大学設置基準における単位の取得に必要な学修の考え方
田澤元章
大学における学修及び生活上の助言等については,他の教員により多数の寄稿があることから,本稿では,大学における単位の考え方について,法令の規定を引用しつつ簡単に説明することとする。以下に説明する事柄は,本学の学則や履修要項において明示されてはいないが,法令の規定により定められたものとして,当然の前提とされている。また,日本全国どの大学の学則等においても,同じ前提に立ち,授業及び単位取得について規定されている。
我が国おける大学制度は,学校教育法(昭和22 年法律第26 号)に基づくものであり,学校教育法に基づき大学を設置するのに必要な最低の基準を定めた文部科学省の省令が,大学設置基準(昭和31 年文部省令第28 号)である。 大学設置基準によれば,大学を卒業するには,4年以上大学に在学し,124 単位以上を修得することを要する(32 条1項。以下の引用条文は大学設置基準の条文である)。本学法学部の場合,最低基準である124 単位を超える「130 単位以上」が,卒業に要する総単位数である旨が学則上規定されている。
大学設置基準上,各授業科目の単位数は,各大学が定めることができるが(21条1項),各授業科目の単位数を定めるに当たつては,「1単位の授業科目を45時間の『学修』を必要とする内容」をもつて構成することを標準とし,授業の方法に応じ,当該授業による教育効果,授業時間外に必要な学修等を考慮して,講義及び演習については,次の基準により単位数を計算するものとされる(21 条2項柱書)。
すなわち,「15 時間から30 時間までの範囲で大学が定める時間の『授業』をもつて1単位とする」こととされる(21 条2項1号。なお,実習・実技や卒業論文の場合についての基準は省略する)。つまり,大学における1単位は,「15時間から30時間」の『授業』に出席し,授業時間に予習・復習の時間を加えて合計「45時間」の『学修』を必要とする内容であることが最低の基準とされているのである。大学設置基準にいう「学修」とは,授業および授業以外の予習・復習を含む概念として使用されている。
法学部の語学以外の一般教養科目・専門科目の多くは,講義は半期15 週で単位数は2単位である。そうすると,週1回で15 回の講義がある半期2単位の科目に要する90 時間の学修は,30 時間の授業の受講と(実際には,90 分講義X15 回=22 時間半であるが,大学設置基準上30 時間の授業とみなす運用がなされているようである),60 時間の予習・復習が前提となっていることが理解されよう。これは,2単位の科目の講義を1回受講するには,60 時間を15 回で除して,1回の講義につき4時間の予習・復習が,大学設置基準による計算上は最低限必要とされることになる。
2単位の講義科目の講義を1回受講するのに,大学設置基準上は最低4時間の予習・復習が必要であるので,受講する講義の予習復習を講義が行われる当日のうちに終わらせると仮定すると,1日に受講できる講義は,計算上は,せいぜい2科目であろう。というのは,講義時間外の予習・復習に合計8時間を加え,1日11 時間の学修が必要となるからである(あくまで1日当りの計算上の値である)。講義の予習復習を講義当日に行うものとするとの仮定は,実際とは異なるやや非現実的なものであるが,上記の例は,講義の履修登録を無制限に認めることは,大学設置基準上は問題が生ずることを示唆するものである。
そこで,大学設置基準においても,大学は,学生が各年次にわたつて適切に授業科目を履修するため,卒業の要件として学生が修得すべき単位数について,学生が1年間又は1学期に履修科目として登録することができる単位数の上限を定めるよう努めなければならないと規定している(27 条の2第1項)。これを受けて,本学の法学部においても,各学年で履修登録できる単位数の上限を48 単位とする履修登録制限を設けている。この履修登録制限は,大学設置基準にしたがった学修,とくに授業時間外の予習・復習による学修を確保するための制度である。履修登録制限があっても,4年間で最高192 単位が履修登録できるのであり,本学法学部の卒業要件である130 単位を取得することの支障となるものではない。
概算となるが,130 単位分の講義(1回90 分)に全部出席したとすると,講義の正味時間で約1500 時間となる。大学設置基準にしたがった予習復習(1単位当り45-15=30 時間)を130 単位分に行ったとすると,3900 時間となり,講義時間と合計すれば,約5400 時間の学修時間となる。この時間数以上の学修を行って卒業要件の単位数を取得した者が,「大学卒」の学歴となるというのが法令上の建前である。この数字に対してもつ感想は,各人により異なることであろう。
自戒を込めて言うが,人間は弱いもので易きに流れがちであり,周囲の環境に影響されやすいものである。他人はどうあろうとも,上述の事柄を心の隅に置きつつ,日々の学修を大事にして大学生活を過ごすことを諸君に期待したい。