コラム「キャンパスCLINIC」

熱中症の予防

白金通信2004年08月号

熱中症は、高温環境下で発生する障害の総称で、熱疲労(熱ひはい)、熱痙攣、熱失神、熱射病などに分類されます。これらの中で最も症状が重いのが熱射病です。
労働基準や活動基準が策定されるまでは、鉄工所や建築現場などで問題になりましたが、現在はほとんどなくなり、代わって健康づくりのために行われている運動やスポーツあるいは、クラブやサークル活動で実施されているトレーニング時に発生する件数が増加しています。
日本体育・学校健康センターのデータによると1975年以降学校管理下のスポーツ活動による熱中症の死亡事故が急速に増えています。
また、スポーツ活動における熱中症事故予防に関する研究班(日本体育協会)によると、死亡にいたらない熱中症の発生件数は年間で3,000件以上との報告もなされています。今年も7上旬、急に温度と湿度が上昇した際に、農作業や庭の手入れなどの作業中に熱中症が発生し死亡事故が起こっています。
これら、スポーツ活動時や日常生活活動時に発生する熱中症の事故は、予防の知識が不足していることと、無理な活動によって健康な人に起こるものです。運動・スポーツ活動中の熱中症に関しては、適切な予防措置さえ講じれば十分防ぎ得るものです。
一旦、事故が発生すると人命に関わる危険性が高いと同時に、スポーツ活動においては指導者やコーチが責任を問われ訴訟になる例も見うけられます。たとえ軽症であっても健康を害し、学校や仕事を長期にわたって休まざるを得なくなる場合もあります。暑熱環境下における熱中症を予防することは、健康維持および効果的なトレーニングを行うためにも必要です。
熱中症を予防するにあたっては、温度、湿度、輻射熱などの環境温度の把握と運動強度および時間、水分補給の方法を理解しておくことが最も重要です。
環境温度を総合的に評価する指標はWBGT(Wet-Bulb Globe Temperature;湿球黒球温度)です。WBGTは屋外の場合、「0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度」。屋内の場合は、「0.7×湿球温度+0.3×黒球温度」で算出されます。黒球温度計がない場合は、「2.814+0.804×乾球温度」の関係式を用いるとよいでしょう。
熱中症予防の運動指針は次のように示されています(スポーツ活動における熱中症事故予防に関する研究班:日本体育協会)。
「WBGTが21℃以下は熱中症の危険は少ないが適度な水分補給をおこない、マラソン大会などは熱中症が発生するので注意が必要です。
21℃ - 25℃は事故が発生する可能性があり、熱中症の徴候に注意するとともに、積極的な水分補給が必要です。
25℃以上では、熱中症の危険が増すため、積極的に休息をとり30分おきに水分補給を行うことが大切です。
28℃以上では熱中症の危険が高くなるので、激しい運動やマラソン・持久走など熱負荷の大きな運動はさけ、体力の低い者や暑さになれてない場合、運動は中止します。」
水分補給は、水温が5 - 10℃程度で0.2%程度の塩分と5%程度の糖分を含んだ口当たりのよい飲料水(市販のスポーツ飲料水をやや希釈したもの)を運動・スポーツ前に250ml - 500ml摂取し、活動中、特に気温の高い日は15 - 30分おきに飲水休憩をとり250ml - 500ml程度摂取することが望まれます。
また、運動前後の体重を測定し減少量が2%以内におさまるよう水分補給をおこなうことが重要です。
上記のことを把握し暑熱環境下における活動時は熱中症による事故を起こさず健康・体力つくりをおこなっていただきたいと思います。

健康相談所長 森田 恭光