松本 一裕 教授

松本 一裕 教授

松本 一裕 教授

— アメリカ文学 (小説・批評)

私は富山県の出身です。歩行中毒と家族から名づけられるほど、大学生時代から歩いています。アメリカのインディアナ州に2年ほどいたときも、脳味噌まで融けそうな夏の炎天下だろうが、鼻毛の凍る冬のさなかだろうが、やはり歩き続けました。歩いているうちに自分の心からいろんなものが抜け落ちていく感覚が好きなのです。空っぽになったところから、ふと気づくとまた何か生まれてくる、それにも惹かれるのです。もちろん現在も歩行継続中です。

ずいぶんと前の話になるのですが、歩いているうちに次のようなことが浮かんできました。

ふと感じる。言葉に力がなくなっているのではないか、と。言葉は本来たいへんな力を持っている。その一言で、人を殺すことも、人を救うこともできる。自分の内部にどのような言葉が主に蓄積されているかで、自分の性格や世界観、おそらく運命まで決まってくるように思える。なのに、身の回りのほとんどの言葉は、まるでそのようなことは有り得ないかのように、気軽に大量消費されている。

言葉の大量消費がいけないというわけでもない。実際、気軽なおしゃべりは楽しいし、軽快な機知に富んだ当たり障りのない話に耳を傾けるのも、捨てがたい。ただ、それだけでは満足できない気がする。言葉の大量消費には、充実が欠けている。言葉が持てる力を十分に発揮したときの充実が存在しない。自分の経験から言って、上等な文学作品にはそのような充実が充満している。言葉が秘めている力を最大限に発揮させようとするのが、文学の重要な特質だからかもしれない。文学には他にもさまざまな側面があるけど、「充実」は文学の核であると思う。

充実した作品には力が渦巻いている。無意識の奥底を押し広げてしまう力、悪の極限を描いてしまう力、堕落を徹底させてしまう力、凡庸な日常を極限まで見据えてしまう力、すさまじい愛、そして憎を生み出す力など、これらすべては言葉の力が十分に発揮されることで生み出されるのではないか…

実際はもっとぼんやりと浮かんだ思いにすぎなかったのですが、整理すれば以上のようになります。さて、このような力が渦巻く「充実した」世界に飛び込んでみようとは思いませんか。

研究内容

私の専門はアメリカ文学です。Edgar Allan PoeやWilliam Faulknerといった作家に惹かれつつ研究を進めてきました。現在は、Tim O’Brienを代表とするベトナム戦争帰還兵の作品を通じて、「アメリカを書き換える」表現の可能性を考えています。

学生へひとこと

The following passage may reveal what I value in my learning and teaching: Where does the drama get its material? From the "unending conversation" that is going on at the point in history when we are born. Imagine that you are in a parlor. You come late. When you arrive, others have long preceded you, and they are engaged in a heated discussion, a discussion too heated for them to pause and tell you exactly what it is about. In fact, the discussion has already begun long before any of them got there, so that no one present is qualified to retrace for you all the steps that has gone before. You listen for a while, until you decide that you have caught the tenor of the argument; then you put in your oar. Someone answers; you answer him; another comes to your defense; another aligns himself against you, to either the embarrassment or gratification of your opponent, depending on the quality of your ally's assistance. However, the discussion is interminable. The hour grows late, you must depart. And you do depart, with the discussion still vigorously in progress. (Kenneth Burke)

教員一覧へ戻る