建築家の目とインブリー館「文化財を生かして使う」

内井昭蔵建築設計事務所 島崎義治さん

インブリー館修復に現代建築家として参加されたわけですが。

私の作業はインブリー館の利用計画を作ることから始めます。死んだ建物ではなく生きた建物として利用していくわけですから、照明・空調・家具・カーペット・机椅子など、生活に密着したものを考えていきます。

どんな作業をしましたか?

まず、インブリー館は洋風住宅ですから、スケールや素材など、住宅にあった使い方を考えることです。使おうとする意図と、建物としてのインブリー館が出来るだけなじんで生きた空間を作っていくようにすることです。

具体的にはどのような部分でしょう?

カーテンはイタリアの「ミッソーニ」デザインのものを使い斬新な色使いにしましたし、カーペットはデザインしています。空調機はグレーではかえって目立つのでこげ茶色を使い、照明は部屋の持つ柔らかさになじませるように、光と器具の持つ表情がともに柔らかくなるように選定しています。椅子はカタログで見ても、実際に置いてみると表情が変わります。机は設計してあつらえています。これらの作業は、なじませはしますが、まねるわけではありません。使う空間として価値を持たせつつ、新しいものが古い建物と連続するように創造しながら作っていきます。

考え方の注意点はどんなことでしょう?

その質を落とさないということです。当時の形だけをまねても質感がなくなってしまいます。インブリー館はどんな考えで、どんな目的で使うことを想定して、どういう風に作られたのか、ディテールや素材にも想像力をめぐらせ、質の高いものにしていきます。 その考えが無いと化粧直しをし、きれいになったけれども元の存在感が無くなってしまうということになると思います。 回り道ですが新築する時と同じように設計として考えます。そしてインブリー館を作っていた人たちの立場に立っていくことです。

建物は生きているのですね。

これらの作業の裏には「生きた建築として復元していく」という、明治学院の考え方があります。観光用に移築したり、使わない建物になるのでは、建物の存在感がなくなります。建築空間として生きた活動の中に置かれて、保存させることは大変大事だと考えています。ヨーロッパではこのような考え方は多く、ボローニア大学の建物もそうですし、皆さんが良く知っている例ではルーブル美術館がそうです。デザインをつけ加えて財産として残すという考え方ですね。

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