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メディア・リテラシーは社会に出てから役立つ力です - 教授 川上 和久 教授

メディア・リテラシーは
社会に出てから役立つ力です

法学部 政治学科
川上 和久 教授

リテラシーが身につく政治学科
大事なことは「もとを当たること」

役所広司さんが主演された映画『聯合艦隊司令長官 山本五十六』に、こんなシーンがあります。——対中戦線が芳しくない中、国内では「日独伊三国同盟を結び、対米戦を」という声が高まっていました。しかし、国力で勝るアメリカと戦えば日本は負けると、海軍次官の山本は同盟に賛成しません。若い士官たちが同盟締結を迫ると、こう言うのです。「ヒトラーの『我が闘争』のドイツ語の原文には、“日本人は小器用だから利用するべし”とある」。ヒトラーを礼賛する士官たちは「そんなことは書いていない」と反論しますが、実は日本語版では、日本に不都合なことは削除されていました。山本は繰り返し言います。「何事も、もとを当たらないといけない」と。

山本五十六の言葉は、現代にも通じることです。私たちの周りにはさまざまな情報が飛び交っています。情報に使われないようにするには、情報を鵜呑みにせず、その根拠を知り、物事の裏側を見る必要があります。インターネットで調べると「裏側はこうです」と教えてくれるところもありますが、では、その裏は果たしてどうなのか。何事ももとを当たらないと本質は見えてきません。メディア・リテラシーを持って報道と向き合うことが重要ですが、それは訓練しないと身につかない資質です。

政治学科の「計量政治分析」という授業では、総合的に情報を判断する力を身につけます。導入が議論されている消費税の軽減税率(消費税増税時に米や味噌などの食料品や生活必需品の税率を低くすること)をテーマにした時は、まず、総務省の統計局の家計調査データをもとに年収を5つのグループに分けました。そして、年収が高いグループと低いグループでは米にどれくらいのお金をかけているかなどをソフトを使って分析し、年収によってどのような生活をしているかを知ります。それをもとに、軽減税率はどうあるべきかについて話し合うのです。同様に、生活保護やいじめ問題などについても取り上げました。正確な統計情報をもとに正確な判断をするというリテラシーを鍛える授業です。

政治学科では、1年生の基礎ゼミから少人数で学びます。意見交換し、お互いを認め合い、自分と異なる意見も取り入れてディスカッションしながら、課題に対する考えを見つけていきます。政治学科で大切にしていることは、「考えるプロセス」。メディアの報道を知る一方で、その内容やコンテンツはどうなのかを考える力が身につく学科です。

プロフィール

川上 和久 (かわかみ・かずひさ)
1957年東京都生まれ。東京大学大学院社会学研究科修了。専門は政治心理学・コミュニケーション論。政党・政治家のコミュニケーション戦略や世論について研究し、コメンテーターとして「Nスタ」(TBS系)など報道・情報番組への出演も多数。政治学科の人気科目である「計量政治分析」も担当。(財)青少年国際交流推進センター理事、東京都・神奈川県明るい選挙推進協議会委員も務める。最新刊は『「橋下維新」は3年で終わる~民衆に「消費」される政治家たち』(宝島社)。趣味は日本拳法空手道とマラソン。時には多摩川沿いに15キロほど自宅まで走って帰ることも。

川上 和久 教授
川上ゼミ HP

現場で身につくジャーナリズム感覚
考える力は、生きる力

ナポレオンは、自分のカッコイイ肖像画をたくさん描かせることで自らの権威をイメージとして民衆に植え付けましたが、現代では、テレビを使いこなせる政治家が力を持つと言われます。アメリカのレーガン元大統領がそうでした。その意味では、橋下徹さんは国民の注目を集める情報発信を非常に心得ている方です。

画像:川上 和久 教授

テレビをよく見る人の投票行動の調査では、2005年の衆議院議員総選挙、いわゆる郵政選挙の時は自民党に投票する率が高く、政権交代が実現した2009年の総選挙では民主党に投票する率が高かったという結果が出ていました。つまり、メディアの報道は私たちの考え方や行動に大きく影響します。報道は私たちの世論にどう影響しているのか、どのような仕掛けをすれば世論に影響を与えるのか、という政治心理学とコミュニケーション論が私の研究テーマです。

私のゼミでは、世論調査の結果をもとに人々の政治に対する考え方や心理を分析し、マスコミの報道が世論形成にどう影響しているのかを学びます。インターネットの時代に私たちはどのように戦略的なコミュニケーションを仕掛けられているのかを考えながら、情報に流されない、使われない姿勢を学んでいきます。

ゼミでは理論はもちろんですが、現場に出ることも大切にしています。沖縄の米軍基地反対運動の現場に出向いた学生、選挙を手伝った学生、硫黄島の遺骨収集に参加した学生、横浜の寿町の炊き出しを手伝った学生……。それぞれ自分で見つけたテーマに沿って、さまざまな現場に出かけています。現場に出ることは、政治学科ではとても重要です。フィールドワークやインターンシップを通して現場に飛び込み、報道される以外のことを皮膚で感じ、そこで自分はどう考えるかというジャーナリズム的感覚を身につけてほしいと思います。

余談ですが、私は学生時代、座禅クラブに所属していました。華やかなテニスコートのそばでひたすら座禅を組む青春時代でしたが(笑)、座禅を通して、見えているようで見えていないことがたくさんあることを知りました。今も、寝る前に30分ほど座布団の上で座禅を組みます。現実の自分から離れ、頭の中を空っぽにしてみると見えてくることがあるのです。また、今は日本拳法空手道の道場に通っていますが、武術は心をフラットにしてくれます。思い込みやとらわれの心で見えていなかった全体が見えてくる。これは私の研究にも非常に役立っています。

生きていく中で、私たちは常にさまざまなことを考えます。人生は考え、判断し、選択していくことの連続です。だからこそ、心をフラットにし、気持ちに余裕を持ち、そして、物事をしっかりと見据えて、いろんな角度から考える力を身につけてほしいと思います。考える力は生きる力です。政治学科で培ったジャーナリスティックな視点や考え方は、一般企業で働く中でも必ず生きます。

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