No.35 モンペリエだより 〜蛯原健介先生の在外便り その二〜

 

蛯原健介 記 

 モンペリエ第1大学では、4月下旬に講義が終了し、今は学期末試験の最中である。自宅の近くに法学部図書館があるが、学生たちであふれるこの時期は、PCが使えるコンセントつきの席を探すのに苦労する。しかし、6月中旬には長いバカンスがはじまり、たちまち学生たちの姿が消える。
  さて、今回は、5月12〜13日にAix-en-Provenceのポール・セザンヌ大学(エクス・マルセイユ第3大学)で開催された「フランス政治思想史学会」(AFHIP)について書くことにしよう。

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 今回の学会のテーマは「政治思想のなかの法制史」であり、日本法に対するフランス革命の基本原理の影響について報告する機会を与えられた(写真1)。報告自体は、事前に用意したフランス語の原稿を読み上げればよいだけの話であるが、とにかく質疑応答が大変である。日本人の報告は、十数年ぶりとのことで、報告後の休憩時間にも先生方から質問が相次いだ。今、日本ではナショナリズムの嵐が吹き荒れていて、周辺諸国から孤立し、人権宣言の基本原理や立憲主義は危機にある、というのが報告のペシミスティックな結論であったが、にもかかわらず、多くの研究者が日本に興味を示し、ぜひ明治学院を訪ねる機会を作ってほしい、という会員もいた。

学会報告 【写真1】

 そもそもこの学会に入会するきっかけは、学部時代の恩師(高橋誠先生)との出会いにさかのぼる。学部時代は、政治学科に属していたこともあって、公法学よりむしろ政治史や政治思想史に興味をもっていた。そこで、18世紀フランス政治思想をテーマとする高橋誠ゼミに入ったものの、先生は体調を崩し入院、そして1993年末に天に召された。一度、入院中の先生を訪ねる機会があり、そこで「蛯原くん、大学院に行って、フランス憲法史の研究をしてみないか」とのアドバイスをいただいたことが、最終的に今の仕事をめざす契機になったのだと思う。高橋先生はAFHIPのメンバーであり、同学会の会長であるMichel GANZIN教授の親友であった。数年前に、Aixで同教授と面会する機会があり、以上のような話をしたところ、直ちに学会への入会を勧めていただいた。同学会に初めて参加したのは、2003年にリヨン第3大学で開催されたときである(昨年度の法科研年報参照)。政治思想史学会に続いて、大学院時代に指導していただいた中村義孝先生の紹介で、フランス法制史学会(SHD)への入会も認められたが、2年前に申し込んだフランス憲法学会への入会はいまだに承認されていない。どうもフランスでは、実定法よりも歴史系の学会の方が間口が広いようである。あるいは、もしかして実定法研究の業績が少ないということか・・・

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 いうまでもなくフランスは美食の国である。当地の研究者たちは、学者であると同時に、美食家でもある。今回参加した学会も、おそろしくグルメな学会であった。学会登録費には、夕食2回と昼食1回が含まれている。初日の夕食は、セザンヌが愛したサント・ヴィクトワール山まで貸し切りバスで移動。そして、その麓にあるミシュランの星つきレストランで豪華な晩餐会。まるで結婚式の披露宴のように座席が指定され、フルコースのプロヴァンス料理とワインを賞味するというスタイル(写真2)。料理のメニューも渡されたので、ここに記しておきたい。

 

アペリティフ:キール・ロワイヤル
アミューズ・ブッシュ
前菜:フォワグラのテリーヌと小さなサラダ
お口直し:ローズマリーのソルベ、タイムのリキュール
主菜:鱸のソテー、オリーブオイルとトリュフのソース
プロヴァンス風デザートの盛り合わせ
ワイン・コーヒー

デザート盛り合わせ 【写真2】

 そして2日目の夕食は、これまた郊外のホテルにある高級レストランで(写真3)。シャンパーニュを手にしばし歓談した後、これまた着席スタイルで、前菜のフォワグラ、主菜の羊、チーズ、デザートと続く。終了は午前0時すぎ。しかも、日本のような学会関係者や開催校の挨拶は一切なし。フランスの学会のレベルの高さに感激した2日間であった。
(2005年5月16日)

夕食風景 【写真3】

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