2002年11月18日(月)、神戸大学にて、下記の要領にて研究大会が開催されました。以下は、企画担当の樫田美雄さんによる案内をアレンジしたものです。−西阪)
医療は,EMCA研究の一分野というにとどまらず,むしろ,第一の研究分野である.説明,制度的会話,職業,ワーク,規範というEMCA研究の主要な主題がこのなかに豊かに見い出されるだけでなく,とりわけこの分野の特徴として,多くの研究者が独立してそれをとりあげ,過去,現在を通じて,多くの研究がなされていることがある.そこで,焦点をしぼった具体的秩序の研究報告が可能であるとともに,さまざまな研究者の経験を交換して,方法論について議論を深めることが可能であると思う.
医療エスノメソドロジーとは、医療あるいは「健康と病気」に関わるあらゆるものを扱うエスノメソドロジー研究のことを指しており、P.テン・ハーブによって用いられた言葉である。本報告ではこの医療エスノメソドロジーの展開を概観し、その研究対象、焦点の変化を明らかにする。そこで中心的に検討するのは、「制度」や「権力」に関わることとして捉えられている医師−患者相互行為における医師−患者関係の非対称性をどのように取り扱うかということである。さらに医療エスノメソドロジーが医療社会学という一つの分野の中でどのように位置づけられ、どのような意義を持ちうるのかを提示していく。
(関連業績)医療現場でのフィールドワークの中から、大学病院の医局で行われている「上申」というカンファレンスの分析を提示する。「上申」というセッティングは、診療を担 当した医師が、センターの責任者である上級医師に対してその診療内容について報告する、ということを基調として設定されているが、じつはその中で、医療の質の管理、医学教育、ベッドコントロールなど様々なタスクが、達成されている。それらが 実際にどのように行われているのかを、「知識の配分」ということに焦点を当てつつ分析する。
(関連業績)本報告は、論理文法分析に根ざした会話分析の技法を用いて電話相談の分析を行う。第1に、分析素材とした医療系の電話相談全体の概観を記し、相談内の諸活動の順序 がアプリオリかつ偶有的な性質を持つことを示し、この性質から注目できる現象とし て相談事項を先取りした助言を取り上げる。この助言は失敗のリスクや医療従事者に 望まれるべき態度としての「傾聴」との不適合であるように思われるが、実際の相互 行為内では、むしろ失敗ゆえに「傾聴」と同じ効果をもたらすことを示す。第2に、 電話相談におけるカテゴリー化装置として<助言者--相談者>に着目し、この装置の 非対称性との関連で生じうるポリティクスが参与者の規範的志向により塞がれることを確認する。その上で、対称的なカテゴリー化装置に助言者がふれるという現象を取 り上げ、一見すると助言を困難にするようなこの装置への言及が、内部における差異 化をもたらすことによって、むしろ有効な助言となることを示す。
本シンポジウムに関する問い合わせは、EMCA研事務局あるいは樫田さんまで。
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