コラム「キャンパスCLINIC」

若者の飲酒と健康への影響

白金通信2003年08月号

突然ですが、質問です。
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(1)自動販売機でお酒が買えるのはどこの国でしょうか?
(2)一般に、未成年者と成人ではどちらがアルコールの分解が速いでしょうか?
(3)一般に、男性と女性ではどちらがアルコールの分解が速いでしょうか?
(4)一般に、飲酒後、顔の赤くなる人とならない人ではどちらがアルコールの分解が速いでしょうか?
(5)普通の体格の男子大学生がビール中ビンを二本飲んだ場合、アルコールが分解されるのにどのくらいの時間がかかるでしょうか?
(6)妊娠中に適度にお酒を飲むのは、お腹の胎児にも良い影響があるでしょうか?
(7)授乳中のお母さんがお酒を飲むと、お乳の出がよくなるでしょうか?
(8)体を動かすとアルコール分解が速まるでしょうか?
(9)健康な睡眠をとるのにアルコールは睡眠薬より良いでしょうか?
(10)早くから飲み始めれば、その分、体を痛めやすいと思いますか?
(11)年齢的に早くから飲み始めれば、依存が速く進むでしょうか?
(12)若い人、女性、体の小さい人、飲酒後顔の赤くなる人は、急性アルコール中毒になりやすいでしょうか?
(13)アルコールは脳の神経細胞を壊して、脳萎縮をおこすでしょうか?
(14)アルコール依存症者は適度にお酒の量を減らしてコントロールして飲むことがでるでしょうか?
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以上は六月三十日に行われた公開講演会で、講師である国立療養所久里浜病院の樋口進先生が、最後に出題された質問です。樋口先生はアルコールに対しての体質を判定する、エタノール・パッチテストの開発者としても有名です。
このテストは、簡単に「飲めない族(ALDH2というアルコールが体内に入った後で分解し無毒化する酵素がうまく働かない人)」つまり、体質的にお酒が飲めない人を調べるもので、エタノールと接触させた皮膚の発赤変化で判定します。(赤くなった人は「飲めない族」です。)
それでは質問の答えです。
(1)販売機でお酒が買えるのは日本だけです。
(2)まだ実験が不十分なため、どちらが分解が速いかはよくわかっていません。
(3)男性の方が速いです。アルコール分解速度は、体の大きさ=肝臓の大きさに比例します。ですから、一般に女性よりも体(肝臓)の大きな男性の方が分解が速いのです。
(4)赤くならない人の方が分解が速いです。赤くなる人というのは「飲めない族」なので、分解酵素がうまく働きません。
(5)分解にかかる時間は約5 - 6時間です。
(6)妊娠中の飲酒により、胎児性アルコール症候群(子どもに脳および全身的な成長障害や奇形がみられます)が発症することがわかっています。
(7)母乳の出が良くなるということはありません。また、アルコールは母乳内に移行します。
(8)体を動かすとアルコール分解速度は遅くなります。飲酒後の運動は厳禁です。
(9)アルコールは睡眠薬よりも速く眠りにつかせてくれますが、数時間で目覚めてしまい、良質の睡眠をとらせてはくれません。
(10)アルコールによる脳の萎縮が進む速度は、年配者よりも未成年者の方が速いのです。
(11)飲酒開始年齢が速いほど、依存は速く進みます。
(12)若い人は、自分の体に合ったお酒の飲み方を学べないうちに飲酒をします。また(3)(4)の答えと同様の理由で、これらの人は急性アルコール中毒になりやすいといえます。
(13)脳を萎縮させます。
(14)コントロールできません。依存症を治療するには、断酒しかありません。
 皆さんはもう大学生です。飲酒について、正しい知識と判断を持っていますよね?

健康相談所 井上 美紀