10.憧れと自分らしさ 自分以外のものに憧れるという経験は誰にだってある。人間は多くの人と関わり合いながら生きているので、知らないうちに誰かから影響を受けているということもあるだろう。人は、自分にないものを求めるというが、憧れを抱く相手は自分とは違う何かを持っているからなのだろうか。 私が憧れを抱くときは、やはり自分がその人のようになりたいと思うからである。身近な友人に憧れ、その人に近づこうとする。憧れの芸能人の服装などを真似することは、みんなよくあることだ。多くの人が美容院に行って、芸能人の写真を見せ、その人と同じ髪型にしてもらうだろう。好きな芸能人がブログで紹介している品々を買ってみたり、服装を真似してみたり、少しでも憧れの対象に近づこうと常にその芸能人の情報に敏感になっている。女性ファッション誌には、芸能人のメイクを真似してメイクをしている女の子が載せてある。優木まおみ風であったり、吉川ひなの風であったり、平子理沙風になれるメイク方法が載っている。 憧れは外見だけではない。実際にモデルや芸能人のようなライフスタイルにも憧れ、真似したいと思う。最近はほとんどの芸能人がブログをやっているので、そこで憧れの人の私生活を覗くことができるのだ。彼女たちが行ったお店に行き、同じ物を注文したくなる。それは普通のファン心理だと思う。私たちはお笑いの物まね芸人のように、そっくりに真似してみることで人々の気を引きたいのではない。憧れる人の真似をして、外見でも内面でも少しでも近づきたいと思うのである。 しかし、強く憧れることで、自分自身を見失うときがある。もし、あの人だったらどう考えるだろう、どう行動するだろうと考えることがある。頭まで憧れる人になりきって、物事を考えるようになってきてしまうのだ。結局は自分の頭で考えていることに代わりはないのだが、やはりどこか自分を疎外している感覚に陥る。自分らしさより憧れる対象のその人らしさを自分に重ね合わせようとする。人の気持ちを推測することを続けていくと、段々自分の気持ちを率直に考えることが難しくなってくる。憧れを抱く相手は自分とは違う何かを持っているのかもしれないが、自分が持っているもの、自分らしさに気づくことも大切なのではないだろうか。 |