認できるし、また新たな問題を発見することもできるから収穫は多い。今回クリチバを訪れ中村さんを初め色々な人にお世話になりながら土地利用や交通、環境について視察を重ねた。またセルジオさん、レルネルさんにも直接お会いし、大変貴重なお話を伺うことができた。そして、イプキやURBSに伺い、これまでの政策や今後の政策についても詳しい説明を頂いた。イプキでもURBSでも必ず紹介されたのは、土地利用、交通、輸送のトライアングルである。実際に視察を重ねクリチバの政策について感じたことは、土地利用と交通と輸送、この3つが整合性を持つことによって、街と人と自然も繋がっているということである。さらにサンタカタリーナやイグアスでは小川さんにお話を伺ったり人生で二度と味わえないような経験ができたりと、とても充実した時間を過ごすことができた。
 まず土地利用について。イプキでお話を伺ったり車で実際に街を回り、さらにテレビ塔の上から街を見下ろす等して土地利用に関して学ぶことが出来た。そして、その土地利用政策からは「人々のためのまちづくり」を体感できた。クリチバには街と人が分断されていない環境があると強く感じた。テレビ塔の上からクリチバの骨格軸がしっかりと把握できたように、街の発展の方向付けがしっかり行われているからだろうと考える。それによって街の無秩序な発展を防ぐことが出来るし、理想とする発展方法を市が示し、市民はそれに沿って発展していくだけでいいのである。また放射状に伸びた骨格軸は中心地から離れた場所でも街の役割を果たし、どこに住んでいる人にも疎外感を感じさせない発展方法である。そして、クリチバは街の中に公共空間を作り出すのが上手い。分離帯や歩道を拡張しそこに公園を作ったり、ベンチを置いて人々の交流の場を生み出している。クリチバでは休憩する場がカフェしかない東京の街と比べると、人々は街の中にいるという意識を強く持つことが出来るだろう。市民は自然と町と自分自身の繋がりを感じることができると思う。
 次に交通政策については、URBSでお話を伺い、街を回り、実際にバスに乗車するなどして学ぶことが出来た。この交通政策からは、放射状に伸びた発展軸に沿った交通利用は効率的で持続的なものであるということが分かった。骨格軸に沿ったバスシステムはバス専用レーンや3連結の急行バスを作り、「高速性」、「定時性」、「大量輸送」というメリットを生み出し、従来のバスのデメリットを上手く解消している。またどのバスターミナルで乗り変えても一律料金であることや、スムーズで快適な乗り降りを実現させたことが市民のバス利用をかきたて、市民の80%以上がバスを利用するなど、市民の交通手段ではバスが欠かせないものになっている。しかし、私たちがバスに乗車しようとした時には快適なバスシステムを実感することが出来なかったため残念であるが、それは新しい政策である地下鉄政策を進めるための作戦ではないかという、クリチバの新たな問題も発見することが出来た。また新たなグリーンラインの開発では、元は国道だった道を市道にし、骨格軸を増やすことで、渋滞を解消すると共に人口増加に対応することができるという。まさに一石二鳥の政策である。中村さんは新しく何かを作るのではなく、今ある物を問題解決のため上手く活用することが重要であるという。このように土地利用と交通が統合されていることで市民が街との繋がりを維持できている部分があると感じた。
 そして、環境市民大学、オペラ座、タングア公園、緑との交換プロジェクト、環境局に実際に訪れそのコンセプトなどを元に環境政策について学ぶことが出来た。クリチバの環境政策は自然と人の知恵を融合させ「自然と一緒に働く」ことをコンセプトにしている。そして、市自らが建造する建物や場所を通して、市民に自然と人の繋がりを伝えているのである。環境市民大学やオペラ座はあえて人々が自然を破壊してきた場所に建て、環境を考える場所としているし、環境局は環境問題を改善する場所がビルディングではおかしいと、ユーカリの木を再利用して建築されている。環境都市としてクリチバの市民が環境について正しい知識をもつことが重要であるという。市は身をもって市民に自然の大切さを示しているのであった。今では観光スポットになっている様々な施設も元はクリチバ市民の豊かな生活のために作られたものであり、環境政策について学べば学ぶほど「人のためのまちづくり」を感じることができた。街には本当に緑が多く、癒される空間がたくさんある。常に自然とのつながりを感じることが出来たしとても気持ちの良い環境だった。これは実際にクリチバに訪れなければ分からなかったことである。また、実際に低所得者地域の緑との交換プロジェクトを見ることが出来たが、このプロジェクトを通し市民と市の信頼関係を見ることが出来た。市が自分たちのことを考えてくれていると思えば、市民もまちづくりに協力するだろう。クリチバでは市と市民が一緒に環境を守っている。そしてそこの住民はいきいきとしていたし、他の住民との交流も楽しんでいるようで、このプロジェクトによって環境とコミュニティの両方が守られていると感じた。
 そして、セルジオさんには環境局にてお話を伺うことができた。セルジオさんは都市のサステイナビリティには、技術の発展と人間の発展の2つが重要であるという。最近では多くの国々が技術の発展ばかりを重視し人間の発展に行き詰っている。それゆえに外見が格好のいいビルディングばかりを立て満足しているようだが、本当はその中にいる人間がどう働き何を感じているかが重要であり外見はそんなに重要ではないという。豊かな暮らしを守るため、技術にのまれないようで技術を人間がうまく活用して行かなければならないという事だろう。これは環境政策のコンセプトである「自然と一緒に働く」ということだろうと考える。またセルジオさんは、これは日本人が得意としてきたことだという。自然と共に豊かな暮らしをしていくために、人間の技術をいかす。日本は長年その精神を忘れているのだろうと感じた。
 そしてレルネルさんにお会いした。レルネルさんからは行政と民間の信頼関係がいかに素晴らしいものかを学ばせていただいた。市民とコミュニケーションをとり、市が何をやりたいのかしっかり伝え、理解・協力してもらう。市民は市が何をやりたいのか理解することができれば計画に対しても自分の街のものであるという意識が強くなるから、自分が街の中にいるとつよく感じることができるのではないだろうか。計画と市民と市が一緒になって街を発展させていくのが大切なのである。これはクリチバが人間都市として発展していくための強みであるのだと考える。
 またクリチバに1週間ほど滞在した後、小川さんの住んでいらっしゃるサンタカタリーナ州に訪れた。小川さんの自宅へと案内していただき、奥様の手料理をご馳走になりながら色々なお話を伺った。中でも印象的だったのは、「手を伸ばして夢をつかめ。つかめなかったらジャンプしろ!」という台詞であった。ブラジルとうい知らない土地にやってきて、りんごや梨を広め、さらには日本の原爆の悲劇をブラジルで伝え平和を訴え、また平和資料館の辺りにこれから国民宿舎を建てたいという行動力とパワーに溢れている小川さんのその言葉にはとても説得力があった。私たちに色々な可能性があると言ってくださる表情や声、目もとても力強く、力をもらった気がする。人間の行動力の大切さを教えていただいた出会いであった。
 このようにブラジルで過ごした2週間はとても充実し、貴重な価値のある時間を過ごすことができた。クリチバやサンタカタリーナの他に、海岸都市まで汽車で旅をしたり、イグアスではイグアスの滝を始めとしブラジルの大自然・広大さを身をもって感じることもできた。そして人々のいきいきとした表情から人と自然と街が繋がっていると思ったし、そんな空間にいるのだと強く感じた。さらに驚くことにジョアサーバではカーニバルに参加でき、人生で二度と味わえないようなスペシャルな経験をすることができた。この2週間の様々な訪問と活動を通して本当の豊かさとは何かを考えさせられたし、多くの人との出会いによって自分の行動力ひとつでいかに可能性を広げていけるのかを学んだ。初めてのことばかりで感動してばかりのブラジルで、自分のなかで比較対象を増や視野も広げることができた。お世話になった人たちに感謝したい。