コラム「キャンパスCLINIC」

「断捨離」のあとに

白金通信2011年4月号

 ちょっと前に(今でもそうかもしれませんが)、「断捨離」という言葉がはやりました。簡単に言うと、「入ってくるいらない物を断つ(断)」、「ガラクタを捨てる(捨)」、「物への執着心から離れる(離)」ということを実践してあらゆることに対する「引き算の解決法」を提唱したものです。

 「断捨離」のいちばんのチャンスといえば転居ですね。実は私も昨年の秋に転居することになりましたが、収納の問題からすべての物を転居先に持って行くことが不可能であることがわかり、「断捨離」を迫られることになりました。しかしいざ始めてみると、書籍、音源、置物…なかなか捨てられませんでした。懐かしい本を見つけてはしばし読みふけってしまい、作業が中断することがしばしばです。しかしそれではいっこうに物は減らないし時間も浪費してしまうので、自分の中で「捨てる」「残す」の基準を変更し、思い切ってまず一つの品を処分用のダンボールに投げ込みました。そうしたら自然に捨てられる物が次々出てきて、時間はかかったもののなんとか片付けることができました。

 

捨てることによって得られたもの

 転居という機会があったからこそ久しぶりに手に取ることができた品々は、「断捨離」にという過程を経て私の手から離れることになったためにかえって私の脳裏に思い出として深く焼きつくことになりました。捨てることによって得られるものがあるということですね。捨ててしまってもったいなかったかな、と思うこともありますが、不思議と後悔はありません。おそらく、焼きついた思い出もいずれは消えていくことでしょうが、それはそれでかまわないと思います。捨てられずに残された物、これから手に入れていく物が新しい思い出として置き換わっていくことでしょう。おおげさな表現かもしれませんが、自分の中の歴史が流れていることを実感するひとつの例だと思います。

 

新生活を迎えて

 みなさんの中にも、入学や進級にともない転居をした方々が多くいらっしゃるはずです。その際には「断捨離」を意識せずとも私物を捨てるか、残すか、置いていくかで苦労されたのではないでしょうか。でも代わりにこれからは新しい生活に伴ういろいろな刺激がみなさんを待っています。自分にとって有用なものか、安全なものか、関心を引くものか吟味しながらしっかり体験、吸収してください。有意義な1年になることをお祈りします。

 

 

校医 吉村靖司