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【講義のねらい】 明治時代に欧米から継受された法制度と日本人の法意識との間に大きな「ずれ」があることは、法社会学者や比較法学者によって指摘されてきた。この講義では、「日本の法律家が欧米から継受された近代法思想とどのように格闘したか」という問題を法思想史の観点から検討することを、学修の目標とする。
【講義内容】天賦人権説から国家主義に転向した加藤弘之、「民法出でて忠孝亡ぶ」と論じた穂積八束、「神ながらの道」を唱えた筧克彦、天皇機関説事件で批判された美濃部達吉、京大・滝川事件でリベラルな信念を貫いた恒藤恭、戦時中に「日本法理」を展開した小野清一郎、「世界法の理論」を提唱した田中耕太郎などを取り上げながら、日本独自の法思想が果たして可能か、法思想とはどこまで普遍性を追求すべきなのか、という問題を考える予定である。ただし、初年度につき、講義内容を一部変更する可能性があることを、あらかじめお断りしておく。
【教科書・参考書等】教科書は指定しない。講義中に資料を配付する予定である。
中村雄二郎『近代日本における制度と思想』(未来社)、長尾龍一『日本法思想史研究』(創文社)。また、学術書ではないが、時代背景を知るための参考書としては、立花隆『天皇と東大(上・下)』(文藝春秋)、松本清張『昭和史発掘4』(文春文庫)などが面白い。
【成績評価の方法】原則として定期試験の結果により評価するが、授業時間中のコメントやレポートは加点因子とし、私語・遅刻入室・途中退室などは減点因子として扱う。
【その他】予備知識は要求しないが、まじめな出席が受講の必須要件である。