2015年度エッセイ

白金通信「カウンセリング」およびポートヘボンお知らせより

 

「対人不安の理解と対処」

  Q.人といっしょに食事をしたり、人前で話をするときにとても緊張してしまいます。就職活動が本格化してきて不安が強くなっています。(架空相談) 

  A.対人不安に関するご相談は少なくありません。思春期、青年期は自己意識の高まりとともに他者の目に自分がどのように映っているかが気になり、対人場面における不安が強くなる時期です。ましてや就職面接など、よりストレスフルな対人場面に臨むとなればなおさらでしょう。  

否定感と理想像の葛藤

 力動的な心理療法の観点からは、対人不安は自己否定感と理想化された自己像とのギャップによって生じる強い恥の意識や罪悪感を巡る問題として理解されます。またその背後には、信頼感に基づいた情緒的交流をこれまで十分に体験できてこなかったという問題が存在していると思います。
 たとえば、おとなしいよい子であったがゆえに親子関係に波風が立つことがなく、そのため親子間の情緒的なやりとりが希薄だったということもあれば、逆に親子関係に問題があり、親との間で相互的なコミュニケーションを取ることが難しかったという場合もあるでしょう。
 このような情緒的交流の体験の乏しさは、他者との関係作りを難しくさせ、心理的なひきこもり状態を生み出す場合があります。そのような状態の中で何か失敗や問題が生じると、出口のないままひとり自分の中であれこれと考え続け、自己否定感が高まるということが生じがちです。また強い自己否定感の一方には、「本当はこうあるべき、こうありたい」という高く理想化された自己イメージがあり、両者は互いに共鳴し、さらに強め合うことになります。
 ひきこもり状態の中で増幅された自己否定感と自己の理想像との無意識的な葛藤は強い恥の意識や罪悪感を生じさせます。これらの感情は心の中で消化することが難しく、そのため他者へと投影され、「他者からどう見られるか」という対人不安へと置き換えられると考えられます。  

まずは安全な対人関係から始める

心理的なひきこもり状態から脱し、対人不安を改善するためには、カウンセリングという護られた場の中で自分の本音について触れ、語るという体験をもつことが有効です。また日常生活の中であまり負担や不安が大きくない対人場面に身を置いてみて、段階的に慣れていくというやり方もあります。この場合も専門家のサポートを受けながら進めるのがよいでしょう。


(白金通信2015年4月号「カウンセリング」より転載)

 

「人間関係の調整」

 

 新年度が始まり2ヶ月がたとうとしています。春学期もちょうど折り返し地点のあたりと言えるでしょうか。
特に新入生の皆さんは、大学の雰囲気や仕組みにも慣れてきて、授業や課外活動も軌道に乗りつつある時期をようやく迎えられているのではないかと思います。

キャンパスの雰囲気も4月当初の喧騒からだいぶ落ち着きを取り戻しているように見えます。
ただ、皆さんのなかには「ちょっと違うな」と感じている人もいるかもしれません。この違和感には様々なものがあると思いますが、その可能性の一つを取り上げてみましょう。

 入学直後の時期はひとまず近くにいたもの同士でつながったり、様々なイベントを通じて知り合った人たちと一緒に過ごすことが多いのではないかと思います。
色々な情報を得るためにもとても大事なことですし、さしあたり側にいる人と関係をつくることは新しい環境での人間関係の形成のしかたとしてはごく自然なことです。このようにして知り合った人たちと、時間が経つにつれさらに関係が深まり、親密になっていく場合ももちろんあります。しかし、一定の期間がたってみると、自分と考え方や価値観が違う、あるいはなんとなくノリが違うように感じてくる人もいるかもしれません。
 最初、自分の比較的表層的な部分を用いてとりあえず行動をともにしていたのが、だんだんとお互いの中心的な部分を出しはじめたり、気づいたりしているということでしょう。違和感を抱くこの時期は、いったん出来上がった人間関係の調整段階なのかもしれません。
 人間関係の距離感を微妙に調整し、自分にとって適度なかかわりにすることで維持したり、あるいは、もっと自分にとって居心地の良い場を探して移動するやりかたもあるかもしれません。自分にあった方法で関係を調整したり構築していければいいと思います。
ただ、まわりに過度に合わせがちな性格の人は、違和感を持ちつつもその関係のなかにとどまることが多いような気がします。
このようなタイプの人は自分のなかにストレスを溜め込みがちなので気をつけたほうが良いでしょう。性格は対人関係に当然影響を及ぼすものだと思います。

 

 さて、6月4日(木)に横浜校舎で、6月12日(金)は白金校舎で学生相談センター主催の心理テスト体験プログラムを実施します。
今回は簡単な性格検査を行います。自分の性格を知ることで対人関係のパターンに気づくことにつながるのではないでしょうか。
また、心理テスト体験の終了後、希望する方には学生相談センターの見学会も行います。
どんなところか見てみたいと思う方はぜひこの機会を利用してみてはいかがでしょう。

◎心理テスト体験の詳細はホームページも参照ください。

http://www.meijigakuin.ac.jp/office/counsel/">http://www.meijigakuin.ac.jp/office/counsel/

        (ポートヘボン「お知らせ」(5月)より転載)。




 

「フツー」や「みんな」という幻想と、「深く考えること」

  Q.大学生活は、みんなと同じようにフツーに明るく楽しく過ごしたい。そうでないと、自分一人だけ置いていかれてしまうようで不安になります。(架空相談)

  A. 
時々このような相談を受けることがあります。よく聞けばその人は「自分は自分!と頭ではわかっている」のです。また、本当はこう思っていても「こんなこと言ったらどう思われるか?」と更に複雑になっている人もいます。これは学生に限ったことではなく、ほとんどの大人もまた「社会から外れないように」「変な人と思われないように」一生懸命になっているのではないでしょうか。できるだけ安定して夢も捨てず、まっとうな人として暮らしたい、と。
社会に支えられつつ個人でなければならない所に悩みは尽きないな…とカウンセラーも溜息をつくわけですが、時々よく聞いていると、あまりにも言葉の意味を大雑把に捉えているために現実を見失い、却って自分を追い込んで苦しんでいる人に出会うことがあります。

カラクリを見抜く
 人は往々にして自分が作り上げた「幻想」に自分がとらえられ、その事に気づきもしないことがあります。世間はこうだからという一見わかりやすい基準を用いると「私も大企業に入れば人並みだ」というような図式が見えて来ますから、なんとなくわかった気になる。でも今これを読んでいる皆さんの多くは、いやそんな簡単なことではないだろう、とすぐに気づかれるでしょう。
 そうです。こうして文章を読んだり、また書いたり話したりしてみると「考える」作業はしやすくなるのです。言葉にしないでいると、こんな単純なカラクリにも案外ひっかかるものだ、というお茶目な面も人は持っているのですね。

考えること・対話すること
 大事なのはもっと掘り下げて考えることです。本当にそうなのか?自分はどうなのか?と。一旦世間から与えられている(かのように見える)ものを保留にして、自分の目で捉え直す作業が必要です。大学時代は、十分に悩みながら複雑な思考に耐えられる力を身につけるための大事な時間でもあるのではないでしょうか。
 「考える」作業は簡単ではないかもしれませんが、対話するよい相手がいると結構進んでいくものです。学生相談センターはそのお手伝いをしています。「考える」作業は、答えを出すためではなく、悩みを抱えて生きていくための土台となってくれるのではないでしょうか。

(白金通信2015年7月号「カウンセリング」より転載)

 

「シッポの赤いネコのお話(その5)~ココロのキョリって何歩分?の巻~」

  照り付ける陽射しのせいかミュウのシッポもさすがに心なしか萎れかけ、日陰をトボトボと歩く姿はいかにも意気消沈しているように見えました。
まだまだ夏の名残りは見られるけれど、昨年のクリスマスをきっかけに入ったネコの聖歌隊ではもうクリスマスソングの練習が始まっていました。どういうわけか生まれつきシッポが赤く、そのコンプレップスと子ネコ時代のイジメもあってネコづきあいを避けてきたミュウでしたから、最初はみんなとどう関わっていいか分かりませんでした。
でも今は距離も少しずつ縮まり、特にメンバーの一匹と親しくなって、スズメのピーはいるけれどネコ友は初めてできたような気がしていました。 その友達は、内気で心根の優しいネコでしたが見かけがブチ模様のズングリムックリ、額に刻まれた3本の縦皺がいかにも無愛想で皆から敬遠されていました。そんな自分に劣等感を抱いていたので、ミュウと気が合ったのも当然だったのかもしれません。お互い一目で似たもの同士と感じ、以来練習で会えばいつも行動を共にし、合唱初心者のミュウはブチから色々と教わったり一緒に歌ったりして急速に仲良くなっていきました。
ところが最近、ミュウはブチといるとどういうわけかモヤモヤしてくるのです。最初はその理由が分かりませんでした。でも今日のミュウは気づいていました。ブチと一緒にいることが楽しくなればなるほど、同時に苛々したり落ち込んだりすることも増えたのです。
「期待して裏切られるのはもう嫌だ…」。ミュウは心の中で呟いていました。一体何があったのでしょう。垂れてはいても赤いシッポは空からよく見えます。
いつもと違う様子に気づいたスズメのピーは、いぶかしがりながら近くまで降りていきました。 「期待するからガッカリするんだ、それなら期待なんてしなきゃいいんだ」。思わず口をついて出たミュウの言葉を、ピーは聞き逃しませんでした。
「何だって?どうしたのさ。ガッカリって何のことだい?」 空からの声にビックリしながら見上げると、ピーが旋回しながら話しかけています。ミュウは聴いてほしくて堰を切ったように話し始めました。ようやくできたネコ友のこと、彼といるとどんなに楽しいかということ。それなのに最近どういうわけかイライラしたりムシャクシャしたり、あげくの果ては裏切られた気分になりブチを嫌いになりそうだというのです。
そんな気持ちになるにはよほどのことがあったのかと思いながら、ピーはゆっくり尋ねました。 「何があってそんなふうに思ったのかい?」「例えばね。さっき、やっぱりネコには小判じゃなくてメザシでしょって思って、ボクがとった獲物の半分を分けてあげたんだ。でもブチったらちっとも嬉しそうじゃなくて。メザシかぁってため息をついてさ」「そうか、ミュウはブチに喜んでほしかったんだね」「うん。それとかね、この前なんてボクが指揮の先生のやり方でアレはおかしいと言ったら、ボクの考え方の方がおかしいと言われたんだよ。友達なら賛成してくれてもいいじゃないか!」
ベソをかきそうな表情ととんがった口調にちょっぴり驚きながらピーは優しく言いました。「ブチにも同じ気持ちになってほしかったのかな。確かに友達には自分のことを分かってほしいし、気持ちや考えも一緒だったら嬉しいものね。それが叶わなくてガッカリするのは分かるけど、それで裏切られた気分になってしまって、だから期待しない方がいいというのはずいぶん極端じゃあないかい?」 「え、ボク、そんなこと言ったかなぁ」。
ピーの温かい声に包まれているうちに、さっきまで怨み節を吐いていたことをすっかり忘れたミュウがそんなふうに返すと、ピーは少し真顔になって言いました。
「そうだよ。もし裏切られたなんて言ったら、ブチの方が傷ついたかもしれないよ」「えー、それはイヤだよ。だって本当はブチのことが大好きなんだもの」「そうだよね。きっと誰でも好きな相手だからこそ自分を丸ごと受け入れてほしいと望んだり、こうしてほしい、こんな友達になってくれたらと求めたくなるのかもしれないね。人間には以心伝心ていう言葉があるけど、双子みたいに言わなくても通じたり何でも分かち合えたら嬉しいものね。でも、そんなふうに期待することが自分の思い通りになってほしいということなら、それは相手の在り方を認めようとしてないのと同じことになっちゃうよ」
それを聞いてよくは分からなかったけど、ミュウには少し思い当たることがありました。実際ミュウは、初めてできたネコ友に舞い上がっていました。ブチは見かけと違って優しくて、話を熱心に聴いてくれたしいつも気を配ってくれました。それが嬉しくて、子ネコの頃に抱いていた理想の友達をブチに押しつけていたのかもしれません。
でも、自分はブチに何をしてあげていただろう。よく考えれば、暑さで食欲がないと言ってたのにメザシをあげたって困るだけだったかもしれない…。  落ち着きを取り戻したミュウは少し元気になって、シッポをピュンと空に立てながら言いました。
「そうか、似たもの同士だから、ボクのことはブチが一番分かってくれると思いこんでいたんだね。その気持ちが大きくなりすぎて、全部自分の思い通りになってほしいと思っちゃったのかな。だからその通りにしてくれなくてイライラしてたんだ。でも…、そしたらこれからどうすればいいのかなぁ…」 言い終わるとシッポはまた垂れ下ります。
ピーは、ミュウが友達とのことを大切にしたいからこそ悩み始めたことに成長を感じながら言いました。 「ミュウはきっとブチと仲良くなりたくて近づきすぎたんだね」「どういうこと?確かに会えばいつもベッタリくっついてたけど…」「そういうことじゃなくて心の距離のことさ。近づきすぎて、自分の想いばかりが膨らんで、相手のことがよく見えなくなっていたのかもしれないよ。だからお互いの気持ちや考え方を尊重しあえる関係を作れたらいいのかな」「それってどうすればいいの?」「う~ん、そうだなぁ…」。ピーは空を仰ぎながら少しもったいつけて続けます。「自分の分身じゃなくて別の生き方をもつ別のネコと思えるように、ちょっと離れて心の距離を上手にとっ…、あれ?」 気づくとミュウのシッポが遠くで揺れています。
「ココロのキョリって測れるの…?」。分かったような、分からないような…。ピーの謎の言葉に怒りや失望はどこへやら。「ブチとのキョリって三歩あれば足りるかなぁ。そういえばボクの一歩は何センチだろう…」。 ピーはニッコリ微笑みながら、独り言と赤いシッポが夕闇に消え去るまで見送っていました。

        (ポートヘボン「お知らせ」(9月)より転載)。

 

「将来について悩んでいます」

 Q.就職活動を考える時期になりましたが、私は興味が持てる仕事が見つかりません。自分に対して自信がないので社会人になれそうにありません。将来が不安です。(架空質問)
                 
 A.
大学卒業後の皆さんに対する親や社会の期待は、一般的には、しっかり「働いて」自分の生活を「賄う」ことかと想像します。しかし、いつの時代も、特に秋になると「働けると思わない」「自分に合う仕事がわからない」等、不安になって相談に来る学生さんがいます。そのような人が仕事に対して持つイメージは、「辛くて苦しいことが多い」「上司や先輩に怒られる」「人間関係が不安」等、大抵悪いイメージです。悪いイメージを持ったまま就職活動に臨んでも、決してよい結果に結びつかないでしょう。そこで、今回はどうしたら、働くことや職場環境に対してよいイメージが持てるかについて、「欲求段階説」の視点から考えてみましょう。

 マズローの「欲求段階説」
 米国の心理学者マズローは「欲求段階説」という理論を発表して「人は自己実現に向かって絶えず成長する生き物だ」と説きました。人の基本欲求には、一、生理的欲求(食べること、寝ること)、二、安全の欲求(健康の維持・住居環境の維持)、三、所属と愛の欲求(社会的居場所・仲間づくり)、四、承認の欲求(自分が認められる・尊重してもらえる)、五、自己実現の欲求(なりたい自分や達成したい目標をめざす)等、五つの基本的欲求があると言われています。人はどの基本欲求も満たしたいと思い、学校や家庭で生活しながら少しずつ充足させ成長していきます。これらの五つの基本的欲求を、職業生活でもこつこつ地道に充足させていくことが重要になります。

  基本的欲求の充足が実感できる仕事を探す
  大学卒業後は、一般的には働いて食べていかなければなりません。仕事をして得る報酬は、そのための自分を支える重要な基盤となります。そして例えば、給与が得られると、学生時代は十分ではなかった栄養のある美味しい食事をすることもあり、それは基本欲求の一、を満たすことにつながります。さらに、仕事を終えて家に帰ってONの時間からOFFの時間に切り替え、体を休めたり趣味ができることは、基本欲求の一、二、を充足することになります。また、今の自分にはやりたい仕事が考えつかずとも、入った会社で与えられた仕事をしっかりと形にしていくことは、上司や先輩の信頼を得られて居場所ができるといった、基本欲求の三、四、の充足につながります。このように、職業を得て仕事をしていく過程の中で、基本的欲求を一つ一つ身につけていくことで、学生時代に満たせなかった欲求が充足していきます。就職を考えると、五、の自己実現を得ないといけないと、高い欲求を考えてしまいますが、大事なことは、まず基本欲求の一、から一つ一つが達成していくことです。それは一見、周り道に見えるかもしれませんが、職業人として長く働いていく力になると考えます。

(白金通信2015年10月号「カウンセリング」より転載)

 

「やる気がでません・・・「勤勉性」という言葉の意味」

 Q.今まで順調に授業やサークルを頑張ってきましたが、就職活動を前にして理由もないのにやる気がでないことがあります。どうすればやる気が出ますか?(3年A君、架空相談)  

 A.
今の時期は学園祭も終わり、ほっと一息つく頃ですね。また今年一年(一年度)も先が見え、どんな一年間だったのかが見えてくる頃です。一方で将来のことを考え始め動き出す時期でもあります。そんなとき、上記のような思いを抱えた学生さんたちとしばしば出会います。彼らの多くは自分がなぜやる気が出ないのかわからないと語ります。これまでは授業やサークルを順調に過ごしてきた彼らがなぜ急にやる気が出なくなったのでしょう。
 
 先の見えない日常
 A君は前期・後期としっかり頑張ってきた様子。しかし、自分の将来について考えたところ、大学入学までと異なりはっきりとした先は見えません。そして、自分のこれまでの頑張りは、何に対して頑張っているのか?将来につながるのか・・・?単位を取るためだけ?!と悩み、よくわからないまま疲労感を感じ、やる気が出なくなっていったようでした。頑張り続ける中、先が見えないことは辛いことですよね。

 エリクソンによる「勤勉性」理論
 どうしたらこの状態から脱却できるのでしょう。今までの頑張りで体と、そして心のエネルギーが枯渇しています。エネルギーは補給する必要があります。補給方法は休むことや、人との付き合いだったりします。しかし、授業は進んでいますよね。彼らの多くが真面目であり授業を休むことは中々受け入れられません。その場合は、今までの自分の頑張りそれ自体を思い出してみてください。E.H.エリクソンは「勤勉性」という概念を提唱し、人が児童期にどれだけ熱中し、その熱中した行為に自信をもっているかで、その後の人生における課題達成での熱中度、関わり合いが変わってくると言っています。皆さんも何かに熱中した思い出があると思います。ピアノでも、絵を描くことでも良いのです。その熱中した出来事を少し思い出し、日常に取り入れてみてください。すると、それが生活の支えになり、日常を頑張って過ごすエネルギーをもらえます。 人生の先々を考え、不安になりやる気が出なくなった時は、来た道を振り返りませんか。自分自身の今までの行動がこれから先の世界を少しでも見やすいものとしてくれます。もちろん、振り返り方、先の見方のわからない場合は学生相談センターでもお手伝いします。伴走者として、共に考えたいと思っています。

(白金通信2015年12月号「カウンセリング」より転載) 

 

「年の始めにストレス・コーピングを考えて「心のコリ」をほぐそう」

 お正月休みは皆さん、ゆっくりできましたか?実家に久しぶりに戻ってくつろげた方もいらっしゃるでしょう。もしかしたら、実家に戻ってかえって疲れが溜まった方もいらっしゃるのではないでしょうか?何が自分にとってのストレスになるのか(これをストレッサーといいます)、それも自分と家族との距離感、自分の置かれている状況が変わることで変化していくのです。  そして大学生の皆さんには、1月というと、レポートとテスト、卒論、次への変化の準備、とりわけ3年生にとっては就活へ向けての準備の季節です。  そんなわけで今回は、ストレスについて二こと三こと…。

 ストレス耐性には個人差がある  
 ストレッサーは人によって個人差があります。同時にストレス耐性にも個人差があります。なぜなら、人によってストレッサーをどう捉え、評価するかが異なるために、ストレスへの耐性が変わるのです。ある人はストレスをむしろ、やる気や達成感、充実感、奮起を促す原動力に役立てます。今、しんどいなと思われている方、腰が引けていたり、ギリギリ主義に陥ってはいないでしょうか?ちょっと自分のポジションを確認してみましょう。

 問題を切り抜ける方法
 問題に直面したら、どのように切り抜けるか。それを心理学の世界ではストレス・コーピング(対処法)とよんでいます。ラザラスというストレス研究で有名な心理学者は、コーピングを、問題焦点型コーピングと、情動焦点型コーピングに分けています。ストレスに向き合い、状況や自分の考え方、評価の基準を変えようとするやり方が、問題焦点型のコーピングに当たります。積極的にぶつかっていくやり方ですね。それに対して「押してダメなら引いてみろ」的な方法が、情動焦点型コーピングなのでしょう。自力で状況を変えなくとも、ちょっとやり過ごしたり、一呼吸おいて気分転換を図ると、状況がよく見えてくることもあります。一時的に問題を放置して一息つく、リラクゼーションを図る方法です。ずっと筋トレを続けているよりも、上手にストレッチを入れることがスポーツには必要なように、この両者を柔軟に使いこなしてこそのストレス対処であるということをちょっと頭の隅に置いておくといいかもしれません。ただし、放置し過ぎていると、ストレスはさらに大きくなり、扱いにくくなってきますね。

 先延ばし主義には、初めの一歩主義を
 ギリギリ主義、先延ばし主義によってストレスを溜めやすい性格の人もいますね。わかっちゃいるがまだ間に合う・・・。面倒くさい事は最後まで手をつけない。そのような場合にはまずは、機械的に動けるところから手をつけてみましょう。初めの一歩を踏み出すことがストレス対処法といえるでしょう。最大静止摩擦力を超える時のように、動き出しにはエネルギーが必要ですが、まずはそこからですね。

 どうにもならない不安には、ポジティブな刹那主義を  
 悩みの中には、今から心配してもどうにもならないこともあります。長期的な、解決のためには未だに着手しようがないような悩みに心を割いていると、身体がストレス症状を呈することがあります。そのような場合には「とりあえず主義」、「ポジティブな刹那主義」も対処法です。就職活動など、大きな目標に向かう時にも役立ちます。

 ストレスは足し算で考える
 ストレスが身体の症状に出る時には、意外にも1つの大きな出来事によらず、小さな幾つかの悩み事が重なっていることがあります。マイナスの得点が集まり過ぎるとどこかでひずみが形になるのでしょう。身体の語るストレスには、不眠だけではなく、寝ても寝ても寝足りない感じや、食事がのどを通らないというだけではなく、食べても満足感が得られない感じ、日常生活がいつものように立ち行かない感じなども入っています。

 選択肢の一つに学生相談センターを
 大学生のストレスコーピングの1位はおしゃべりする、2位は買物をする、3位は寝る、食べるであるといいます。さまざまなコーピングを試した上で、気になる事がありましたら、学生相談センターを覗いてみて下さい。元気になるヒントを一緒に探していけたらと思っています

      (ポートヘボン「お知らせ」(1月)より転載)。