No.39 モンペリエだより〜蛯原健介先生の在外便り その四〜

 

蛯原健介 記 

 早いもので、モンペリエにやって来て半年以上になる。フランスでは、大学の新学期は9月から始まる。モンペリエの法学部では、9月から11月までが第1セメスター。1月から4月までが第2セメスターとなっている。明治学院に比べて試験期間が異常に長いが、おそらく口頭試験(面接)が多いからであろう。

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 秋はストライキの季節でもある。10月に入って、フランス全国でストライキが実施された。モンペリエでは、トラム(路面電車)は30分に1本(通常は5分おき)の運転となり、国鉄はもちろん、民営化されたエールフランスもほとんどの国内線が運休となった。組合側の主張は、雇用の確保と購買力の拡大。この国では、失業は、相変わらず深刻な問題である。また、民営化が進められている国営のフェリー会社SNCMでは、フェリーが占拠されたり、激しい抗議運動が展開されたほか、ナンシーやマルセイユでは、2週間以上にわたって、公共交通機関は麻痺状態である。以前、モンペリエでは、一部の市民のマナーの悪さに抗議して、トラムとバスのストが予告なしに実施されたこともあった。日本の市民は、ストライキに対してあまり理解がないような気がするが、フランスでは、多くの市民がその必要性を認めている。報道によれば、今回のストライキは、国民の4分の3が支持していたとのことである。
  もっとも、今年から、パリ近郊とアルザスの公共交通機関については、「サービス・ミニマム」の提供が義務づけられることになり、一定程度以上の減便になった場合には罰金が課されることになった。しかし、その他の地方では、この法令は適用されず、トゥールーズなどでは完全に運休になっていたようである。

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 日本を離れて半年以上が経過し、そろそろ和食が恋しくなる頃である。簡単な和食としてよく作っているのが「マグロ丼」である。初回の「モンペリエだより」でも書いたように、南仏では新鮮な魚が容易に手に入る。とくに地中海産の天然(sauvage)マグロがおすすめだ。モンペリエの魚屋では、マグロのどの部分でもキロ単価が同じなので、あの大トロを格安で買うことができる。1キロぐらいの大きなかたまりでも、12〜15ユーロ前後である。東京では、10倍以上の値が付くかもしれない。地中海は温暖なので、身のしまりが良くない、という話を日本で聴いたことがあるが、こうして、ときどき日本の味に触れることができるのであるから、有り難いことである。先月、拙宅で「臨時教授会」をおこなったときに、大トロ丼を作ってみたが、大変好評であった。ただ、マグロは、天然であれ養殖であれ、水銀を蓄積するので、とくに妊娠・授乳期間中の女性は、シーチキンすら絶対に食してしてはいけないというのが当地の常識である。
  地中海では、日本の商社がマグロの養殖に取り組んでいる。小さな天然マグロを捕獲して、スペインやマルタなどの「いけす」で養殖し、どんどんエサ(未処理の輸入冷凍魚)を与え、脂たっぷりの肥満マグロに仕立て上げるのだという。そして、最後は、散弾銃で銃殺し、冷凍して日本に輸送するのである。おかげで、最近、日本でも比較的手頃な価格で大トロが食べられるようになった。もちろん、このようなマグロ養殖は、国際社会の非難の対象となっており、第二の鯨となる可能性もありそうだ。
  他方で、フランスでは、相変わらす寿司ブームが続いている。先日、国営テレビ局フランス2の番組で寿司の話題が取りあげられていた。フランスでは、ピザ、ハンバーガーに続く地位を占めつつあるとのことで、近頃は宅配寿司屋も増えている。朝市に寿司屋が出店する所もあるという。もちろん、魚を生で食べることに抵抗のあるフランス人もいるが、当地では、牡蠣は生で食べるのが常識であるし、牛肉もタルタルなど生食することが多い。レアのステーキを注文すると、ほとんど生の状態で出てくる。フランス人は、比較的、生食に抵抗がないのかもしれない。

【写真】朝市の魚屋。魚の種類は実に豊富で、見ているだけで楽しい。

朝市の魚屋

朝市の魚屋

(2005年10月22日)

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