1.幽霊

 小さい頃から暗い場所が苦手であった。我が家の向かいにはお寺があり、お墓もある。私は霊感がないので何も見えないが、夜になるとなんだか気味が悪い雰囲気が漂っている。幼稚園くらいの時、何か悪さをして父親に叱られたことがあった。そのときにお仕置きとして墓場へ連れて行かれたことがある。夜だった。私をかついで向かいのお寺まで行き、墓場におろして帰ってしまおうとしたのだ。私が泣いてしがみつくと父は「人魂が飛んでるよ」などと言って私は近所に聞こえるくらい大声で泣きじゃくった。おそらくこれがトラウマになり、見えないくせに幽霊を怖がるようになったのだ。

夜に眠る時、明かりが全部消えてしまって視界が真っ暗になったとき、目をつむってしまうと次に開いたときには目の前で髪の長い女の人が私を覗き込んでいるのではないか、そんな強迫観念に駆られ、幼稚園から小学校低学年までは夜はなかなか眠れなかった。しかし、化け物(妖怪)には興味があった。架空の生きものということで安心できたからかもしれない。小さい頃「ゲゲゲの鬼太郎」は怖かったが、いつも気になって見てしまっていた。ホラー映画は見に行ったことがない。友達に誘われたことがあるが、お金を払ってまで怖い思いをする意味がわからない。

最近はだいぶ平気になってきたように思う。ただ、私は幽霊が怖いのだが嫌いなわけではない。むしろ少し気になってしまう。幽霊に関しては本当にいるのか、いないのかをはっきりさせたいと思う。いるかいないかわからないから幽霊は怖いのだ。だから化け物は多少怖くても平気で見られるのだと思う。残念ながら霊感は全くない。前のバイト先にはものすごく霊感の強い後輩がいた。夜にやらなければいけないことをやらずに寝てしまうと枕元を見えない足がひたひたと歩き回るらしい。そんな事って本当にあるのだろうか。まだ科学的に解明されていないから何とも言えないが、私もぜひ一度幽霊を見てみたい。いつかこの目で見ているのかいないのかをはっきりさせてやりたいと思う。