2000年度エッセイ

情報提供とガイダンス

学生相談センターのメニュー(1)
新入生の皆さん、この「カウンセリングROOM」は学生相談センターのスタッフがこころの話題に関してお話しするコラム欄です。
さて文部省の調査によると約9割の大学が何らかの形で学生の相談機関を設けているそうです。しかし新入生の皆さんに限らず、どうして大学の中に学生相談センターが必要なのか、学生相談センターとは実際にどんなことをしているところなのか、ピンとこない方がまだまだ多いのではないでしょうか。大学にはクラスもなければ、受験という画一的な共通目標もありません。それぞれの学生がそれぞれのペースで、さまざまな方向を向いて大学生活を送っています。つまり高校までの学校生活に比べて大学は格段に自由度が大きいわけです。一方、自由であるということは自らが主体的に考えたり、行動しなくてはならないということでもあります。たとえば何か情報を得る場合も自らの責任において掲示板を確認したり、該当する部署に問い合わせなければなりません。人間関係も自らが求めて動かなければ広いキャンパスの中で孤立してしまうことになります。大学では自分はどうしたいのか、どうすればよいのか、さらには自分は一体何者なのかについて「悩む」という営みがこれまで以上に大きな意味をもってくるはずです。
ちょっと大げさですが、このような広くて自由なキャンパスの中で皆さんが「悩む」という営みを行うとき灯台の役割を果たすのが学生相談センターなのです。そのために学生相談センターでは、情報提供、ガイダンス、心理テスト、カウンセリング、保護者相談、電話相談、箱庭療法、絵画療法、コラージュ療法、談話室等々のメニューを用意しています。今回からのシリーズではこれらのメニューについて取り上げていく予定です。
「成績証明書はどこでもらえますか?」、「今日は生協は開いていますか?」等々さまざまな問い合わせがセンターには寄せられます。このような日常的な問い合わせに対する情報提供はセンターのメニューのひとつです。もし直接お答えできない場合には適当な部署をお教えすることになります。また「履修のことで迷っている」、「履歴書の自己アピールの欄に何を書けばよいのか困っている」といったより複雑な現実的問題に関するガイダンスも行っています。情報提供とガイダンスは皆さんが現実に何か行動を起こそうとする際に力を発揮します。特に慣れない環境に飛び込んだばかりの新入生の皆さんには大いに利用していただきたいと思います。
それからもうひとつ新入生(あるいは初めてセンターを利用される方)向けのメニューとして心理テストを用意しています。たとえばエゴグラムという心理テストでは、いくつかの項目にハイ、イイエで答えることで人間の基本的な5つの性格特性のうちどれが高くて、どれが低いかというパターンがわかります。見学を兼ねてトライしてみてはいかがでしょうか。
(白金通信2000年4月号「カウンセリング・ルーム」より転載)



橋渡しすること

学生相談センターのメニュー(2)
「学生相談センターってどういう人がどういう相談にのってくれるんですか?」と受付をしていて聞かれることがよくあります。学生相談センターという機関があるようだから相談してみようか、と思いはしてもいざ利用するとなると名称からだけでは漠然としたイメージしか湧かず何をしているところなのか実態がつかみにくくて、「こんなことで相談していいのだろうか」「なんとなく行きづらい」と結果的には、利用することをためらってやめてしまった・・・そんな方いらっしゃいませんか?
学生相談センターは、『大学生活を送る上で皆さんがいろいろな悩みや問題にぶつかった時に、そのことについて心理学の専門的な教育・訓練を受けたカウンセラーが一緒に考え、解決の糸口を見つける手助けをする』機関です。例えば「対人関係がどうもうまくいかない」「進路のことで不安になって…」というようなこころの悩みについての相談(カウンセリング)や、悩みというのではなく、「もっと自分のことをよく理解したい」というような自分らしさを追求するために利用することもできます。
では実際はどうかというと、センターに寄せられる相談は実に多様です。多様というより、ひとりひとり違うという表現のほうがより正確です。直接来室する学生もいれば電話での相談を望まれることもありますし、情報提供やガイダンスを求めて利用する学生もいます。親御さんや友人から相談が寄せられることもあります。それは「学生相談センター」という言葉からイメージすることの違いとか、抱えている問題の違いなどからくるものであると思いますので当然なのかもしれません。
受付はセンターの最初の入り口として、または続けて利用しやすいようにと環境整備的な役割の一端を担っていますから、ここで寄せられた相談の大きな交通整理をすることになります。具体的には相談申込みカードに記入してもらって、どういうことで利用したいのかを少し伺いセンターで対応できることなのか、または他の機関を利用されたほうがよいのか話し合います。センターを利用されるとなった場合はカウンセラーとの予約をとりつぐことになります。
センターは皆さんがいつも利用するわけではないかもしれませんが、必要な時には安心して利用でき、学生生活のサポートをしていける機関でありたいと思っています。また受付としては皆さんが利用しやすいように、そして皆さんとカウンセラー、他機関などをつなぐ橋渡し役としてうまく機能していけるようにしたいと考えています。利用することをためらってやめてしまう前に、センターについてわからないことがあったら気楽に尋ねてください。利用しようか迷っていらっしゃるのなら受付で迷っていることを一緒に考えみてから利用するかどうか決めるということもできます。何れにしろ自分に負担のかからない方法でセンターを利用してください
(白金通信2000年5月号「カウンセリング・ルーム」より転載)



「まったり」空間へのいざない

学生相談センターのメニュー(3)
6月に入り、新入生も大学生活に慣れてきたころでしょうか。やれサークルだ飲み会だカラオケだ合コンだあ!と友達と騒いだり冗談を言ったりして楽しくすごすのも誠に結構ですが、たまには一人でぼうっとゆっくりできるような場所がキャンパスにないかなあ、と感じたことはありませんか。それがあるんです。横浜校舎の学生相談センターに「アクティビティ・ルーム」という場所があるのをご存じでしょうか。これまで学生相談センターといえば、カウンセリングについての紹介はあったものの、一体中で何をやっているのやら怪しげで謎だらけに感じている学生もいるかもしれません。今回は学生相談センターの知られざる穴場をご紹介します。
「アクティビティ・ルーム」とは相談センターに2つある待合室のうち大きい方の部屋を呼んでいます。室内にはセルフサービスのお茶とラジカセ、本などがあり開室時間内であればいつでも利用できます。なんと、クラシックギターもあるので気が向いたら練習してもよいでしょう。(ただし面接中は音に気をつけてもらいます。)窓からは戸塚の緑がよく見え、まるで気分は優雅に高原リゾートといったところです。(少々、表現が大袈裟かもしれませんが)キャンパスの喧噪が嘘のように静かなので、ゆったりと過ごすことができます。
基本的に常識の範囲内であれば好きなことをしてよいことになっているので特に決まった規則は設けていません。室内が人でごったがえすこともあまりないので人目を気にする必要もないのはうれしいことです。
このように超快適空間なものですからお昼時間、授業があいたとき等々、面接があるなしに関わらず、ふらりと訪れる学生も多く、時には同じように「アクティビティ・ルーム」を利用している学生の存在を知り交流を深める機会もあるようです。
「アクティビティ・ルーム」のような場所は図書館やベンチなどキャンパス内の他の場所にもあるかもしれません。しかし、ここを利用している学生に聞いたところ、外では遊んだりふざけたりする友人はいても自分と同じように一緒に真面目に悩んだり考えたりすることができる友人を見つけるのは意外に難しいそうです。そのような状況ですと、自分だけが悩んでいるのではないかと孤立してしまいがちです。その点、この落ち着いた雰囲気がなせる技かいつの間にかお互い内面的な話をしたりすることもあり、そんなところも魅力の一つと言えるかもしれません。
ほらほら、今まで縁のなかった学生も少しは興味を持ってくれたでしょうか。場所は2号館の1階にありちょっとわかりにくいかもしれません。入り口は北向きなので一日中日光が差し込むことがないので薄暗く、入りにくいとは思いますが、慣れてしまえばこれであなたのもの。お気に入りの場所になること間違いないでしょう。
(白金通信2000年6月号「カウンセリング・ルーム」より転載)



カウンセリング、ホントノコト

学生相談センターのメニュー(4)
このところ連日のように起きる少年犯罪、あるいは凶悪事件により、加害者の心の問題、被害者の心の治療が取り上げられています。また、障害者や老人、虐待を受けた人々など、心の様子が報道され、心のケアが重視される時代になってきました。そのおかげで「カウンセリング」という言葉も世間に浸透しつつあり、悩んでいる人や心に問題がある人が行くところというイメージができあがっているように思われます。テレビドラマにもカウンセラーが登場したりして、身近なものになりつつあるものの、一方で何をしてもらえるところなのかはっきりと知られていないのが現状です。
カウンセリングに行くと即、カウンセラーが答えを出して解決してくれるだろうとか、いわゆる心のお医者さんで、他の病気で病院へ行くときのように、症状や困っていることなどで聞かれたことだけ応えれば、あとはカウンセラーが問題を除去してくれるだろうと思われている節もあるようです。
カウンセリングを受ける人は、特別な人に限りません。どんな些細なことと思われてもそれをきっかけにいろいろと自分や、自分を取り巻く周りのことを見直せるかもしれません。
カウンセラーは、悩めるあなたと共にあなたの課題について話し合いながら、一緒に考えます。あなたの心の隣に座り、あなたの悩みを見つめている存在です。そして、あなたにとって望ましい方向に進んでいけるようにお手伝いしているのです。「今、自分の気持ちはどうなんだろう」と、その気持ちに触れ、味わい、抱えられるようになっていくことで自分自身の理解を深め、成長につなげていきます。そこでの時間と空間、カウンセラーとの関係は、他の日常生活にはないオリジナルな雰囲気があるでしょう。
相談の事柄にもよりますが、だいたいカウンセリングというものは、時間のかかるものです。日時を約束して、たいていの場合は一週間に1回、50分というペースで継続的に行われるものです。自分の内面を見つめ直し、自己の成長につなげるカウンセリングでは、1、2回で結果が出るものではありません。
それなら自分一人で考えても同じじゃないか、あるいは自分のことくらい自分でわかると思われる方もいるかもしれませんが、一人で考えているとどんどん悪い方に考えてしまったり、行詰ってしまったりということがありませんか。それに人は、自分で気づいている自分よりも気づいていない自分の方が実は多かったりします。
逆に自分のことを話すのは難しそうだなとか、自分でも自分のことよくわからないなあと感じる方もいるかもしれません。日頃の様子や思いついたことから始めてみましょう。
悩みがあることや自分の内面について考えることは、暗いことでも弱いことでもありません。深く、豊かな人間になる絶好のチャンスになるでしょう。
(白金通信2000年7月号「カウンセリング・ルーム」より転載)



もしもし…、相談センターですか

学生相談センターのメニュー(5)
数年前なら一人でしゃべりながら歩いていて怪しい人に見えたけど、今では猫も杓子もそうしているので不思議でなくなったもの、さて何でしょう。答えは簡単、歩きながら電話をしている姿でした。
冗談はさておき、最近のコミュニケーションの手段にはポケベルやらメールやら色々ありますが、中でも携帯の普及は目覚しい限りです。中高生らの過剰なまでの携帯やポケベルでのやりとりを見ていると、まるで常に誰かとつながっているという確認をしていないと不安なのだろうかと思うくらいに電話依存症?の人もいますが、いつでもどこからでもかけられる、その利便性が受け入れられたのでしょう。他方、不登校児のように電話は怖くて出られないという人もいます。電話には、かけるのも切るのも自由という手軽さや顔を合わせなくてもすむという気楽さがある反面、一方的に切られると傷つくとか相手の表情が見えないから不安という気持ちを引き起こす面もあるようです。講義中の呼び出し音や電車内の迷惑電話など困った使い方もありますが、利用する人の気持ちによって電話の持つ意味も変わるのでしょう。
そう考えると、電話がもっとも威力を発揮するのは、やはり自殺防止に役立った時ではないでしょうか。一般によく知られているのは『いのちの電話』ですが、精神的に追い詰められ誰にも救いを求められず死のうとまで思っていたのに、電話でなら気持ちを話せるかもしれないとダイヤルを回し、それを機に生きていく力が湧いたという人もいるように、一本の電話が命綱になることもあるのです。
ところで、学生相談センターにも電話はよくかかってきます。電話相談というのは、それを行う機関によりシステムや相談方法などが異なりますが、本学の場合、特別な決まりごとはありません。学生とその保護者の方ならどなたでも利用できますし、簡単な問い合わせや情報を求める電話から深刻な相談まで、幅広く受けています。大抵の場合、まず受付の女性が対応し、お話の概要を伺った上で、必要な情報を提供したり、カウンセラーに取り次いでくれます。
悩んでいることがあってもいきなりセンターを訪れるのは不安という方もいらっしゃるでしょう。ものは試し。どんなカウンセラーがいるのか、どんなふうに相談に乗ってくれるのかなど、とりあえず電話で様子を確かめてみてはいかがでしょうか。ただ、当センターは基本的には面接相談を主体とし、電話は脇役なので、継続的なカウンセリングが必要な方には面接をお勧めしています。もちろん、どうしても家を出られないとか人に会いたくない方、あるいは遠隔地からの相談の場合にはその限りではありません。
相談に行ったほうがいいかどうか迷っていたり、外出自体が困難という方々、手始めにダイヤルを回してみませんか。白金03-5421-5241、横浜045-863-2061です。但し、くれぐれもおかけ間違いのないように…。
(白金通信2000年8月号「カウンセリング・ルーム」より転載)



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