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最初の難問

黒田正明

 大学が高校と違っている点はいろいろあるが、そのひとつは受ける授業科目の多くを自分で決めることができるという点である。大学は、これは学生の自主性を尊重したよいシステムであると考えているのであるが、実際にはそうとは限らないようである。このような教育システムを経験したことのなかった者が突然自分で決めなさいといわれても、どうしてよいかわからないのはあたりまえである。それでは履修登録の時までにどう対応すればよいのだろう。

 一般に、”正しい”解決策を得るためには自分を知っていることと、相手ないし自分のおかれている状況(束縛条件)を知ることが前提である。自分のおかれている状況を知るためには情報を集めなければならないから、どんな情報が必要で、どのように集めればよいかを考えることが大切になる。そして、問題解決のためのアルゴリズムを作ることから始めなければならない。

 今の場合まず、自分は大学で何を学びたいのか、または何をしたいのかを知らなければならない。というのは、資格試験を受けたいと思っているなら、どのような教科を取っておかなければならないのか知ることが必要になるし、教員になろうと思っている諸君なら卒業要件科目以外にも何を取っておかなければならないかを調べなければならない。部活に青春をささげたいと思っているなら、留年や停学、退学の憂き目に遭わずに部活をするにはどうすればいいのか知らなければならないからである。何も目的がないが、なんとなく大学に入ってしまったという人がいたら、その人は、今からでも遅くはないから、明治学院大学法学部の学生となった今、自分の大学生活の目的をどこに設定するのか考える必要がある。極端な場合、退学してやりたい道を進むという選択肢もあるのである。さて諸君、大学生活の目的と目標はしっかり定まっているかな?

 次に相手を知らなければならない。すなわち、いったい大学ではどのような授業が開かれているのか全体を見渡してみなければならない。実にさまざまな授業が開かれているのである。しかし、面白そうな授業を選び出す前に、各年次に何が必修科目になっていて、どの科目は何年次配当になっているのか等の束縛条件を知らなければならない。この部分には選択の自由がないからである。科目によっては横浜キャンパスだけで開かれていたり、東京キャンパスだけで開かれていたりするから、その点も考えないと、東京と横浜をしばしば往復して東海道線の中にいる時間が、増えてしまう。戸塚と品川の間に住んでいるならそれでもよいだろう。従って、自分の住んでいる所と、キャンパスとの位置関係も重要なファクターとなる。アパートやマンションに下宿している学生なら、3年生になる時に東京に引っ越すのか、それとも、4年間一ケ所に住み続けるのかとも関係してくる。履修に際して場合によっては抽選のあるクラスもある。履修できる学部や学科が制限されている科目もある。履修しても卒業に必要な単位に数えられない科目もある。ほかにも、履修に関する規制や注意事項がたくさんあるので、注意しないと順調に卒業できなくなるかもしれない。やけにややこしいなとこの辺で音をあげるようでは、この先が思いやられるぞ。

 それでは、このような情報をどのようにして手に入れたらよいのだろう。教務課のガイダンスをうける、履修要項やガイドブックを読む、といった当然のことから、親、友達や先輩のアドバイスをうけるとか、大学のホームページを見るとか、資格試験の本をながめてみるとかいろいろあるだろう。大切なことは、得られる情報内容は情報収集のやり方に左右される点である。情報収集の仕方が悪いと誤った情報や、偏った情報のみを取りこんでしまうことになりかねない。効果的に情報を収集する必要がある。

 さて、このようにしていろいろな考慮すべき事項の情報を収集したとしよう。次に大切なことは、自分で考え最終判断は自分で下すことである。情報の中には互いに矛盾するように見える情報もありうるし、集めた情報のすべてが正しいとは限らない。(たとえば、私のこの記事には、誤りが含まれているかもしれない。)一般に、他人の意見は大変参考になる。特に先達の意見は、それが苦労の結果得られたものであるなら、なおさらである。しかし、当時と今では環境も状況も異なるかもしれない。今の例では、当時選択科目だったものが、必修になっているかも知れないし、その逆かもしれない。また、先輩と同じやり方が自分にふさわしいとは限らない。従って、批判的に人の意見を聞く能力を持たないと、人の意見は有害になることもある。諸君は暗記中心の受験勉強に追われて自分で考えたり自分の考えをまとめて発表したりする経験に乏しいので、注意しないとまわりに流されて、なんとなくこうしたが…ということになってしまう。

 このように、履修科目を決めるだけでも、いろいろな要素を考えて、かつ4年間の長期的な展望と計画に基づいて決めなければならないことがわかる。結構、面倒くさくて大変なことであるが、避けて通れない以上、楽しみながらやってみてはどうかな。