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「硬派」のすすめ

両角道代

 ご入学おめでとうございます。これから新しい環境の中で,楽しくて忙しい生活が始まることでしょう。昔の自分を思い出し,懐かしい気持ちでいます。

  さて,昔さんは法律学を学ぶために法学部に入学されたわけですが,これはなかなかチャレンジングな選択だと思います。法律学は手強い「大人の学間」ですから,初めからすらすらわかって面白くてたまらない,というわけには行きません。私が1,2年生の時には(あまり勉強しなかったせいもありますが),いくら良い教科書があっても,良い先生に教わっても,「面白いな」と思うことはあっても「わかった!」と思うことはほとんどありませんでした。それどころか,後になって気づいたのですが,大家と言われる先生方でさえ,法律学のすべてがわかっているわけではないようなのです。ですから,法律学に挑戦するには,よほど気を引き締めてかからなければなりません。

  では,わざわざそんな難しい学問をする意味は,どこにあるのでしょうか?

  私たちは生きていくうえで,他人とのトラブルに巻き込まれたり,自分の属する組織や杜会のありかたに疑問を持ったり,また自分と直接関係がなくても,新聞や本,TVなどで気になる問題を見聞きすることがあります。そういう間題意識をすでに持っている人もいれば,これから出会う人もいるでしょう。それらの問題は,しばしば,様々な立場の人の利益や杜会のしくみと複雑に関わっていて,何らかの思考方法を身につけていなければ手に負えません。私は,法律学を学ぶとは,そのような問題を理解し,自分の意見を持ち,場合によっては他者と議論して解決するための,一つの方法を身につけることだと思っています。もちろん法律は唯一絶対の方法ではなく,いろいろ限界もありますが,暴力を使わないで困難な問題を解決するための人間の知恵であり,学ぶに値するといえるでしょう。

  そこで皆さんへのアドバイスですが,まず,法律の技術と知識をしっかり学ぶために,「言葉」を大切にすることを勧めます。法律学では普通と違う特別の言葉を使ってものを考えます。そして,それが法律学のとくに難しいところです。たとえば民法なら,さっそく「法律行為」「意思表示」「債権」「債務」「契約」「相当因果関係」など,耳憤れない言葉に接することになるでしょう。これらの言葉(概念)は,法的な論理を組み立てるときに積木のような役割をする,とても大切なものです。裁判官や学者は,きまりに従って積木を積んでいくのですが,場合に応じて,一つ一つの積木の形や積み方を工夫することによって,出来上がりを調節することができるわけです。ですから,めんどうだからといって,「出来上がり」だけを暗記しても,法律学を学んだことにはなりません。そうではなくて,一つ一つの積本の性質を正確に理解し,それを積み上げていくプロセスを大切に,丁寧に勉強してほしいと思います。

  それから,4年間ひたすら受け身で知識や技術を習うだけでは,法学部の勉強は退屈かもしれません。面白くするためには,自分なりの問題意識が必要です。いろいろな本(読みやすいものばかりでなく,骨のあるものを誌みこなす練習をしておくと役に立ちます)や新間を読んだり,日常生活で気になることがあったら少し深く考えてみたりしてください。

  それでは皆さん,思い思いに実り多い大学生活を送って下さい。私は皆さんとは1年次の民事法入門か,3年次の労働法,社会保障法の講義でお会いすることになります。お互いにがんばりましょう。