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No.1 「無責任の構造−モラルハザードへの知的戦略」を読んで(岡本浩一、PHP新書、2001年1月)
河村寛治 記ここ最近は、法科大学院の設立に向けた仕事が多く、ゆっくりと本を読む機会もない状態がつづいているが、それでも現在はいつものようにいろんなジャンルのものを数冊平行して読んでいる。それらのうち結構読みやすく面白いと感じたのは「The Game」という翻訳本で最近書店でも見かける黄色い表紙の目立つやつである。 この紹介はいずれしたいと思う。 今月紹介するのは、今年はじめに出版された「無責任の構造−モラルハザードへの知的戦略」(岡本浩一、PHP新書)という本である。 企業に永年勤めた私のような人間にとっては、企業での意思決定の分析や企業人の心理分析をも行っている本であり、結構的確に捉えていて面白いのであるが、企業のなかにいたものにとってはこのように分析されると耳の痛い話もある。最近の企業での不祥事の原因ともなっている無責任体質や、その無責任的効果を産み出す、集団のメカニズムを解析しており、具体例をあげて、その集団としての決定力の強さやその間違いの可能性などを指摘するなど、無責任構造の問題点を分析している。無責任体質の問題は企業だけではなく、日本の社会のあらゆる分野でみられるわけであるが、最近は頓にそれが表に出てくることが多い。 この本は無責任体質を単に非難するだけではなく、無責任構造を如何に克服するかという観点から、個人の日頃からの心構えが大切であり、自分の専門的判断力を鍛え、自己主張と説得のための方法論まで論じるという個人の対応力の重要性を説明しながら、組織としてのあり方まで言及するなど、私自身にとっては身近な問題として感じることができる内容であった。 企業の不祥事のためにコンプライアンス・プログラムの重要性などが最近訴えられているが、この本では監査機構の整備や独立性の保証などが重要であると主張している。ただ組織内で経験をした人間としては、組織という形だけを整えてもそれを運用する人間の問題もあり、実効性には疑問があると常々考えていたわけであるが、この本ではそこが十分に描かれていない。折角組織に対する個人の弱さを説明してきたのであるから、その弱さを救うようなあり方の提案があればよかったのではないかと感じた次第である。 やはり牽制機能をもったような、いろいろな組織を現実に機能させるには、この本で主張されているとおり人間の組織に対する弱さを意識しながら、その人間の弱さをカバーするような組織や体制つくりをすること、および個人の関与がなくても機能するような体制の重要性をいまさらながら、強く認識させる本でもあった。 これから、社会へでて、組織のなかで働く学生にも是非今から読んで欲しい本である。 |