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幻の日葡辞書とヘボン

『ヘボン書簡集』(岩波書店1959)を見ると興味ある記述が見つかる。

▽1863年(文久3)3月26日
ウィリアム・ラウリー博士あて(ニューヨーク長老教会)
毎月のお手紙はいつも手にしております。いずれも嬉しく拝読しております。日本文法書と和仏辞書の上巻を受け取ったことを申し上げていなかったのではないかと懸念いたしております。以上の2書は無事入手しました。珍重しておりますから、どうぞよろしく

▽1864年11月28日
辞書または資料的な助けなくしては、日本語を学ぶことがどんなにむずかしいか、わたしはもちろん、当地の宣教師ども一同もよく知っているのです。これは非常に骨の折れる仕事で、フランス語の勉強などはそれに比べると一種の気晴らしみたいです。

この書簡によればヘボンは『日仏辞典』を初版発行以前に手にしていることになる。しかし、ヘボンは参考とした辞書としてこの和仏辞書の記述をどこにも記していない。 さて、明治学院大学にはヘボンより寄贈されたサイン入りの数冊の本がある。それは前身であった東京一致神学校に寄贈したシャルルボアの『日本誌』3冊と『日本の儀式(結婚と葬式)』である。この両書はフランス語での出版であり、ヘボンはフランス語が充分読めた事がわかる。また、ヘボン邸の位置は1862年12月29日より横浜居留地39番であり、フランス波止場(氷川丸付近)の奥となり。フランス人との交流も多かったと思える。

『日仏辞典』の発見と期待

さらに、本学図書館を探していくうちに古い日仏辞典を見つけた。
Dictionnaire japonais-francais : traduit du Dictionnaire japonais-portugais, compose par les missionnaires de la Compagnie de Jesus et imprime en 1603, a Nagasaki... et revu sur la traduction espagnole du meme ouvrage ... / publie par Leon Pages. -- (BA28347165) Paris : Duprat, 1862-1868 4 v. (933 p.) ; 28 cm -- livre 1 - livre 4
体裁を見ると、明治学院成立ごろと思われる極めて古い明治学院の所蔵印のある図書であり、再製本されているが、明らかに4つの本を合本して製本したことがわかる。各ページに単語を検討したと見られる鉛筆のチェックが入っている。この時期はヘボンが明治学院の総理をしていた時期である。

『日仏辞典』表題紙(左)、同本文(右)

この古い辞書は、1862年(文久2)パリ発行の日葡辞書の翻訳版である『日仏辞典』である。フランスの東洋学者Leon Pagesがパリ本『日葡辞書』と『日西辞書』を用いて仏訳して作成した辞典で、パリ・ロンドン・マドラス・カルカッタ・上海で売りに出された。バックグラウンドには1858年の日仏修好通商条約があると見られる。
『日西辞書』とは1603年に発行された『日葡辞書』を、1630年に増補してマニラでスペイン語の翻訳版を出版したものである。
ヘボンの見た『日葡辞書』とはこの本と考えられないだろうか、これからの研究に待ちたい。

またラウリー博士から贈呈された上記の日本文法書は、発行時期からして
Essai de grammaire japonaise / compos par J.H. Donker Curtius ; enrichi d' claircissements et d'additions nombreuses par J. Hoffmann, publi en 1857, Leyde ; traduit du hollandais avec de nouvelles notes extraites de grammaires des PP. Rodriguez et Collado par L on Pag s1861 ed. published by B. Duprat, Parisかもしれない。

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