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新入生のみなさんへ

中谷美穂

 新入生のみなさん,明治学院大学へのご入学おめでとうございます。新しい生活に向けて期待で胸いっぱいのことと思います。

 ……ところで,そもそも大学って何のために行くところなのでしょうか。何をするところなのでしょうか?

  「そんなこと,大学を決めるときに考えたよ」という人もいるかもしれませんが,「そんなことを考える余裕なかったよ」という人もいるかもしれません。大学に受からなければ大学生活も始まりませんからね。しかしながら,今なら皆さんには立ち止まって考える余裕があるでしょう。そこで,ここでは私の考える大学の役割について書きたいと思います。

  大学で学ぶ意義を考えるには,社会でどんな人が求められているのかということを考えることが早道かと思います。大学を卒業すれば,何らかの形で社会に貢献していかなくてはなりません。それは,これまで自分の受けてきた恩恵を考えれば当然のような気がします。自分たちがこの世に産まれてから,さまざまな恩恵を享受できたのも,前の世代,その前の世代,そのまた前の世代の人たちが,社会を創ってきてくれたおかげなのですから。

  それではどんな人が社会に貢献できる,すなわち社会を「より」よくしていくことができるのでしょうか。それには3つの力が必要だと考えます。ひとつは問題を解決する力,2つ目はコミュニケーションをする力,3つ目は実行する力です。まず問題解決力ですが,社会を今の状態よりも「より」よくするためには,何らかの「改善点」あるいは「問題点」を見つけていくことが必要となります。とりわけ重要な改善点を見つけることが,社会を「より」いい状態へ持っていくことにつながるわけです。どこに問題があるか,を考えるには,何が理想的な状態か,という考えが必要です。そして問題を引き起こしている原因は何か,どうすれば改善できるのか,その方策を「考える」ことが必要となります。

  次にコミュニケーション力の必要性ですが,人はひとりでは仕事をすることができません。営業職であれば顧客が必要ですし,大きな仕事は同僚や上司の協力が必要になります。人は社会の中で共同作業をしているのです。そうした時に,いかに自分の考えを相手に上手く伝えることができるか,人の意見を理解できるかが,とても重要なのです。

  最後に実行力は,考えたことを実際に決断し行動する力のことです。頭で考えているだけでは何も始まりません。なんらかの決断をしてそれを実行することが,現状の変化をもたらします。

  この3つの力をもっていれば,どんな世界でも通用すると思います。企業人でも公務員でも,もちろん研究者でも。みなさんには,こうした力を蓄えて社会で活躍していただきたいと思っています。

  実は,こうした力は大学生活でこそ養うことができます。高校の授業とは違い,大学は知識を詰め込む場ではありません。さまざまな授業の場で,先人の考えを学ぶとともに,自分なりに考え,自分なりに答えを出していく,そうした考えるプロセスを学ぶ場です。特にゼミナールでは,より少人数で考え方の基本を学ぶことができます。ですのでゼミに入ることを強くお勧めします。かくいう私も大学のゼミでまさに物事を考えることはどういうことなのかを学び,それは自分の人生を考える上でも仕事をする上でも多いに役立っています。

  それからコミュニケーション力は,大学でのゼミ活動や,サークル活動,インターンシップ,ボランティアなどで養うことができます。いろんな考え方を持つ友達と同じ目的に向かって行動し,多様な意見を交わす中で,自身の考えの拙さを知ったり,相手を説得するには何が必要かを学んだり,どうやったら合意に達するかを学ぶのです。ですから,勉強に没頭するだけでなく,他人と触れ合うことにもぜひ目を向けてください。

  また大学生活では,毎日をどう過ごすのかは自分の決断にかかっています。必修科目はあるものの選択できる科目が多数設置されていますから,どの科目を選び学ぶのかといった決断から始まり,授業外の時間をどのように使うのかに至るまで。可能性は無限にあります。海外の大学で学ぶ,ボランティアをしてみる,読書に没頭する,サークルに入る……など。この大学でどんなことができるのか,どんなサポート体制があるのか,ぜひ大学案内を熟読し,大学の諸制度をフル活用してください。そして自分なりに目的を設定して,意識的な決断を繰り返してください。そのようなことを繰り返すうちに,実行力はおのずと身についていくと思います。

  上記のような3つの力を養うことに加えて大学生活で必要なことは,将来,自分が何をやりたいか,を見つけることでしょう。どんな形で社会に貢献したいか,企業人なのか公務員なのか研究者なのか。しかしながらこれだけは大学で教えることはできません。なぜならこれは皆さんが見つけることなのです。どうやったら見つけられるか,さまざまな方法を試してみてください。登録している授業の中でどんな内容が面白いと思うのか,インターンをしてみてどんな大人になりたいと思うのか,他人はどう考えているのか,どんな場所が自分の能力を高められると思うのか,これまでの約20年の人生を振り返ってどんなことをしている自分が一番落ち着くのか,楽しいと思うのかなど。

  最後に,大学生活は,もちろん社会人の準備期間のためだけにあるのではなく,その後の豊かな人生にもつながります。大学の時に得た友人は,利害なく付き合える一生ものです。苦しい時,自分の支えにもなってくれる友達は本当に何にも替え難いものです。また自分のために自由な時間を使える時は,今しかありません。社会人になれば,お休みもそうそう長くはとれませんからね。長期間の自由な時間を使って,自分が考える「今しかできないこと」にぜひトライし,さまざまな刺激を受け,大いに成長してください!