| No.37 在外便り後始末
黒田正明 記3月末に帰国して以来何か物足りない思いをしている原因の一つに、フランスにいた時のように気楽にワインが飲めなくなったことがある。国産のワインは一般に若くてフルーティーなものが多くて私の好みにあわないし、輸入ワインは高すぎてそう気楽には飲めない。日本では輸入ワインには必ず酸化防止剤として亜硫酸塩がはいっている。フランスで売っているフランスのワインにも酸化防止剤が入っているかどうかについては気になるところであるが、在外便りの第2回に書いたとおり、フランスの友達は皆、「フランスのワインには酸化防止剤は入っていない」と主張している。だからといって、彼らの話をどこまで信用出来るかわからない。 フランスでは、ある人がOuiと言ったからといって、そのままその人の言うことを信じるような単純思考では、生き延びることは出来ない。2重3重のチェックが必要である。第2に、フランス人は、自国文化(フランス語、フランスワイン、フランス料理 等々)に対するプライドが高いので、「亜硫酸塩など入っているはずがない」と思いこんでいる可能性が高い。第3に、日本人と比較すると、フランス人は、食品の安全性に関しては、かなり無頓着である。3月に帰国する少し前に、野菜(特にきのこ類)に紫外線をあてて、殺菌していることの是非が報道をにぎわしたことがあるが、日本のように、強力な消費者団体が食品の安全性に目を光らせているようには感じられなかった。ヨーロッパで食品を買うと、輸出の関係で、そのパッケージに数か国語で成分表示が記してあるが、着色色素等の添加物に関してはその内容が記述言語で異なる。すなわち、表示義務が国によって異なるので、国によっては表示義務のない添加物は書かないのである。フランス語の内容表示は、比較的短いような印象を受けた。 フランスのワインに酸化防止剤が含まれているかどうかを改めて調べなおす必要があると思っていたので、帰国後、まず、日本の本で調べてみた。予想通り、「外国のワインにも亜硫酸塩等の酸化防止剤が入っている。」と書いてあった。同時に「この添加物は昔からずっと使われてきたので、大量に添加するのでなければ、その安全性に問題の無いことは実証されている。」とも書いてあった。次に製薬会社に勤めているドイツの友達に聞いてみた。奥さんからまず電子メールがきて、「以前は、硫黄化合物を添加していたが、今も硫黄を添加しているかどうかは知らない。しかし、外気の温度が高いときに、密閉度の高い、古いケラーでワインの試飲をするのは健康上危険と聞いている。昔から、硫黄添加物が二日酔いの頭痛の原因といわれている。」とあった。その後、友達自身からメールが来て、「木の樽を使っていた頃は、樽の中で硫黄をもやして酸化防止剤としていたが、金属の樽を使うようになった現在は、酸化防止剤を添加するだけである。ドイツワインに酸化防止剤が添加されていることは間違いない」とあった。さらに「ドイツのワインにはsulfate (硫酸塩)ではなくて、sulfite(亜硫酸塩)か sulfide(硫黄化合物) が添加されている。フランスワインにも添加されているはずであるが、EUには、ワインの酸化防止剤の表示義務はない。ところで、よっぱらた翌日頭が痛くなるのは、この酸化防止剤のせいではなくて、アルコールの血管拡張効果のせいだよ。」とあった。 彼の手紙に「EUでは・・・」と書いてあるから、アルコール類には、EUの共通の規制があるのだろう。そういうと、ドイツでは1516年以来のReinheitsgebotによって、水、ホップ、Malz(麦芽)以外を使ったビールはビールと呼べないことになっていたが、1970年代にEU(当時はEC)の国々がドイツのこの法律をEUの規格に反するとしてBrusselle に訴えておおさわぎになったことがある。その時以来Reinheitsgebotはドイツ国内の法律として、ドイツビールには適用されるが、外国のビールには適用されないことになった。Reinheitsgebotを守り通すことができたが、同時にフランスのビールも、日本のビールも、ドイツでビールとして売ることが出来るようになった。ドイツ人は、EUのせいで、ビールの Reinheitが失われたと嘆いていた。 そういうわけで、輸入ワインの添加物に関する私の疑問を解決するには、EUの消費者法に詳しい法学部の人に聞くのが一番確実であろう。明快な回答をいただきたいと思っている。 |