2004年9月に開催された社会言語科学会の研究大会で、以下のようなワークショップを行ないました。多くの方のご参加ありがとうございました。教室の構造のために、お互い声を張り上げながらの議論になってしまいましたが、いろいろなご意見ありがとうございました。次の機会には、もっとデータに即した議論ができるようワークショップ全体の組織を考えてみようと思っています。-- 西阪]
このワークショップでは、研究者が「単語」や「文」といった言語構造によって定義する単位ではなく、会話者自身が会話という相互行為を組織する際に用いる発話の構成単位について、具体的なデータに基づいて議論したい。まず、H. Sacks、E.A. Schegloff、G. Jeffersonらによって展開された「会話分析(Conversation Analysis)」において重要な概念である「順番構成単位(Turn Constructional Unit = TCU)」について(主に英語の会話分析に基づいて)解明されてきたことを英語の電話会話データを参照しながら整理する。その上で、日本語会話のデータを用いて、日本語会話の分析概念としてのTCUを検討する。そもそもSacks、Schegloff、JeffersonらのいうTCUとは何かという問題を始点としつつ、日本語会話特有のTCUにまつわる諸事象に具体的検討を加えることを通して、日本語会話における順番の組織の実体に迫りたい。英語会話の分析においてその強力さが証明されているTCUを、真に日本語会話の分析に有用な道具として彫琢することは、今後の日本語の会話分析研究の発展には不可欠である。このワークショップは、ささやかながらその端緒を開く試みでもある。
日本語の電話会話の断片を、あらかじめ用意されたトランスクリプトを参照しながら一行ごとに検討する。音声を繰り返し聞きながら、そこで何が行なわれていると聞くことができるかを観察する。そのさい、その聞き方が実際の発話のどの部分によって正当化できるかを議論する。今回は、とくに5日に予定されているワークショップとの関係でTCUの構成に焦点をおいた形で分析を進めてみたい。
We examine a fragment from English telephone conversation, looking at the prepared transcript and listening to the audiotape repeatedly. We observe what we hear in the real-time development of conversation and discuss what evidence we have for each hearing. In this session, the focus will be on the organization of TCUs.