ホーム  >  教員紹介  >  平川先生からのメッセージ

本学法学部で学ぶということ
―「自分さがし」における大学教育の意味について―

平川 幸彦

 新入生のみなさん,入学おめでとうございます。チャペルでの入学式はいかがでしたか。みなさんは,今,これからはじまる大学生活に対して,期待と不安を抱いていることでしょう。大学とはどのようなところなのか,法学部ではどのように勉強するのか,どのような課外活動をしようか,などと考えていることでしょう。
 私は新入生のみなさんに対して,一人の教員としての立場から,大学そして法学部が,みなさんの人生にどのような意味を持っているかについて,私の見解を述べたいと思います。
 みなさんは,大学を受験する際,「自分にはどんな勉強が適しているのか,何になりたいのか,どのような人生をおくるべきなのか」などと,考えませんでしたか。このような「自分さがし」の問いに対する答えは,大学生活の中で得られるとは限りません。大学を卒業して何年もたってから,あるいはそして何十年もたってから,何かがきっかけとなって自覚するのかもしれません。
 法学部の勉強について言えば,大学時代に勉強熱心で成績の良かった人が,卒業後,必ずしも社会で活躍しているわけではありません。大学を留年したり卒業も危うかった学生が,社会で活躍している例は,少なくないのです。それは,勉強が人生において占める位置は人それぞれであり,人生は,様々な要素から構成されるいわば「総合芸術」だからです。
 では大学そして法学部は,みなさんの「自分さがし」にとって,役に立つのでしょうか。私の答えは,もちろん「役に立つ」です。ただし前提があります。みなさんが大学時代に友人や先生とコミュニケーションをとりながら生活することです。
 みなさんの大半は,年齢がまだ20 歳前で若く多感な時期にあり,精神的に大きく成長する可能性を秘めています。従って,もしもみなさんが大学において,心を大きく開き,友人や先生と交流すれば,多くのことを習得することができます。特に,大学での勉強について言えば,科学的な思考方法を身につけることができます。別の言葉で言えば「合理的精神」かもしれません。自分自身で物事を科学的・合理的に考える基礎ができるのです。大学において習得した科学的な思考方法や合理的精神は,大学時代,あるいは大学卒業後,何かがきっかけとなって自分の人生の目標が見つかった時,目標に到達する方法を,自分自身の力で見つけ出す助けとなるでしょう。
 従って,大学では,テストで良い成績をとるか否かにかかわりなく,真剣に勉強をする必要があります。成績がそんなに良くなくとも,自分なりに努力し,苦労し,悩んだ時間が多いだけ,その後の精神的な成長に役立ちます。楽をすればするほど,その後,成長しません。大学は,将来の自分を考える上で貴重な時間を与えてくれるのです。どうか友人とテストの1点をめぐって争うのではなく,友人や先生と交流する中で,勉強や課外活動に取り組んでください。
 もっとも社会の大学に対する要求は,次第に大きくなっており,法学部の学生には,即戦力の知識,スキルが要求されるようになってきました。その大きな理由は,インターネットをはじめとした情報技術の発達と,それに伴う経済社会の急激な発展です。社会においてはインターネットサイトによる法情報の検索はもはや常識であり,日本語サイトの迅速かつ正確な検索が必要なだけでなく,外国語,特に英語サイトの検索も重要となってきました。法学部卒業後,官公庁等に就職する学生には,伝統的な憲法,行政法,政治学,行政学だけではなく,人権にかかわる個人情報保護法,社会保障法や社会統計学等の知識が重要です。また会社に就職する学生には,従来の民法や商法の他に,会社と取引先の関係,相互に競争する会社間の関係,会社と消費者の関係を規律する法,例えば,各種の取引法,知的財産権法,競争法,消費者法等の知識が重要です。このような状況に対処するためには,法学部学生は,講義科目の履修以外に,特に,①演習科目において,課題に真剣に取り組むこと。②パソコンやインターネットを効率的に利用しながら,社会情報の統計的処理をはじめとした情報処理の技術を高めること,①外国語,特に英語の習得に力を入れること,が必要です。実際,法学部の学生は,ぼんやりしている時間はないのです。アルバイトばかりして授業に出席しないと落第してしまいます。
 新入生のみなさん,どうか心を大きく開いて,友人や先生と交流しながら,勉強や課外活動に真摯に取り組んでください。そうすれば,たとえテストの成績がそんなに良くなかったとしても,自分自身で物事を科学的・合理的に考える基礎ができます。そして人生における目標が見つかった時,大きな助けとなります。
 アップルコンピュータの創始者で昨年なくなったスティーブ・ジョブズ氏は,2005 年6月に,スタンフォード大学卒業式でのスピーチにおいて,人生の目標をさがす「自分さがし」が重要であることを指摘して,次のように述べています。“Stay hungry, Stay foolish”心を大きく開いてさがし続ければ,人生の目標はいつかきっと見つかります。そして,その時,本学法学部で身につけた科学的な思考方法や合理的精神は役に立ちます。
 新入生のみなさん,どうかこれからの4年間を大切にしてください。友人や先生と一緒に,本学で豊かな時間を過ごしてください。明治学院大学法学部の4年間が,みなさんの人生を豊かにすることを願ってやみません。