| No.31 私のイギリス・カントリーライフ
井原 宏 記
イギリス人の理想の生活は、花木に囲まれたカントリーライフといわれています。ロンドンなどでの都会生活ではなく、田園に根を下ろした生活が本物というわけです。
さて、私は家内とともに、2003年夏7〜8月の40日間をケンブリッジ市の北の郊外(車で約30分)に位置するコッテンハム村という典型的なイギリスの田園でひと夏を過ごしました。ケンブリッジ市内での生活は、ケンブリッジ大学ロースクールの学生時代を含めて、いくたびもの経験がありますが、このようなカントリーライフは初めてのことでした。
私の出身のカレッジはフィッツウィリアムカレッジといい、ケンブリッジ大学の30いくつかのカレッジの一つですが、歴史は130年余りと比較的若いものの(最古のカレッジは13世紀に創立)、5〜6番目の学生数をもつ相当な規模であり、現代的なレンガ造りの建築物よりなっています。ケンブリッジ大学のカレッジ制度は、オックスフォード大学とともに、大学制度のいわば理想型ともいわれ、学生の寮、ダイニングルーム、チャペルやライブラリーなどを備え、学生と教員(チューター)が共同体としての生活を送っています。私もケンブリッジを訪れる度に、数日間はカレッジのゲストルームに滞在しています。今回もフィッツウィリアムカレッジの美しい庭園やダイニングルームを家内とともに楽しみました。
その後コッテンハム村で借りたコテージに移りました。イギリスの典型的なヴィレッジであり、村の中心を抜ける街道沿いに、パブ、レストラン、スーパー、八百屋、肉屋などのショップや教会、郵便局、小中学校、ライブラリー、医院などが一応あるものの、まことにのんびりとした、緑に囲まれた文字通りのイギリスのカントリーでした。人口は1000人ぐらいでしょうか。古いレンガ造りの建物がほとんどですが、私達のコテージに近いところには、新しい住宅地も開発されていました。その外側は果てしもなく畑地帯が広がっています。私達が借りたコテージは、古いレンガ造りの建物でしたが、短期滞在用に必要なものは一揃い備わっていました。
私の日常生活は、10時頃レンタカーでコテージを出発、こやし(有機肥料)の匂いが漂う田園地帯を通って、フィッツウィリアムカレッジに駐車し、すばらしい散歩道を約20分間歩いてロースクールに到着、顔なじみのスタッフやライブラリアンの協力を得て、4時ごろまで研究に親しみ、その後家内と合流、市内で買いものをし、カレッジを経てコテージへ帰るというパターンでした。週末には、近場の歴史の名所へドライブ、旧知の知人を訪問、コッテンハム村内の散策、さらにはロンドンへ日帰り旅をするなど、私達の第二の故郷のごとく楽しみました。
コッテンハム村の滞在は短いものでしたが、イギリスの人々はカントリーにしっかりと根を下ろしているように感じました。住居は基本的にレンガ造りで簡素なものですが、そのバックヤード(裏庭)には草木が茂り、家々の入口や通りにも花や木が植えられ、ペンキ塗りや庭の手入れなども自分達でやっているのがうかがわれます。ごく普通のイギリスの人々は、あまり急ぐこともなく、かといって時代離れすることもなく、いわゆるスローライフを基本としているようです。イギリスの国力は低下しても、福祉制度がまだ充実しているからでしょうか、あるいはイギリスの人々の生活スタイルが伝統的に確立されているからでしょうか。私達日本人がまだまだイギリスに学ぶものはあるように思われます。
ケンブリッジ大学とのつき合いは30年になりますが、この大学は古い伝統を維持しながら、新しい発展を次々と成し遂げており、OBとして、そして一人の日本人としていまだに感銘を受けることもしばしばです。フィッツウィリアムカレッジもシアターなどの大増築を完成したと聞いており、大学全体もどのように変わりつつあるのか、次回の訪問を楽しみにしているところです。
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