そろばんと電卓
鶴貝 達政
そろばんの詳しい説明はしませんが、足し算と引き算をするのに便利な道具です。1を足すときは玉を1つ増やし、1を引くときは玉を1つ減らすというとてもシンプルなものです。足し算と引き算ができるので、もちろん掛け算と割り算もできますね。掛け算は単に足し算を早く計算する方法だからです。6×4=6+6+6+6=24と習ったはずです。小学校によっては、掛け算そのものを理解するより、「九九」を覚えることに力を入れてしまっていて、改めて納得する学生もいるでしょう。私の知る限りではドイツの小学校ではこの掛け算から足し算にして計算するという過程を大切にしています。
さて、そろばんの素晴らしいところは、計算をその玉を動かずという簡単な作業に置き換えることです。さらに、そろばんを自分の頭の中で考えることによって、そろばんなしに計算を実現できまず。これを暗算といいます。言うことは易しいですが、もちろん、この暗算ができるようになるためには、それなりの練習と努力が必要なことは言うまでもありません。私の知り合いにはそろばんの名人I氏がいて、彼は三角関数を暗算で計算します。三角関数と聞くだけで、読むのを止めてしまう学生がいるでしょうが、高校の数学で学習する直角三角形の辺の比を計算する関数でしたね。そのI氏はまず、三角関数を掛け算と足し算だけて計算できる関数に近似して、その掛け算と足し算を頭の中のそろばんで計算してしまうのです。それを最初に聞いたときには、さすがに私もびっくりしました。
そろばんの練習をやらなくなってしまった理由は「電卓」の出現です。足し算、掛け算などの四則計算はもちろん、三角関数の値でも、角度と[sin]というボタンを押すだけで、そろばんの計算よりも正確な値が求まります。大変、便利になりましたが、残念ながら、私には大切な「問題を解決するためのヒント」の目を一つ、潰してしまったように思えてなりません。大学はいまだ誰も知らない間題の解答を自分でいかに見つけるか、というその手段を学ぶ所です。いままで、学生諸君が解決してきた多くの問題にはあらかしめ解答があって、その解答に見合う解法を学習してきたはずです。もちろん大学であつかう多くの間題は解答があるものですが、その解答を出す過程は大切になります。「難しい計算」という問題に対して、電卓のボタンを押して答えを出すのではなく、「計鼻」を「玉を移動する」ことに置き換えて解決するという手段は、問題を直接的ではなく、別の観点から解決するという「問題を解決するためのヒント」が示されています。
簡単な自己紹介を最後にしましょう。法学部に所属をしていますが、私は法律の専門家ではありません。皆さんとは多くの場合、「情報処理」という「問題を解決するためのヒント」の一つの講義を共にしまず。専門は高エネルギー実験の情報科学への適用で、現在、ドイツのハンブルグにあるZEUSというギリシャ神話の大神の名前がついだ実験で共同研究をしています。興味がわいたら話を聞きに、気軽に研究室を訪ねてください。