6.少女漫画みたいな恋

 「少女漫画みたいな恋がしたい」という言葉を、私は今までに何回も聞いたことがあるし、何回も言ったことがある。ふだん漫画を読まない人でも、少女漫画は恋愛に関する漫画というイメージは持っているだろう。実際に少女漫画は、恋愛を中心に描かれているものが主流となっている。恋愛が主題となっているものは、主に登場人物の心理状況や感情の変化を細かく描写してある。絵は可愛らしいものであり、そこに出てくる人物は、目が大きく描かれていたりスタイルが良く描かれていたりする。背景には、現実的な風景を描くのではなく、可愛い女の子のうしろに花を背負わせて美しさを引き立てたり、人物の感情によって背景を明るく見せたり暗く見せたりという具合にされている。

 本屋に行くと、少女漫画のコミック本は本棚にズラリとたくさん並んである。これらの漫画は漫画雑誌に掲載され、ほとんど毎月一話ずつ物語が進んでいく。漫画雑誌とは多くの作品が掲載されている雑誌である。その内容はバラエティーに富んでおり、読者の成長とともに購入する漫画雑誌は変わっていく。学園物恋愛漫画が中心の雑誌やファンタジー系の雑誌など、それぞれの漫画雑誌にはテーマがある。

 その中でも私が一番惹かれるものは、学園物の恋愛漫画である。私は中学、高校とどちらとも女子校であったため、学校内での恋愛というものに青春を感じ、憧れるのだ。自分の持っている恋愛に対する理想のイメージを創り上げたものの一部は、少女漫画であるという人は少なくないだろう。もちろん私もその1人である。いつか自分にも漫画のような展開で恋に落ちることがあるのではないかと、漫画を読みながら期待してしまう。しかし、その期待ははかなくも散る。現実は少女漫画のように簡単にはいかないのだ。この種類の漫画は、ごく普通の少女が学園のアイドル的存在と恋に落ちるなど、実際にはあり得ないような話が展開される。しかし、それがいかにも自然であるかのように描かれているので、つい現実に照らし合わせてしまうのだ。実際に恋愛をしたとしても、少女漫画と同じような恋愛にはならないのである。なぜなら、現実の世界はもっと複雑で漫画の世界では描ききれないようなことまで発生する。まるで漫画のような都合の良い展開は、現実ではめったに起こらない。そしてもちろん、人間もまた漫画に出てくる人物よりもっと複雑なのだ。決して思い通り、シナリオ通りに動いてくれる男の子など存在しない。こうして、小学生のときから少女漫画で培われた恋愛に対する世界観は、中学生や高校生ぐらいにはもろくも崩れさるのだが、今でも現実にない刺激を求めて少女漫画を読むことはやめられない。